【Hiroto.N】
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Side:Hiroto
「お、西おせーじゃん」
「ごめ、道混んでたわ」
軽く手を挙げてから、取っといてもらった席に荷物を置く。
人気が高いこの大教室での授業は、とっとと行かないと席が埋まってしまう。
余って前の方になるとか嫌だから、こうやって適当に仲いい奴とお互いに早めに着いたら席を確保しておく。
「ほんと人多すぎな?」
「まーね」
「まあ楽単だもんなー。みんな同じこと考えてんだろうな」
昼の授業なのに出席で成績めっちゃくれるし、レポートも甘いらしい。いわゆる楽単。
だから人多いんだろうけど、俺は結構内容も教授も気に入ってる。
……なんて、コイツに言っても伝わんねーだろうし、冷めるだろうし。
適当に相槌を打っていると、チャイムが鳴った。
いつも通りローテンションな教授が喋り始めて、どんどん学生の頭がカクカク傾いていく。
その様子を傍観しながら、俺の目は完全にあの子を探していた。
あ、いた。みにちゃん。
周りがこんなだってんのに、あの子は今日もきらきらとした目でしっかりと背筋を伸ばしてメモを取っている。
教授の話に頷く度にサラッサラな黒髪が揺れて、あー触りてーとか思っちゃって、邪な気持ちは封印した。
友だちに適当に誘われてやった、オーキャンの手伝い。
日給出るらしいし、そいつの「年下のかんわいい女の子と喋れる」って言葉にちょっと乗り気にもなってたし。
そこでキラキラ輝いてるフレッシュな子たちに会ったけど、その比にならんくらい心臓がバクバクした子がいた。
それが、みにちゃん。
スタッフの腕章をして歩いてたら、めちゃめちゃ困り眉の子を見つけて。
資料と真剣ににらめっこして立ち止まってるから、迷子を確信して声を掛けた。
「大丈夫?どこ行きたいん?」
「……え!」
突然声かけたからびっくりした顔をしてたけど、その顔は安心したように少し緩んで。
救いの手を見つけて心の底から安心してそうな様子は、めちゃくちゃ可愛かった。
ってか下心なかったけど、普通に可愛い子じゃんね。
「あの、この企画なんですけど」
「あ、これね?ってめちゃくちゃ遠いじゃん。大丈夫?」
「大学ってすごい広いですね……大丈夫じゃなさそうです」
素直にへにゃりと笑って言うから、他愛もない話をしながら一緒に歩いた。
何話したか覚えてないけど、最後には真っすぐな瞳で「この大学に入りたいんです!」って言われちゃったら、応援するしかなかった。
そして1年後、ダンスサークルの新歓にその子はいた。
制服から私服に変わって大人っぽくなってたけど、花が咲いたみたいな笑い方はそのまんまだった。
「……あのときのお兄さん!」
「ん?」
目が合った瞬間、おっきい目がさらに見開かれて丸っこくなって。
どうやら俺のことをしっかり覚えてくれていたらしい。
そんなんかわいくて仕方ないわけで。
何に対しても真面目だし、素直だし、俺が守んなきゃな―なんて勝手に思ってた。
「お前、みにちゃんのことお気に入りだろ絶対」
周りに囃し立てられてもお前みたいな奴がそんな呼び方すんなよとか思ったけど、必死に胸の内を明かした。
「人生で初めて父性芽生えてんのよ俺」
「あ、そっち?」
当たり前。
だって、あの子には、もっと違うやつが似合う。
髪染めてピアス開けてて、授業は適当に受けて要領よく成績だけもらって、下心で手伝いしてた奴なんかじゃない。
たぶん黒髪でピアスしてなくて、真剣に授業受けて課題もやって、常に優しさと善意で動いてる奴。
一緒に過ごして、みにちゃんはとことん優しいことを知ってしまったから。
「嫌なとこあったら直すから教えてね?」って言われてもきっと嫌なんて言わない。
自分に合わせてもらうことに罪悪感を覚えるタイプで、人にネガティブなことを言わないと思う。
まあ、つまり。
「そもそも俺みたいなタイプが幸せにできる子じゃないっしょ?」
言い聞かせてる言葉を素直に出しちゃって、場が静まったのを察してすぐにテンションを変えた。
「ってことで、俺は寂しく万年フリーですよっと」
途端にガハハハ!と声が上がって、胸を撫でおろす反面、心はちゃんとズキズキ痛かった。
結局好きなんでしょ?と言われたら否定なんかできなかった。
だからこそ、俺じゃないと思ってた。
みにちゃんの涙を拭うのも、みにちゃんを抱きしめて守るのも、みにちゃんの隣で毎日笑うのも。
ラブソングが流れる度に、すぐみにちゃんのことを想像しちゃって、そのあとすぐにみにちゃんに向けて歌うのは俺じゃないんだって落ち込んで。
美味しいもの食べたり綺麗な場所行ったりする度にみにちゃんを連れてきたげたいなーとか思って、俺じゃないだろってため息ついて。
それなのにさ、みにちゃんは言ったんだよ。
「誰にどう思われても、洸人さんにさえ嘘だって思われても、私が好きなのは洸人さんです!」なんて、泣きそうな顔してさ。
