【Takeru.G】
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「みに?」
「……え、あ、なんだっけ」
「大丈夫?体調悪い?」
お兄ちゃんに顔を覗き込まれたから、口角を上げて首を横に振る。
大好きなお兄ちゃん__威尊くんと会えたって言うのにぼーっとしてしまうのは、左手の薬指に鎮座する指輪のせい。
指輪っていうか、その現状っていうのかな。
「大丈夫。ありがとう」
「……ならええんやけど。今日は早く解散する?」
「やだ!……あ」
どうしよう、本音が出ちゃった。
大好きな家族には絶対思わせちゃダメって誓ってるのに。
結婚生活が辛いだなんて。
「……そっか?」
焦る私に対して、小さい子を慈しむように微笑んだ威尊くん。
ぽんぽんと頭を撫でて、カップを口元に運んだ。
「まだおしゃべりしよか」
「うん。あ、でもちょっとお手洗い行ってきても良い?」
「はいよ~」
威尊くんに断りを入れて、個室を出てお手洗いに向かう。
鏡を注意深く覗き込んで、顔にできた傷がしっかりと隠れているのかを確認。
一応コンシーラーを重ねて、そのときに手を出してきたあいつが頭を過ぎったからため息を1つ吐き出してしまった。
今時あるの?って感じだけど、うちは会社を営んでいて、その資金援助を受けるために私は親が決めた人と結婚した。
でも、家族はみんな優しいから、もちろん私の意思を優先する気でいた。婚約だって前々から決まって何かを制限されていたわけじゃなかった。なるべく素敵な人を選んできてくれたと思う。
私に彼氏ができたことはなかったから。結婚する前は本当に優しくて魅力的な人だったし、私も断らなかったから。だから、この人と結婚した。
……彼氏ができなかったのは、威尊くんが好きだったから、なんて事実から目を背けて。
断らなかったのは、こんな恋は受け入れられないとわかっているから、だなんて頭で全部わかってた。
とびっきり優しくて、いつだって大事にしてくれて、そんな大好きな“兄”。
結婚してから豹変した夫に心をすり減らし続ける中で、威尊くんから提案してくれた「月に1回会おうや」という習慣が唯一の心が落ち着く時間だった。
「隠したら、みんな幸せになれるんだよ」
赤みを帯びた跡を肌色に塗り終えて、小さく呟いた。
結婚がしんどいってことを隠したら、良くしてくれる会社のみなさんも、その上に立つ家族も、幸せになれる。
こんな厄介な恋心を隠してるから、威尊くん、ううん、お兄ちゃんは純粋に妹を可愛がれる。
あれ?
席に戻ろうと歩いていると、威尊くんが真剣な顔でスマホに何かを打ち込んでいるのが見えた。珍しい。
そのまま歩を進めて椅子に座ると、彼はこっちを向いてすぐに相好を崩した。
「おかえりぃ」
「うん、ただいま。なんかお仕事?」
「んーまあそんなとこかな」
少し濁して、スマホを胸ポケットにしまう。
そしてチラリと腕時計を見てから、小さく首を傾げる。
「なあみに、今日アイツ何時に帰ってくる?」
「定時だから家に着くのは多分7時で、夜ご飯準備しなきゃいけないから5時半には家に着かなきゃ」
「そっか」
え、待って、アイツ……?
