僕らの日常。
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激しい衝突音にガラスが割れる音。焼けるような焦げた臭い。人々の悲鳴。
上空ではエンデヴァーと脳無が激しく戦っていて、ホークスは避難誘導をしながらエンデヴァーのサポート。
すごい。これがNO.1とNo.2ヒーロー。
足手まといにはなれない!私に出来ること…!!
エンデヴァーの炎が届かないところまで、戦いやすいように現着したプロヒーローたちと手分けして避難をさせていく。
「痛いよぉぉっ!!」
「大丈夫、すぐ治るからね」
避難中に怪我をした子供を治癒してそのまま風を使って遠くまで運ぶ。
走れないお年寄りや小さな子供、妊婦さん。ホークスみたいに見えない人に手を差し伸べることは私には出来ないけれど、せめて視界の中にいる人たちだけは安全に逃がすんだ!
「うわああ来るなああ!!」
その声の方に目をやるとさっきの脳無とは違う複数の脳無が市民を襲おうとしている。
どうしよう、私の風で間に合う!?あの脳無をどうにか出来る!?
無理なら盾になればいい!諦めるな、走れ!!間に合え!!
手を伸ばして個性を出そうとした瞬間、市民を襲っていた脳無たちが切り裂かれた。
「っ…ホークス…!」
「みょうじさん!残りの避難誘導任せますよ!」
「はいっ!」
剛翼を剣のように振って彼らを助けてくれた。
よかったと安堵するもすぐに気を引き締めて残っている人の避難を完了させるために風を使って飛ぶ。
「あぁっ!ヒーロー!そっちの路地に怪我した人がおるけん!助けてやってください!」
「わかりました!」
言われた路地に向かうと男の人が足を怪我して座り込んでいた。痛みがひどいのか発汗もある。
安心させるように声をかけながら治癒を行うと少しずつ顔色が良くなって来た。
「まだ痛みありますか?」
「なくなってる…!ありがとう」
「よかったぁ!運びます。動かないでくださいね」
今度は風の個性を使って男性を浮かして安全なところまで運ぶ。
彼が見えなくなったのを確認してから他に怪我して動けない人はいないかと少し奥に進んで歩くと背後に殺気を感じて振り向くと同時に視界に炎が広がった。
攻撃、そう頭で理解するよりも速く体が動いて風を巻き上げて炎を散らす。
「……っ!!」
「へぇ、意外に反応いいな」
咄嗟に対応する訓練を勝己くんに付き合ってもらっててよかった、なんて思えたのはほんの一瞬で攻撃してきた相手の顔を見るとあの時の無力さや悔しさ、怒りが鮮明に蘇った。
「…荼毘」
「覚えてくれてて嬉しいぜ、みょうじなまえ」
林間合宿襲撃時、勝己くんをさらった連合の一人。
さっきの一撃は明らかに手加減された。荼毘には余裕もあるのが言動からも見て取れる。
対して私は攻撃特化型でもなければ戦闘が得意なわけでもない。だからと言って目の前に現れたヴィランを見逃すことも、逃げ出すことも、脳無の相手で手一杯のヒーローたちに頼ることも出来ない。
どうする私、考えろ。頭をフルで回せ。
「……私の個性を狙ってるの?」
「ちょっと野暮用でな。そしたらお前を見かけたからついでだ」
荼毘の言い方からすると少なからず私の個性はまだ彼らにとって利用価値がある。
だったらここで足止めをしてエンデヴァーたちの邪魔はさせない!
「じゃあ私があなたを捕まえる」
「お前が俺の相手になるのかよ」
「私だって少しは強くなってるよ。あの時悔しかったの晴らしたいし。それになにより目の前にいるヴィランを放っておくことは出来ないもん」
強くなってる、そうは言っても相手が格上なことくらいわかる。
だけどせめてエンデヴァーが脳無との戦闘を終えるまで足止めしてみせる。
小さく息を吐いて集中力を高めて荼毘を見据えると「へぇ、この前よりいい目するようになったな」と口角を上げていた。
あれから少しでも強くなれるようにたくさん訓練をした。あの時、怖くて何も出来なかった私じゃない。
「それじゃあ、お手並み拝見させてもうぜ」
そう言うと同時に地面を蹴った荼毘が拳を振り上げて私に迫ってくる。
直前で個性を使われたとしても治癒で治せる。だったらこの物理攻撃をどうにかする方が優先!
