僕らの日常。
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爆豪くんが家まで送ってくれて家に入るとすぐに携帯が震えてメッセージの受信を知らせた。
確認するとさっきまで一緒にいた爆豪勝己の文字。
なんだろう?と思って確認すると
「明日7時30分に駅」
という必要最低限なぶっきらぼうなメーッセージ。
えっと、これは明日一緒に登校するってことだよね?
なんで?今までこんなことなかったし。
爆豪くんと仲良くなれたのは嬉しかったし、私と一緒にいるのが少なからず彼にとって苦ではなかったってことだよね?
「一緒に登校してくれるの?寝坊しないように気をつけるね!」と返信して携帯を閉じる。
これまで爆豪くんと話すことはほとんどなくて、それこそ必要最低限の会話とすら言っていいかわからないやり取りだけだった。
彼はクラスでもすごく目立ってるからどういう人かっていうのはわかっていたけど、ちゃんと接してみて不器用だけど気遣ってくれるし、優しいし、私が思ってた印象とは違うことに気付いた。
こんなに爆豪くんのこと考えるなんて初めてだ。
「え!なに!もう!爆豪くんのことばっか考えるって乙女か!!」
我に返ると恥ずかしくなって誰もいない空間に向かって大声を出して、ボスっとベッドの上に置いてあるクッションに顔を埋める。
そういえば電車の中で私が苦しくないようにしてくれてたなぁ…。
なんか守られてるみたいだったし、顔近くて、顔あげたら触れちゃいそうで…。
「もおおおおお!!!なに守られてるみたいって!!!」
体温が一気に上がるのがわかる。
ぐるぐるぐるぐる、思い出しては恥ずかしくなるの繰り返し。
守るられるってなんだ…私は守るためにヒーロー科に入ったんでしょ。
大体あの爆豪くんだ。
なにか私に対して特別な感情があるとかでは絶対ないと思う。
きっと気まぐれだ。
ちょっと話して苦ではなかったと思ってくれたんだとして。
それこそ黙ってれば轟くんに勝るとも劣らないくらいのかっこ良さなんだから、女避けとかかもしれない。
あーそれかも。爆豪くんきゃっきゃされるの嫌いそうだし。
そこまで考えて今度は自分の気持ちが沈んでいくのに気付いた。
「…なんだこれ」
ボソッと呟いた言葉は誰もいない静かな部屋に消えていった。
それからなんとなく毎日登下校を一緒にするようになった。
本当にただ一緒に学校に行って一緒に帰るだけ。
帰りは毎日家まで送ってくれて、申し訳ないなぁって思う反面、2人でなんでもない話をする時間が好きだったりする。
帰りのホームルームが終わると爆豪くんは教室を出て私がクラスメイトに挨拶して下駄箱に行くのを待っててくれてる。
そういう風にして待っててくれてるからクラスの子たちには一緒に帰ったりしてるの知られたくないのかも、と思って私もみんなには内緒にしている。
いちいち言いふらすようなことでもないしね。
「ちょっと」
爆豪くんが待っててくれてるし早く行かないとと急いで下駄箱に向かってると知らない声に呼び止められて声の主を見た。
もちろん顔も知らない敵意むき出しの女子が2人。
制服を見ると普通科の人だ。先輩かな。
「私です…よね?」
「あなた以外に誰がいるの?ちょっと付き合ってくれない?」
これがいわゆるツラ貸せやってやつか。
爆豪くんのこと待たせてるんだけど…。早く終わる用事かなぁ…。
場所を移動しながら爆豪くんに「帰ってて」と短く用件だけを送信した。
連れて来られたのは校舎から少し離れた体育館裏。
えーーーよくあるやつだ…。まさか自分がされる事になるとは思わなかった。
「えっと、なんですか?私急いでて」
「それなら単刀直入に言うわ。爆豪勝己くんから身を引いてちょうだい 」
やっぱり爆豪くんモテるんだなぁ。しかも先輩からも。
こういう人たちがいるから女避けも必要だって今すごく納得した。
「先輩たちは爆豪くんが好きなんですか?」
「そうよ。彼は強い男なの。あなたなんかには相応しくないの」
「誰が相応しいか、決めるのは彼です」
「この口…うるさいのよ!!」
パシンっと乾いた音が響いて、ジンジンと頬が熱くなって目の前の人に叩かれたのだと数秒遅れて気付く。
無性に腹立たしかった。
この人たちは爆豪くんをなんだと思ってるの?
