僕らの日常。
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※原作沿いです。
家庭訪問から入寮まで。
苦手な方はご注意ください。
家庭訪問が行われた。
内容は林間合宿で私たち生徒を危険に晒した事への謝罪。
これから生徒の安全を守るための説明。
そして、全寮制を導入することの説明だった。
この狭い家にも相澤先生が訪問して来た。
私の両親はもちろん、私の安全をなにより心配していた。
けど、会見での相澤先生と神野でのオールマイトを見て心を掴まれたと。
「娘をどうか、立派なヒーローにしてやってください」
「お父さん、お母さん…!」
二人は相澤先生に深く頭を下げ、相澤先生も頭を下げた。
「すみませんが、少し娘さんをお借りします」
「え、」
話がひと段落すると相澤先生にそう言われ一緒に外へ出て、車に乗れと言われたので相澤先生の車の助手席に座る。
「みょうじ」
「は、はい!」
「お前爆豪の家行ったろ」
「なぜそれを…!」
やばいやばいやばい。私あの時外出禁止令出されてたのに…!
よりによって相澤先生に知られるって怒られる!
怒られるだけで済む!?下手したら除籍…!!
「爆豪の親御さんがお前に感謝してたよ」
「へ?」
怒られると思ってたから想像してた内容と違くて間の抜けた声を出してしまった。
そっか、相澤先生、爆豪くんのおうちに先に行ってたんだね。
「爆豪を必死に助けようとしてくれた。心配してくれた。アイツにも守りたいと思える存在がいた。お前が謝ることじゃないのに来てくれて救われたってな」
「…あの時、私は逆にお母さんに気を使わせて、励まされたんです。誰よりも爆豪くんの身を案じていたのはご家族なのに」
膝に置いた手をギュッと握りしめた。
私はまだまだだ。ヒーローとしても、人としても。
唇を噛むとポンっと相澤先生の手が頭に乗せられて、そのままワシャワシャと頭を撫でられた。
「これからだ。これから成長して守れるヒーローになればいい。」
「はい…!」
「お前に謝罪させて悪かったな」
「いいんです、やりたくてやったことだから」
私がそう答えると相澤先生は口元を上げて少し笑った。
そして一瞬いつもより長く目を閉じて開けたら今度は鋭い目に睨まれた。
迫力はさすがプロヒーロー。
「だがな、お前外出禁止令出されてただろうが!ヒーローになるんなら命令は守れ!自分勝手な行動をするな!」
「ごめんなさい!!」
「爆豪の話でお前が狙われた理由はお前の個性だとわかった。いつまた狙われるかわからない。自衛しろ、敵に隙を見せるな」
「はい…!」
「…今回は爆豪の親御さんの気持ちを汲んで目をつぶってやる。次は無いからな」
「肝に銘じます」
「よし。話はそれだけだ。爆豪もお前もまだ外出禁止だから出歩くなよ」
「わかってますよ、もう」
私の個性。多分回復の方だと思う。
治癒の個性を持っている人はそう多くない。
私はいろんな人に助けられて、支えられてる。
いつか、私も守る側になるんだ。
誰かを助けて、支えられるヒーローに。
その為に私も戦える力を付ける。
それがこれからの課題だ。
そして明日は入寮日。
今日で久しぶりだった家族の時間も終わる。
「なまえ、明日はお父さんたちも駅まで一緒に行って家に帰るよ」
「え!そうなの!あ、でも多分爆豪くんが駅で待っててくれると思う」
「え…!?」
「爆豪くんいるの!?」
2人の反応が正反対だ。
お母さん目がキラキラしてるし、お父さん生気抜けてる。
「うん、多分だけど」
「なに~?ねぇ、もしかして付き合ってるとか?」
「え!?」