雪と受験生を横目に、あの子は頑張ってるんだろうかとぼーっと思いを馳せた出会って1年目の冬。
雪を見て、はしゃぐ君を想像して、ため息をついてた出会って2年目の冬。
ほんとにはしゃいでる君が愛おしくてたまらなかった出会って3年目の冬。
味気なく見えてた真っ白な街が楽しいものに見えるのは、寒さで鼻を真っ赤にしながら繋いだ手を引いて歩くみにのおかげだった。
そして、就職してすぐ地方に住むことになって、今、いろんなことを思い出しながら雪を見てる4年目の冬。
まだ大学生のみにとは遠距離で、俺が疲れることも多くてなかなか会えないけど。
みにが不安になっててほしくないからって以上に、本当にみにのことばっかり考えてる。
意外と似てるとこ多いでしょ?って笑ってくれるみにと、たぶん好きすぎて無意識に似ちゃってる俺。
ご丁寧に俺の住んでるとこもスマホの天気予報アプリに追加してるみにから「もしかして今日初雪?でも積もらなさそうだね」って感じの連絡が来てたから、思ったより降ってる雪を踏みしめながら返信しようと指を動かす。
でも打ちかけて、まだ授業かなって思ったからもう少し後に送ることにする。
みには真面目だから授業中に連絡返さないだろうし、休み時間だったらリアルタイムで会話できんのかなーって期待しちゃって。
上級生になって疲れてるであろうみにが元気になるようにって小さく雪だるまを作り始めちゃったりなんかしちゃって、みにによって育ってしまった自分の乙女心が可笑しくなった。
「ほんとに好きなんだな、俺」
完成した雪だるまを写真に撮って、また歩き始めた。
イヤホンを挿して適当に流した曲はベタなラブソングで、これをみにと俺の歌っぽいなとか思えちゃう幸せが、どうしようもなく大切に思えた。
俺じゃだめだと思ってて、自分から気軽に声も掛けられなくて授業受けてる横顔を眺めることしかできなかったいつかの俺へ。
今は地方勤務が終わったらその子にプロポーズしようかな、きっとみには泣きながらでも頷いてくれんのかな、とか思いながらニヤついてるよ。
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
リクエスト「back numberの曲がモチーフのお話」
『ヒロイン』をモチーフにしてみました!
正反対の人に惹かれるけど、逆に釣り合ってるか心配になっちゃう…っていうのが似合うなあと思います(ひどい)でも最後はハッピーエンドにしちゃった。
ありがとうございました⸝⋆
「お、西おせーじゃん」
「ごめ、道混んでたわ」
軽く手を挙げてから、取っといてもらった席に荷物を置く。
人気が高いこの大教室での授業は、とっとと行かないと席が埋まってしまう。
余って前の方になるとか嫌だから、こうやって適当に仲いい奴とお互いに早めに着いたら席を確保しておく。
「ほんと人多すぎな?」
「まーね」
「まあ楽単だもんなー。みんな同じこと考えてんだろうな」
昼の授業なのに出席で成績めっちゃくれるし、レポートも甘いらしい。いわゆる楽単。
だから人多いんだろうけど、俺は結構内容も教授も気に入ってる。
……なんて、コイツに言っても伝わんねーだろうし、冷めるだろうし。
適当に相槌を打っていると、チャイムが鳴った。
いつも通りローテンションな教授が喋り始めて、どんどん学生の頭がカクカク傾いていく。
その様子を傍観しながら、俺の目は完全にあの子を探していた。
あ、いた。みにちゃん。
周りがこんなだってんのに、あの子は今日もきらきらとした目でしっかりと背筋を伸ばしてメモを取っている。
教授の話に頷く度にサラッサラな黒髪が揺れて、あー触りてーとか思っちゃって、邪な気持ちは封印した。
友だちに適当に誘われてやった、オーキャンの手伝い。
日給出るらしいし、そいつの「年下のかんわいい女の子と喋れる」って言葉にちょっと乗り気にもなってたし。
そこでキラキラ輝いてるフレッシュな子たちに会ったけど、その比にならんくらい心臓がバクバクした子がいた。
それが、みにちゃん。
スタッフの腕章をして歩いてたら、めちゃめちゃ困り眉の子を見つけて。
資料と真剣ににらめっこして立ち止まってるから、迷子を確信して声を掛けた。
「大丈夫?どこ行きたいん?」
「……え!」
突然声かけたからびっくりした顔をしてたけど、その顔は安心したように少し緩んで。
救いの手を見つけて心の底から安心してそうな様子は、めちゃくちゃ可愛かった。
ってか下心なかったけど、普通に可愛い子じゃんね。
「あの、この企画なんですけど」
「あ、これね?ってめちゃくちゃ遠いじゃん。大丈夫?」
「大学ってすごい広いですね……大丈夫じゃなさそうです」
素直にへにゃりと笑って言うから、他愛もない話をしながら一緒に歩いた。
何話したか覚えてないけど、最後には真っすぐな瞳で「この大学に入りたいんです!」って言われちゃったら、応援するしかなかった。
