僕らの日常。
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※原作沿いです。
仮免試験からデクVSかっちゃん2まで。
苦手な方はご注意ください。
ついに。ついにこの日が来た。
仮免試験!!
この日のためにみんなで個性を伸ばした。必殺技も考えた。
やれる事は全部やった。
あとは試験に合格するだけだ。
試験は二次まであった。
一次試験は言わば総当たり戦で受験者1540人の内、先着100人が合格出来るというものだった。
勝己くんは切島くん、上鳴くんと別行動をしていた。
私は、勝己くんに着いて行ったら足でまといになる。
それに今自分に出来ることを。
風の個性だって伸ばした。
鋭い攻撃性の風だって、誰かを守る為の柔らかい風だって扱える。
クラスで固まっていたのに分断されてしまったりして、いろいろ大変だったけど、私も個性を最大限使って相手の攻撃を逆手に取って無事に一次試験を合格した。
A組全員。第1次試験合格。
「やったやった!!みんな合格だぁ!!」
「この調子で次も頑張ろう!!」
お互いを鼓舞し、称えあう。
それから二次試験が始まるまでは軽食を取ったり、談笑したり、精神統一をしたり、各々自分のペースで過ごした。
アナウンスが流れ、嬉しい気持ちを落ち着かせて二次試験に向けて集中する。
二次試験は災害現場での救助演習だった。
今度は落とし合うのではなく協力を求められる。
私の個性は風と治癒。
けが人を見つけるよりも寄り添う方がいい。
みんなと別れて救護班に合流し、治癒にあたる。
「聞こえますか?大丈夫、すぐ助けます!頑張って!」
運ばれてきた人を見てまわり、トリアージの優先順に完全治癒とまではいかないけれど意識が回復して痛みが緩和するくらいに治癒を進めて行った。
これは…予想してたけどかなりきつい。
体力アップしといてよかった。
それでもまだまだこれからだ。
私の元に来た人は死なせない。
とにかく目の前の、出来ることを全力で!!
要救助者の避難が全員完了したというアナウンスが流れ、二次試験は終了した。
私は治癒を使いすぎて正直もう立てなかった。
どうにか気力だけで乗り切った。
また課題が見えた。
どこまで行っても地道な体力アップだ。
「はぁ、はぁ、」
「君、大丈夫?個性使いすぎた?立てる?」
「は、はい…すみませ…!?」
知らない学校の男性が手を貸してくれようとしたけど、それより先に腕を掴まれて体が持ち上がる。
一瞬の間に視界がまわる。
気が付けば勝己くんの肩に担がれていた。
「か、つきくん…」
「モブ治しててめェが倒れてたんじゃ世話ねぇな」
「返す言葉もない…でもお姫様抱っこがよかったなぁ…」
「体力ひ弱な奴に選択権はねぇんだよ」
「手厳しい…」
でも勝己くんの言う通りだ。
救助者を助けて私が倒れたらいざと言う時戦えない。守れない。
強くならなきゃ。もっと、もっと。
そして、運命の結果発表。
一斉に合格者の名前が表示される。
ーーーーみょうじ なまえ
「あ…あった…!」
合格!合格した!!
勝己くんは…!?
「え…?」
な、なんで?
勝己くんの名前はどこにもなかった。
そして、轟くんの名前も。
うちのクラスのツートップと呼ばれてる実力者2名が試験に落ちてしまった。
だけど不合格者にも3ヶ月の特別講習を受ければ仮免を発行するという説明があった。
もちろん2人ともやる気だ!
しばらく学業と並行して講習を受けることになるから忙しくなる。
頑張れ、勝己くん!轟くん!
こうして私たちの長い夏休みは幕を閉じた。
…かに思われたけれど。
その晩。勝己くんが全然電話に出ない。
談話スペースにもいないし、寝てるのかな。
いつもは近くにいてくれるか、部屋にいても連絡くれるのに。
今日の仮免試験。
勝己くんは技術や判断力、応用力、機動力、それだけ見たら絶対合格なんだけど、口悪いからなぁ。
優しいのにそういうところで損しちゃうんだよなぁ、もったいない!
絶対合格出来たのに!