「そういうところだと思いますよ、先輩」
「は?」
「爆豪くんの嫌いなこと。そうやって私に身を引くように根回しして真っ向から戦わない。そんなやり方しか出来ない人を彼が視界の端にでも入れることはないと思います」
「この女ぁ!!」
彼女は私を殴りつけて、違う先輩は私のお腹に蹴りを入れた。
痛い…けど、私だって毎日鍛えてる。
普通科の女の人の殴る蹴るなんて耐えられる。
それに爆豪くんのことだもん、負けられない。
「なによ!反撃して来ないわけ!?」
「しませんよ。私はヒーロー科です。人を守るためにしか力は使わないし、屈しません」
「身の程を知りなさいよ!!」
振り上げられた手を見てまた殴られると思って衝撃に備えたけど、その衝撃はいつまで経っても襲って来なかった。
「何してんだ、てめェら」
痛みの代わりに聞き慣れた声が降って来た。
目を開けると見慣れた薄い金髪の少し広い背中。
手を振りあげた先輩はこの世の終わりかってくらい絶望的な顔をしている。
彼が彼女の腕を掴んで阻止してくれたんだ。
なんでここにいるの…。帰っててって連絡したのに…。
「ば、爆豪くん…!?なんでこんな女庇うのよ!!」
「うるせぇんだよクソモブ女共が!!」
「なっ!」
「守るために力使うんがヒーロー科なんだよ」
いつもより低くて怒りが込められた声。
私からは背中しか見えないけど、彼の声と表情で先輩たちは臆しているようだった。
思いを寄せている人に真っ直ぐな怒りをぶつけられたら尚更だろう。
「二度と俺の前にツラ晒すんじゃねぇ」
彼が先輩の腕を解放すると彼女たちは一目散に逃げて行った。
爆豪くんが私の方に振り返ろうとしたので慌てて顔を隠す。
「何しとんだ」
「今きっとひどい顔だから見ないでもらえると…」
顔を隠した私の手を爆豪くんが抑えてどかすと、チッと舌打ちをするとそのまま私の手を掴んでズカズカと歩き始めた。
どこ行くの?という質問には答えず、連れて来られたのは保健室。
今はリカバリーガールもいないみたいで、顎で椅子に座れと指示され渋々言われた通りにする。
「血ィ出とんぞ」
「爆豪くんが手当してくれるの?」
「ざけんな!てめェでやれや!」
「へへ、ありがとう」
消毒液とガーゼを取ると優しく消毒してくれる。
そのあと丁寧に絆創膏も貼ってくれた。
もっと雑な手当かと思った。
「……聞いてたの?」
「あ?」
「守るためにしか力使わないってやつ」
「黙ってろ」
「…なんで来てくれたの?」
「てめェが帰れって寄越すからだろーが」
「帰れだよ?来てじゃないよ?」
「理由も言わずにそれだけ送って来ねぇだろ、てめェは」
「へへ、爆豪くんには隠し事できないねぇ」
あの短いメッセージで、私の性格考えて、心配して探しに来てくれたんだね。
あなたは素直じゃないから心配したとは言わないけど、きっと必死に探してくれてたんだろうなって思う。
「さっきね、爆豪くんが私のヒーローだったよ!来てくれてありがとう、嬉しかった」
そういうと彼は「無駄口叩いてねぇで帰る準備しろや!!」と怒鳴って来たけど、照れ隠しかなと思うと頬が緩んでしまって、また「何笑っとんだ!クソが!!」とさらに悪態をつかれた。
それに絡まれてた理由も聞かずに手当をしてくれる彼は本当に優しい人だと思う。
「ねえねえ、爆豪くん。今度辛い物でも食べに行こうよ!お礼に奢るから!好きでしょ?」
「あ?めんどくせぇわ」
「決定だね!調べとこーっと」
「話聞いとんのか」
あのね、必死に探して、助けに来てくれて、優しいあなたは不器用だけど誰よりも私のヒーローだったよ。
だからね、あなたのこと何も知らない人に私だって負けられないんだよ。