私よりお父さんの方が先に反応した。
お母さんはどうなのよ~って楽しそう。
こんな話お母さんともお父さんともした事ないから余計お母さんはウキウキなのかもしれない。
「付き合ってないよ」
「え、そうなの?でも爆豪くん待っててくれるんだ?」
「うん、いつも待っててくれる」
「ふーん、そうなのぉ。よかったわね、お父さん」
「どこが!良くないよ!全然!!」
お父さんは軽く涙目になってすごく必死。
でも、本当に私たちはそれだけだよ。
一緒に学校に行って、一緒に帰るだけ。
それ以上じゃないんだよ。
「もう、お父さんお風呂入ってくるっ!」って慌ててお風呂に向かった。
お父さん、本当に私に彼氏が出来たらどうするんだろう。そう考えてその時のお父さんを想像したらおかしくなった。
「で?」
お母さんが私の隣にピタリとくっついて、少しイタズラっぽい顔で聞いてくる。
「なまえはさ、爆豪くんのこと好きなの?」
「すっっっ!!!?」
一気に顔に熱が集まるのがわかる。
私の反応を見てお母さんは優しく笑ってる。
もう、やっぱりお母さんには敵わないなぁ。
「…好き、だけど。爆豪くんの気持ちはわからないよ」
「そっかぁ」
「それに、爆豪くんはトップヒーローになるために努力してるの」
「うん」
「だから、私の気持ちは爆豪くんにとって邪魔になるのかなって」
ふわりとお母さんのいい匂いがする。
隣から優しく抱きしめてくれた。
この匂いが、体温が、安心できて大好き。
「それはさ、爆豪くんにしかわからないけど。でもさぁ、なまえはヒーロー目指してるけどその前に女の子だし、高校生だよ。ヒーローになるのも、恋も、両方頑張ったっていいんじゃない?」
お母さんとこういう話をするのは気恥ずかしい。
でも、いつも優しく背中を押してくれる。
「当たって砕けろ!って言うでしょ。なるべく砕けないでほしいけど」
そう言って笑う母は私の自慢だ。
お母さんの娘でよかったって思う。
「ありがとう、お母さん。私やりたいこと全部頑張る。」
「うん、頑張れ!お母さんはいつでもなまえの味方だよ。ただし、心配はあまりかけないでね」
「うん!」
私とお母さんはお父さんがお風呂から出て来るまでいろんな話をした。
私と爆豪くんのこと。お母さんとお父さんのこと。学校のこと。
またしばらく会えなくなるから、その分たくさんたくさん話をした。
翌朝。7時20分。
今日はお父さんとお母さんと一緒に駅まで歩く。
2人は大きなキャリーバッグを引いて、私は事前に学校に必要な荷物を送っておいたのでいつもと変わらずカバンひとつ。
駅までの道を3人でくだらない話をして笑いながら歩いた。
駅に着くと薄い金髪が目に入る。
彼はいつも通り壁に背を預けて、ポケットに手を入れている。
その姿に懐かしさを感じた。
私に気付いた爆豪くんは壁から背中を離してこちらに体を向けた。
「爆豪くん…っ!」
私は思わず駆け出して、爆豪くんに抱きついた。
「は!?おい、何しとんだ!!」
爆豪くんは私を引き離そうとするけど、その力はあまり入ってないように思えた。
「ごめん、ごめんね、いつも助けてくれるのに何も出来なくてごめんなさい。1人にしてごめんなさい」
彼はふぅ、と短く息を吐くと私の頭を大きな手でグッと自分の胸に押し当てた。
「てめェのせいじゃねぇわ。俺が弱かっただけだ。いつまでもしみったれた顔してんじゃねぇわ」
「うん。爆豪くん、怖かった?」
「怖くねぇわ!余裕だわ!バカにしとんのか!」
「私は怖かった」
「そうかよ。…ババアのこともありがとな」
「え!?」
聞き間違いかと思った。あの爆豪くんがお礼を言うなんて…!