それから最近の悩み事。それが何かはわからないけれど。
心配だ。
勝己くん、自分を追い詰めたりしていないといいけど。
消灯時間になって、みんなが自室に戻っても私は戻る気にもなれず、氷を入れたグラスに紅茶を注いで準備してからソファに腰掛けた。
テレビを付けてみたけれど見る気にもなれずに、ただ垂れ流してぼんやり時間が過ぎていく。
「どこにいるの?」
30分前に送ったメッセージに既読がつかない。
こんなこと今までなかったのに。
寝てるだけならそれでいい。
それから1時間くらい経って、玄関が開く音が聞こえた。
消灯時間はとっくに過ぎてるし、この時間に玄関から誰かが出入りすることはまずない。
誰がこんな夜中に…?
「え!?」
玄関から入ってきたのはボロボロになった勝己くんと緑谷くん。
2人とも怪我をしているみたいで手当がしてあった。
「な、なにかあったの!?大丈夫!?」
「あ、うん、ちょっとケンカを…」
「ケンカ!?」
「…起きてたんかよ」
「起きてるよ!連絡しても全然見ないし!心配してたんだから!」
2人ともバツが悪そうにしている。
この2人が仲良くないのは知ってる。
でもまさか授業外でケンカしてこんなに怪我して帰って来るなんて…。
「もう、2人とも治癒するから座って」
「ありがとう。でも相澤先生に治癒してもらうなって怒られちゃって」
相澤先生にこっぴどく怒られたのね。
だからバツが悪そうにしてるんだ。
そりゃ消灯時間も過ぎた夜中に勝手に出歩いてケンカしてたんなら先生は怒るさ…。
治癒してもらうなって言われたなら仕方ない。
「応急手当はしてもらえたんだね、よかった」
「あ、いや、それが…」
「…謹慎になった」
「ええ!?2人とも!?」
「うん…あと寮内清掃と反省文…」
「…そっか。じゃあ反省してよ!謹慎コンビ!」
2人のことだ。きっと男の因縁とかで、私がとやかく言うのは違う気がした。
だから私は笑った。
「ありがとう、みょうじさん。それじゃあ、おやすみ」
そう言うと緑谷くんは自室に戻って行った。
エレベーターに乗る彼を確認すると勝己くんは少し気まずそうにしながらも私に向き直った。
「悪かったな、心配かけて」
「まさか怪我して帰ってくるとはなぁ!」
私が冗談でそう言うと彼はまた視線を逸らす。
「解決した?」
「あ?」
「悩み事」
「…なんの事だよ」
「最近悩んでたみたいだったから。私だって勝己くんのこと見てるんだからね!?」
指で丸を作って顔に当てて眼鏡にしておどけた。
「帰って来たら顔付き変わってたから。解決できたのかな、って」
そうやって私が微笑んだら、腕を引っ張られて勝己くんの胸にすっぽりと収まってしまった。
名前を呼んで顔を確認しようとしたけど、ギュッと力を込められて彼の表情を見ることは出来なかった。
「気付いてたんか」
「悩んでるなぁって思ったくらいで何にかはわからないよ?」
「そこまでわかったらキメェわ」
「すごく悩んで余裕なかったと思うのに、いつも私のこと優先して気遣ってくれて苦しかったよね」
「余裕だわ」
「私が勝己くんのこと追い込んじゃったよね」
「なまえがいたから折れなかったっつったろ」
「ごめんね。今度は支えさせてね」
「……」
私を抱きしめている手がより一層力強くなった。
きっとギリギリだったんだね。
弱いところを見せたくないあなたがこんなに弱って震えるなんて。
「いいんだよ、勝己くん。勝己くんの弱いところも私が受け止めるから、いいんだよ。」
「弱くねぇわ、強ぇわ」
「そうだね」
謹慎、という形にはなってしまったけど、それでも私は少しでも勝己くんの心が軽くなったなら結果的にはよかったのかなと思う。
やっぱり私では解決出来なかった。
緑谷くん、ありがとう。
勝己くんを助けてくれてありがとう。
「…キスしてぇ」
「え、今!?だめだよ、謹慎でしょ!」
「は?キスすんのに謹慎もクソもねェわ」
「相澤先生に怒られてるんだから反省して!問題児!」
こうして本当に私の長い長い夏休みは幕を閉じた。
次の日、事情を知ったみんなは心配する…というより二人を馬鹿にして空気を和ませてくれていた。
始業式。二学期がはじまる。