僕らの日常。
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文化祭当日の朝。
いつもより少し早く談話室にみんなが集まって来て朝食をとって準備をする。
今日この日のためにやれる事は全部やった。だけどどうしても緊張はして少しそわそわしちゃう。
私は昨日早く寝ちゃったから起きてから聞いたんだけど、緑谷くんが使っていたロープがほつれている事に気が付いて早朝トレーニングをした後、朝一でそれを買いに行ってくれるみたいだから他のメンバーで本番に向けて準備をしていくことになった。
準備とは言ってもあとは着替えて楽器を運び入れて本番を待つだけなんだけど。
「ダンスの衣装もバッチシー!」
「既製品に手加えただけだけど」
お揃いのダンスの衣装を身に付けるとそれだけで嬉しくなって「あとで写真撮ろ~!」って話してたら緊張が少しだけ紛れた気がする。
こういうのってなんかすごく普通の女子高生って感じで新鮮!可愛い衣装も着て気分がいい。
「ねえねえ!見て~!この衣装どう?」
「……まぁまぁ」
テンションが上がって勝己くんの前で一回転して衣装を見せるとわかってはいたけど反応がイマイチ。可愛いなんて言わないことはわかってたけどね!!
本番が近付いて勝己くんの隣でソワソワしてる上鳴くんにも「どう?」って聞くと「エロいと思う!」って言われて、これはまた思ってた感想と違くて固まってしまった。
「あ!違くないけど違う!可愛い!」
「ア?」
「俺詰んでない…?」
上鳴くんを勝己くんがすごい形相で睨むから思わず笑ってしまった。
そういえばさっき峰田くんも「エロけりゃいい!!」って言ってたけど、この衣装は可愛いと思うんだよね。男の子のそういう感覚ってよくわかんないや。
「そういえば勝己くんはTシャツ着ないの?」
「着ねぇ」
「黒シャツの勝己くんもいつもと違う雰囲気でかっこいいけど、みんなとお揃いのTシャツも見たい!滅多に見られないし!」
「…気が向いたらな」
私たちのやり取りを聞いて勝己くんの死角から響香ちゃんと上鳴くんがグッと親指を上げてるのに気付いて、みんなに言われても着なかったのか!と瞬時に理解した。
みんなに言われて着なかった人が私が言ったからって着るとも思えないけど…って思ってると「最終確認するよ!」って声が聞こえてダンス隊と演出隊が集まってるところに合流して流れを再確認していく。
本番の時間が迫ってくるに連れて緊張感が漂うと同時にいつまでも緑谷くんが帰って来ないことに不安と焦りも出て来る。
しっかり者の緑谷くんだから時間は把握しているはずだし、間に合うと信じるしかない。
私は私のすることに集中するために深呼吸をする。
「おいなまえ」
「ん?」
「ぶちのめすぞ」
勝己くんが隣に来たと思ったらドラムのバチを片手に真剣な表情で言うもんだからおかしくなった。
これは私が言い合いになった生徒とこの前敵意を向けて来た生徒、それから他にもストレスを抱えている人たちに勝つぞってことだ。
それに私の緊張も解してくれようとしてるってすぐにわかった。
「ふふ。おう!勝つぞ!」
私の言葉に満足そうに笑う勝己くんを見たら緊張なんてなくなって、やるぞ!って前向きで自信が持てた。
それだけ言ってバンド隊の方に戻っていく勝己くんがバンドTシャツをちゃんと着てることに気付いて、上鳴くん辺りが無理やり着せたんだろうなって思うけど、脱がないで大人しく着てるところがやっぱり素直じゃないなぁって微笑ましくなった。
10時。
なんとかギリギリ間に合った緑谷くんに安堵しつつ本番に向けて各自ポジションについてスタンバイして始まりのブザーが鳴ると同時に幕が開いた。
申し訳程度の拍手が聞こえて、ここにいる人たちは楽しむためじゃなくて私たちを品定めするためにいるんだと実感した。
だけど、そんなのどうだっていい。
私達も楽しんで、みんなにも楽しんでもらって、それで勝つんだから。
「いくぞコラァアア」
『雄英全員 音で殺るぞ!!』
勝己くんの大声と同時にステージ上でド派手な爆発が起きる。
それが始まりの合図となって演奏とダンス、演出がそれぞれ動き出す。
爆発のおかげでツカミは完ぺき!