重心を後ろに移動させて拳をかわしながら荼毘の手首を掴んで引き寄せて重心を崩させる。
そこら辺の弱いヴィランならこれで足元に攻撃でも入れれば怯んでくれるはずなのに、彼は軽い身のこなしで私の攻撃をかわすどころか、攻撃の勢いと体格差を利用して私を投げ飛ばした。
「ぐぅ…っ!!」
痛い、息…だめ、落ち着け。
受身を取る間もなく背中を打ち付けたから呼吸が一瞬止まる。
力、残しておきたかったけど荼毘相手にそれはやっぱり出来ないみたい。
いざとなったら自己治癒しながらでもここで足止めしないと。
「そんなもんかよ」
「まだまだ…!」
体術だけじゃ負ける。勝つために頭をフル回転させて、体を素早く動かせ。
地面を蹴って荼毘の懐に飛び込みながら圧縮して鋭くした風を数撃飛ばす。
当たってくれたらいいのにそれを軽々かわされた。
だけどあなたがそれをかわすのはわかってた。ほんの少し隙を作れればそれでいい!
荼毘が私の攻撃に集中してる隙に今度は私が体格差を利用して彼の視界から消える。
低空姿勢のまま路地の壁を蹴って荼毘の背後に回り込みもう一度圧縮した風を飛ばして、それを強風を起こして加速させる。
風は強いと大人でも立っていられなくなるから…!
圧縮した風で関節を押さえて動きを封じながら強風で体を壁に押し付けて、私もそのまま荼毘に近付いて後ろ手に押さえつけた。
「少しはマシになったな」
「あれから何もしなかったわけじゃないから」
拘束しても尚、余裕そうな表情の彼を見て腕を捻り上げると「痛ェなァ」と漏らした。
それでもまだ彼にはどこか余裕がある。
ここで荼毘を捕まえられたらヴィラン連合の勢力は衰える。
早く応援を呼んーー
「お前やっぱ詰めが甘ェな。だから勝てねぇんだよ」
「え…ぅわっ!!」
拘束した荼毘の手のひらから蒼炎が上がって私の腕にも炎が移ってきて一瞬力を弱めてしまった。
その一瞬の隙に拘束を逃れられて逆に腕を掴まれて壁に押し付けられる。
形勢逆転ってまさにこの事だ。
炎が熱くて皮膚が焼けるのがわかる。焼かれた側から出来る限りの速度で治癒しないとすぐに肉が焼けてしまいそう。
「自己治癒出来るようになってんのか」
「うぅ…あ…っ、に、逃がさない…!」
掴まれてない方の手で荼毘の服を強く握りしめる。
荼毘が私の腕だけに最小限の炎を纏わせているのを見ると彼は私相手に力を使いたくないんじゃないか。
そうじゃなければ私なんて一瞬で燃やせるはずだ。
それに私の個性が目当てなら気絶でもさせて連れて行けば楽なのにジワジワと熱で治癒を使わせてるってことは私の個性を試してる…?
どちらにしても例え私の腕が焼き切れたって、絶対に離さない。
「その傷…自分の個性で焼けたんじゃ、ないの?だったら、このままじゃあなたも自分の個性に、焼かれる…!」
「自分の心配だけしてな」
少し火力が上がった。皮膚が、肉が、熱くて痛い。
激しい熱と痛みと治癒を繰り返して意識が飛びそうになって荼毘を掴む手が震える。
気張れって、倒れないって約束した…!
「……そろそろか」
彼はそう呟くと今まで出していた炎を消した。
危なかった。あのまま炎を出し続けられていたら治癒も限界が来て意識も飛んでいた。
…なんで火を消したの?なにが目的なのかわからない。そろそろってなに?
霞む頭で考えても疑問のまま何もまとまらない。
「もっと早く根を上げると思ったが、粘られちまったなぁ」
力が入らない私を抱えてどこかに移動しようとする彼に残ってる気力で風を巻き上げて抵抗するけど意に介されない。
だったら次を考えなきゃ。
抵抗をやめてなるべく深く呼吸をして脳に酸素を送って頭を晴らすことに集中する。
ヴィラン連合が合流してしまう前に、私が出来る最善を考えろ。
「おーおー、だいぶ派手にやってんなぁ」
路地を出て大通りに進むとヒーローと脳無が交戦して被害を受けた街が目に入る。
ホークスは、エンデヴァーはどうなったの?