基本的に温厚で人をぞんざいな扱いしない威尊くんの言葉とは思えなくって、引っかかる。
私の中で“アイツ”なんて呼びたくなるのは一人だけだからって、即答した自分も自分だけど。
そんな心の内もきっと表情に現れてるはずなのに、威尊くんはスルーして笑いかけた。
「みには今俺と喋ってる時間と、この後家に戻ってから、どっちが楽しいと思う?」
絶対に威尊くんと一緒にいる方に決まってる。
でも、また嘘を重ねなきゃいけないから。
「どっちも楽しいよ?」
「そう?」
ちょっと眉毛を下げて微笑んでから、ごめんなあって威尊くんは何に対してかわからない謝罪を口にした。
「みに、ちょっと聞いても良い?」
「ん?なに?」
「ほんまに今、幸せ?」
頷かなきゃ、うんって言いきらなきゃ。
大好きな人と結婚出来て、それが大事な人たちを幸せにすることにもつながって、なんて幸せ者なんだろうって。
ちゃんと、頭では考えているのに。
身を乗り出して、そっと私の頭に手を置いて、どんな小さな声でも逃さずに拾ってくれる姿勢でいてくれて。
絶対に私の気持ちを汲み取るんだって強さと、どこか切なさを帯びたような瞳に射抜かれて。
首は縦に動いてくれなかったし、むしろ目頭が熱くなってしまった。
「わああごめん、泣かせるつもりやなかったんやけど……でも、教えて?みにの気持ち」
そっと手で涙を拭って、それでも気持ちを尋ねるのは変わらなくて。
立ち上がって私の隣に移動しては、遠慮がちに背中を摩ってくれた。
「先に俺の気持ち教えんとフェアじゃないよなあ。当たり前だったわあ」
優しいトーンでちょっとお茶目にそう言ってから、威尊くんは1つ息を吸ってから言い放った。
「俺はね、今、大好きな子が苦しんでて、俺も苦しいししんどい、かなあ」
「……へ?」
「その子が生まれてからずーっと大事にしてきて、もうほんまに素直で優しくて可愛くって、いつの間にか好きの種類が変わってることに気づいて」
そっと私の髪を撫でる手が少しだけ震えていることに気づいた。
ずっと涙が止まらなくて、そのせいかもしれないけど、たぶんそう。
「でも立場的に、俺じゃ幸せにできんと思ってたから。この人やったらみにを大事にしてくれんねやろなと思って送り出したけど、なんか会う度にしんどそうで。きっと家族とかのこと考えて我慢してんやろなって気づいてたけど、ごめん、もう無理やねん」
体温が離れて、威尊くんが姿勢を正したのがわかる。
「どうやっても気づいてまうし、幸せにせなって思う。やから、俺と逃げませんか」
一番大好きな人が、こんなに自分のことを想ってくれていたなんて知らなかった。
だから、この瞬間は、感情に素直に動いてた。
結婚指輪を外して、ずっと想いが溢れたらだめだからって我慢してたのに、そっと腕を広げて威尊くんに引っ付いてみる。
泣いたまんまで全然ちゃんと喋れなかったけど、ぎゅっと力強く抱きしめ返してくれたから、安心してもっと泣いちゃうよ。
「今、しんどい……」
「うん、よく頑張ってるなあ」
威尊くんの手が触れたのは、さっき必死に隠した箇所だって気づく。
泣いてしかも擦ったから浮き出てきちゃったみたいだけど、威尊くんは痛々しい顔をしても私の努力を否定することはなかった。
「ずっと、威尊くんが好き」
「……ほんまはちょっと気づいてたけど自惚れかもって思ってたんよ。ありがとう」
もう1回ぎゅっと抱きしめた後、名残惜しそうに体を離してまた見つめ合った。
「へへ、父さんと母さんにはもう話してある。二人も、あとたぶんみにが想像してる会社の人たちも『みにの幸せが最優先』って思ってるよ」
「そうだったんだ……」
「それに、みにを連れ出せるように俺もがんばったから、もうお金は大丈夫。へへっ」
差し出された手を握って、連れ出される先は、わからない。
けど、この人と過ごせるならどこだっていいってわかってるから。
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
リクエスト「back numberの曲がモチーフのお話」
例に出していただいた『怪盗』をテーマにたけちーで書いてみました!