曲の前奏に合わせて私達も覚えてたくさん練習したダンスを踊る。
「よろしくおねがいしまァス」
響香ちゃんの声が響いて、まだ始まってほんの数秒なのに私までわくわくして楽しい!
体中にビリビリって電気が流れるみたいな、なんかそんな、わかんないけど気持ちが高ぶって来る。
曲が進むにつれて会場にいる人たちも盛り上がってくれてひとつになるような感じがする。
サビに向けて峰田くんや瀬呂くんが個性を使って、サビに入った瞬間に轟くんの氷結がみんなの個性を土台にしてひとつにしながらいくつもの氷の道を作っていく。
「行ってこいダンス隊!!」
障子くんがダンス隊を氷の道に向かって投げたのを見て、私もお茶子ちゃんたちが浮かせたお客さんを柔らかい風で運んで移動させる。
上から切島くんが削った氷が降り注いで、それを青山くんのレーザーとライトが照らして幻想的な空間を作り上げてる。
それからバンド隊の演奏と響香ちゃんの歌声が会場を包んで熱を帯びて一体となっていく。
踊りながらその光景を見て楽しくて、胸がドキドキとして、最高だって思った。
「響香ちゃん!!最高だったよ!!私踊りながら震えた!!」
「ありがとう。ダンスも最高だったよ!」
4分なんてあっという間に終わっちゃって、でもドキドキと余韻が残ってるのを感じながらも会場の後片付けをして少しずつ現実に戻っていく。
大量の氷を小さくしながら運んで、勝己くんと轟くんに溶かしてもらっていると私たちのステージを見に来てくれていた人たちが声をかけてくれた。
「ああ…楽しかった、良かったよ」
そんな声が聞こえて見るといつだったか敵意をむき出しにして来た普通科の人たちだった。
私たちがその人たちを注視してると心の底からの気持ちだったんだと思う、大きな声が響いた。
「ごめん!」
「こき下ろすつもりで見てた!」
そう言われて私たちのステージを見て彼らには通じたんだって思ったらすごく嬉しくなった。
ちゃんと向き合えば気持ちは伝わる、わかってもらえる、それが伝播して広がっていけばいいな。
「……みょうじ、さん」
片付けを再開していると名前を呼ばれて顔を上げると私の前に立っていたのは言い争った普通科の男の子2人だった。
彼らは私を見てなんだかすごく気まずそうにしている。
「…この前はごめんなさい。私、あなたたちの気持ち、ちゃんと考えられてなかった」
私たちは好きでヴィランに狙われたりしてるわけじゃないけど、でも当事者でない限りわからない思いもあって、お互いにちゃんと話すべきだったって反省した。
きっと私がヒーロー科じゃなかったら、狙われる方じゃなかったら、少しは彼らと同じことを思ったかもしれないもん。
カッとなって話を聞かなかった私にも非はある。だからそこはちゃんと謝ろうって思ってた。
「俺たちもごめん!みょうじさんの気持ち考えなかったし、爆豪のことも悪く言った!」
「さっきのステージも他科のためってふざけんなって最初は思ってたけど、すっげぇ楽しかったし、気持ちも伝わった。周りが見えてなかったのは俺たちの方だった。だから本当にごめん」
あの人たちだけじゃなかった。ちゃんとこの人たちにも伝わってたんだって思ったらすごく嬉しくて笑みがこぼれると彼らも申し訳なさそうに笑った。
それを見て私が彼らに向けて両手を出すと不思議そうにしながら私の手と顔を見てた。
「これで終わりってことで、仲直りの握手です」
私の言葉を聞いて今度は嬉しそうに笑って2人とも私の手を握ってくれた。
嬉しい。だって私もライブ中、会場がひとつになるのがわかってすごく心が震えたもん。
伝わってよかったって心から思った。
「俺、これからみょうじさんのこと応援するよ」
「えへへ…なんか恥ずかしいけど、ありがとう」
彼らの背中越しにこっちを見ている勝己くんと目が合った。
きっと私が2人と話しているから様子を見ていてくれたんだと思う。
「勝ったよ!」
目の前にいる2人に気付かれないように、勝己くんにだけ伝わるように口を動かして笑うと勝己くんも満足して嬉しそうに笑った。
他科との溝が深くならなくて、むしろ埋まったように思うから本当に良かった。
私の勝負は無事にお互い後腐れなく終わったから、あとは今日この文化祭という日をめいっぱい楽しむだけだ!
早く文化祭を満喫するために早く片付けを終わらせよう!