さっきまで目の前にいる荼毘に精一杯で周りを気にする余裕がなかったけれど、戦ってる音がする。
それから少しして一瞬の静寂のあとに歓声が聞こえる。
ヒーローたちが勝ったんだ。そう確信したら無意識に口角が上がってた。
「ちょーっと待ってくれよ。いろいろ想定外なんだが」
その声に少しだけ顔を上げるとボロボロになったエンデヴァーとホークスが視界に入ってホークスが私を認識して「みょうじさん!?」と驚く声が聞こえる。
エンデヴァーは戦える状態じゃない。ホークスだって羽根が残ってない。
荼毘のところから自力でヒーローたちの方に戻らなきゃ私がいたら何も出来ない。
さっき私と戦っていた時とは比べものにならない炎を出し、炎の壁を展開させて私たちは孤立状態だ。
隙を作らなきゃーー
「なまえ」
九州出発前の教室。ヒーロースーツのチェックを済ませていると一緒に来てくれていた勝己くんに名前を呼ばれて顔を上げる。
目の前に差し出された彼の手の中には、彼がコスチュームを着ている時に身に付けている簡易手榴弾が入っていた。
「持ってけ」
「ホークスのとこだし、危ない現場じゃないと思うよ?」
「いいから黙って持ってけや!…今回は近くにいてやれねぇから」
私を心配してくれて、これを渡すためにわざわざ教室までついて来れたんだと思うと頬が緩んでしまいそうになるのを我慢して、手榴弾を受け取りながらお礼を伝えた。
不器用な彼の優しさが大好きで、愛おしく思う。
「威力はねェが、隙つくるくらいにはなんだろ」
ありがとう、勝己くん。
荼毘はエンデヴァーたちに釘付けで、私はまだ動けないと思われてるから油断してる。
チャンスは今しかない。
コスチュームに隠し持っていた手榴弾に素早く手を伸ばしてそのまま安全ピンを引き抜く。
それと同時に少しでも荼毘と距離をとるように手で体を押しやりながら彼に向かって手榴弾を投げると眩しい光が一瞬見えたあと爆発音と爆風で拘束が緩んだ。
「!?」
「ぐ…っ!」
爆風の勢いに個性を使って自分の体をエンデヴァーたちの近くに運ぶけど、余力がなくて地面に転がった。
コンクリートに叩き付けた体が痛い。だけど荼毘から離れられた。
勝己くんが持たせてくれた手榴弾がなければこうはいかなかった。
「…まだ力残ってたのかよ。意外にタフだなお前。完全に油断した」
「みょうじさんって結構思い切りがいいんですね」
「あれしか、思い浮かばなかったんです…!」
ここからどうする…?
荼毘から離れたとはいえ、エンデヴァーも重症でホークスの羽も少ない。
私も個性を使いすぎて体動かない。
……でも、そんなのただの言い訳だ。
立たなきゃ。戦え!足を動かせ!
「ぐっ…!」
「いや、あなたは休んでて下さい。俺やります」
誰が見たってボロボロな体を起こして戦おうとしているエンデヴァーをホークスが制していた。
現状ホークスがこちらの一番の戦力だけど、それでも荼毘を相手にして勝つというのは難しいように思う。
一瞬私に目を向けて「みょうじさん。あなたもギリギリだとは思いますが、エンデヴァーさんの治療をお願いします。少しでもエンデヴァーさんには回復してもらわんと」とこれからを考えて指示を出された。
私は彼の言葉に返事をしてエンデヴァーに駆け寄って自分に出来る最大限で治癒をする。
私だってヒーローの卵だ。優先するべきは何で、誰なのか、そのくらいわかる。
「俺が勝てるハズねえだろ。満身創痍のトップ2相手によ」
そう言うと同時に荼毘が地面を蹴って炎を纏わせながらこちらに向かってくる。
応戦を…!いや、ホークスを信じてエンデヴァーの治癒を…!
荼毘が近付いて来た時、私たちの間に何かが勢い良く降って来てお互いの動きが止まった。
「ニュース見て"跳んで"きたぜ!」
私たちの前に現れたのはヒーローミルコ。
思ってもいなかったこちらの援軍に荼毘は「ったく、いいとこだったのに…」そう呟くと口から黒いヘドロのような液体を吐いたと思ったらそれに包まれて姿を消した。
何が何だかわからないけれど、彼がいなくなったということはこの騒動が終わったということだと思う。
荼毘が去って張り詰めていた糸が切れたのかエンデヴァーは意識を失ってしまった。
これだけの傷、これだけの出血量で今まで意識を保っていられたことがすごいんだ。
「みょうじさん!血出てます!」
「……え?」
ホークスにそう言われて自分の鼻から血が垂れてることに気が付いた。
きっと個性使いすぎたから…。
でも少しでもエンデヴァーを治さなきゃ…彼はNo.1ヒーローになって、これからのヒーロー社会になくてはならない存在で、それからなにより轟くんのお父さんなんだから。
「大丈夫です、このくらい、だいじょ…ぶ……」
激しく世界が歪んで目が回る。
一瞬すごく焦っているようなホークスの顔が見えたけど、視界が真っ暗だ。
次に目を開けた時、私は病院のベッドの上にいた。