思いきり顔を上げると爆豪くんの顔が少し赤く見えた。
そんなに恥ずかしいのにお礼伝えてくれたんだね。
「爆豪くんがお礼言った!」
「てめェ!調子乗んじゃねぇぞ!」
「あの、なまえ?」
その声にハッとした。
お父さんとお母さんのこと完全に忘れてたッ!!
そして私は爆豪くんに抱きついたままだったことを思い出して慌てて手を離す。
「私の両親です」
親の前でなんて大胆なことをしちゃったの!
しかも昨日お母さんと話したばかりで恥ずかしい!
私が恥ずかしさで顔を抑えて俯いていると爆豪くんが私の前に立って両親に向かい合った。
「みょうじにいろいろ心配かけさせた。泣くことも我慢させてたと思う。でもコイツがいたから俺は折れなかった。次はぜってぇ、俺が近くでコイツを守るって約束する」
爆豪くんのその言葉に自然と涙が溢れてた。
泣く事をずっと我慢してた。だって私より爆豪くんとご家族が1番辛かったもの。
あなたが折れなかったのは、あなたの心が強いからだよ。
私は少しも力になれなかった。
「爆豪くん。なまえのことよろしくね。あの子は辛い時ほどよく笑うから、拠り所でいてあげてください」
「わーってる。余裕だわ」
「ありがとう」
お母さんは優しく微笑んで、お父さんは少し複雑そうに笑っていた。
「おら、遅れるから行くぞ」
「うん!お父さん、お母さん!ありがとう!2人とも気を付けて帰ってね。行ってきます!」
「行ってらっしゃい、頑張ってね」
次会う時はもっと強くなって、心配かけさせないようにするからね。
私は2人に手を振って、爆豪くんの隣を歩く。
久しぶりに歩く彼の隣は居心地がよかった。
今日から全寮制になる。
これで2人で電車に乗って行き帰りするのも最後だと思うと少し寂しい。
でもこれからは帰る場所が同じになる。
それはちょっとドキドキして、嬉しいな、なんて思った。
学校に着き、久しぶりにクラスメイトたちと再会する。
みんな無事に入寮する事を許してもらって1人も欠けることなく集まれたことが嬉しい。
でも、相澤先生の言葉に私は驚いた。
緑谷くん、切島くん、轟くん、飯田くん、八百万さんが爆豪くんを助けに行ってたなんて知らなかった。
だけど、その事をみんなは知っていたようだった。
私の病室にみんながお見舞いに来てくれた時に感じた違和感はこれだったのだと、今になって気付いた。
先生は本来なら爆豪くんと耳郎さんと葉隠さんと私以外を除籍処分しようとしたと。
私は自分だけ知らなかったことが悔しかった。
先生の話が終わると爆豪くんが上鳴くんを草陰に連れて行き放電させていた。
草陰から出て来たのはウェイ状態のアホになった上鳴くん。
耳郎さんは盛大に吹き出して、みんなも思わず笑っていた。
「あのね」
せっかく爆豪くんが和やかにしたこの空気をぶち壊してしまうかもしれないけど、今、どうしても言いたかった。
「私、悔しかったよ。私だけ何も知らなかった。私が爆豪くんを助けられたかって言われると悔しいけど、違う…でも、話して欲しかった。私だって爆豪くん助けたかったもん…」
「なまえちゃん…」
「みょうじごめん、」
ギュッと握った指が白くなる。
本心だよ。1人だけ何も知らないで、ただじっとしてるだけだった。
「だけど、爆豪くんもみんなも、無事に帰って来てくれてありがとう!!」
これも本心だよ。
爆豪くんがいて、みんながいて、1人も欠けちゃダメなの。
だってこれが、このメンバーが私の大好きな1年A組だもん。
「みょうじさん、ごめん。ありがとう!」
「無事に帰って来てくれたから、私は許す」
私とクラスメイトのやり取りを見て爆豪くんが笑った気がした。
「爆豪くん」
「あ?」
「おかえり!」
「…おう」
今日から寮生活が始まる。
またここから、新しいスタートだ。