そして1年後、ダンスサークルの新歓にその子はいた。
制服から私服に変わって大人っぽくなってたけど、花が咲いたみたいな笑い方はそのまんまだった。
「……あのときのお兄さん!」
「ん?」
目が合った瞬間、おっきい目がさらに見開かれて丸っこくなって。
どうやら俺のことをしっかり覚えてくれていたらしい。
そんなんかわいくて仕方ないわけで。
何に対しても真面目だし、素直だし、俺が守んなきゃな―なんて勝手に思ってた。
「お前、みにちゃんのことお気に入りだろ絶対」
周りに囃し立てられてもお前みたいな奴がそんな呼び方すんなよとか思ったけど、必死に胸の内を明かした。
「人生で初めて父性芽生えてんのよ俺」
「あ、そっち?」
当たり前。
だって、あの子には、もっと違うやつが似合う。
髪染めてピアス開けてて、授業は適当に受けて要領よく成績だけもらって、下心で手伝いしてた奴なんかじゃない。
たぶん黒髪でピアスしてなくて、真剣に授業受けて課題もやって、常に優しさと善意で動いてる奴。
一緒に過ごして、みにちゃんはとことん優しいことを知ってしまったから。
「嫌なとこあったら直すから教えてね?」って言われてもきっと嫌なんて言わない。
自分に合わせてもらうことに罪悪感を覚えるタイプで、人にネガティブなことを言わないと思う。
まあ、つまり。
「そもそも俺みたいなタイプが幸せにできる子じゃないっしょ?」
言い聞かせてる言葉を素直に出しちゃって、場が静まったのを察してすぐにテンションを変えた。
「ってことで、俺は寂しく万年フリーですよっと」
途端にガハハハ!と声が上がって、胸を撫でおろす反面、心はちゃんとズキズキ痛かった。
結局好きなんでしょ?と言われたら否定なんかできなかった。
だからこそ、俺じゃないと思ってた。
みにちゃんの涙を拭うのも、みにちゃんを抱きしめて守るのも、みにちゃんの隣で毎日笑うのも。
ラブソングが流れる度に、すぐみにちゃんのことを想像しちゃって、そのあとすぐにみにちゃんに向けて歌うのは俺じゃないんだって落ち込んで。
美味しいもの食べたり綺麗な場所行ったりする度にみにちゃんを連れてきたげたいなーとか思って、俺じゃないだろってため息ついて。
それなのにさ、みにちゃんは言ったんだよ。
「誰にどう思われても、洸人さんにさえ嘘だって思われても、私が好きなのは洸人さんです!」なんて、泣きそうな顔してさ。
雪と受験生を横目に、あの子は頑張ってるんだろうかとぼーっと思いを馳せた出会って1年目の冬。
雪を見て、はしゃぐ君を想像して、ため息をついてた出会って2年目の冬。
ほんとにはしゃいでる君が愛おしくてたまらなかった出会って3年目の冬。
味気なく見えてた真っ白な街が楽しいものに見えるのは、寒さで鼻を真っ赤にしながら繋いだ手を引いて歩くみにのおかげだった。
そして、就職してすぐ地方に住むことになって、今、いろんなことを思い出しながら雪を見てる4年目の冬。
まだ大学生のみにとは遠距離で、俺が疲れることも多くてなかなか会えないけど。
みにが不安になっててほしくないからって以上に、本当にみにのことばっかり考えてる。
意外と似てるとこ多いでしょ?って笑ってくれるみにと、たぶん好きすぎて無意識に似ちゃってる俺。
ご丁寧に俺の住んでるとこもスマホの天気予報アプリに追加してるみにから「もしかして今日初雪?でも積もらなさそうだね」って感じの連絡が来てたから、思ったより降ってる雪を踏みしめながら返信しようと指を動かす。
でも打ちかけて、まだ授業かなって思ったからもう少し後に送ることにする。
みには真面目だから授業中に連絡返さないだろうし、休み時間だったらリアルタイムで会話できんのかなーって期待しちゃって。
上級生になって疲れてるであろうみにが元気になるようにって小さく雪だるまを作り始めちゃったりなんかしちゃって、みにによって育ってしまった自分の乙女心が可笑しくなった。
「ほんとに好きなんだな、俺」
完成した雪だるまを写真に撮って、また歩き始めた。
イヤホンを挿して適当に流した曲はベタなラブソングで、これをみにと俺の歌っぽいなとか思えちゃう幸せが、どうしようもなく大切に思えた。
俺じゃだめだと思ってて、自分から気軽に声も掛けられなくて授業受けてる横顔を眺めることしかできなかったいつかの俺へ。
今は地方勤務が終わったらその子にプロポーズしようかな、きっとみには泣きながらでも頷いてくれんのかな、とか思いながらニヤついてるよ。
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
リクエスト「back numberの曲がモチーフのお話」
『ヒロイン』をモチーフにしてみました!
正反対の人に惹かれるけど、逆に釣り合ってるか心配になっちゃう…っていうのが似合うなあと思います(ひどい)でも最後はハッピーエンドにしちゃった。
ありがとうございました⸝⋆