“君の笑顔奪うやつから君を奪うのさ”というフレーズに彼らしさを感じました⸝⋆
ありがとうございました!もう1曲あります🎶
「……え、あ、なんだっけ」
「大丈夫?体調悪い?」
お兄ちゃんに顔を覗き込まれたから、口角を上げて首を横に振る。
大好きなお兄ちゃん__威尊くんと会えたって言うのにぼーっとしてしまうのは、左手の薬指に鎮座する指輪のせい。
指輪っていうか、その現状っていうのかな。
「大丈夫。ありがとう」
「……ならええんやけど。今日は早く解散する?」
「やだ!……あ」
どうしよう、本音が出ちゃった。
大好きな家族には絶対思わせちゃダメって誓ってるのに。
結婚生活が辛いだなんて。
「……そっか?」
焦る私に対して、小さい子を慈しむように微笑んだ威尊くん。
ぽんぽんと頭を撫でて、カップを口元に運んだ。
「まだおしゃべりしよか」
「うん。あ、でもちょっとお手洗い行ってきても良い?」
「はいよ~」
威尊くんに断りを入れて、個室を出てお手洗いに向かう。
鏡を注意深く覗き込んで、顔にできた傷がしっかりと隠れているのかを確認。
一応コンシーラーを重ねて、そのときに手を出してきたあいつが頭を過ぎったからため息を1つ吐き出してしまった。
今時あるの?って感じだけど、うちは会社を営んでいて、その資金援助を受けるために私は親が決めた人と結婚した。
でも、家族はみんな優しいから、もちろん私の意思を優先する気でいた。婚約だって前々から決まって何かを制限されていたわけじゃなかった。なるべく素敵な人を選んできてくれたと思う。
私に彼氏ができたことはなかったから。結婚する前は本当に優しくて魅力的な人だったし、私も断らなかったから。だから、この人と結婚した。
……彼氏ができなかったのは、威尊くんが好きだったから、なんて事実から目を背けて。
断らなかったのは、こんな恋は受け入れられないとわかっているから、だなんて頭で全部わかってた。
とびっきり優しくて、いつだって大事にしてくれて、そんな大好きな“兄”。
結婚してから豹変した夫に心をすり減らし続ける中で、威尊くんから提案してくれた「月に1回会おうや」という習慣が唯一の心が落ち着く時間だった。
「隠したら、みんな幸せになれるんだよ」
赤みを帯びた跡を肌色に塗り終えて、小さく呟いた。
結婚がしんどいってことを隠したら、良くしてくれる会社のみなさんも、その上に立つ家族も、幸せになれる。
こんな厄介な恋心を隠してるから、威尊くん、ううん、お兄ちゃんは純粋に妹を可愛がれる。
あれ?
席に戻ろうと歩いていると、威尊くんが真剣な顔でスマホに何かを打ち込んでいるのが見えた。珍しい。
そのまま歩を進めて椅子に座ると、彼はこっちを向いてすぐに相好を崩した。
「おかえりぃ」
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「んーまあそんなとこかな」
少し濁して、スマホを胸ポケットにしまう。
そしてチラリと腕時計を見てから、小さく首を傾げる。
「なあみに、今日アイツ何時に帰ってくる?」
「定時だから家に着くのは多分7時で、夜ご飯準備しなきゃいけないから5時半には家に着かなきゃ」
「そっか」
え、待って、アイツ……?
基本的に温厚で人をぞんざいな扱いしない威尊くんの言葉とは思えなくって、引っかかる。
私の中で“アイツ”なんて呼びたくなるのは一人だけだからって、即答した自分も自分だけど。
そんな心の内もきっと表情に現れてるはずなのに、威尊くんはスルーして笑いかけた。
「みには今俺と喋ってる時間と、この後家に戻ってから、どっちが楽しいと思う?」
絶対に威尊くんと一緒にいる方に決まってる。
でも、また嘘を重ねなきゃいけないから。
「どっちも楽しいよ?」
「そう?」
ちょっと眉毛を下げて微笑んでから、ごめんなあって威尊くんは何に対してかわからない謝罪を口にした。
「みに、ちょっと聞いても良い?」
「ん?なに?」
「ほんまに今、幸せ?」
頷かなきゃ、うんって言いきらなきゃ。
大好きな人と結婚出来て、それが大事な人たちを幸せにすることにもつながって、なんて幸せ者なんだろうって。
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身を乗り出して、そっと私の頭に手を置いて、どんな小さな声でも逃さずに拾ってくれる姿勢でいてくれて。
絶対に私の気持ちを汲み取るんだって強さと、どこか切なさを帯びたような瞳に射抜かれて。
首は縦に動いてくれなかったし、むしろ目頭が熱くなってしまった。
「わああごめん、泣かせるつもりやなかったんやけど……でも、教えて?みにの気持ち」
そっと手で涙を拭って、それでも気持ちを尋ねるのは変わらなくて。
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そっと私の髪を撫でる手が少しだけ震えていることに気づいた。
ずっと涙が止まらなくて、そのせいかもしれないけど、たぶんそう。
「でも立場的に、俺じゃ幸せにできんと思ってたから。この人やったらみにを大事にしてくれんねやろなと思って送り出したけど、なんか会う度にしんどそうで。きっと家族とかのこと考えて我慢してんやろなって気づいてたけど、ごめん、もう無理やねん」
体温が離れて、威尊くんが姿勢を正したのがわかる。
「どうやっても気づいてまうし、幸せにせなって思う。やから、俺と逃げませんか」
一番大好きな人が、こんなに自分のことを想ってくれていたなんて知らなかった。
だから、この瞬間は、感情に素直に動いてた。
結婚指輪を外して、ずっと想いが溢れたらだめだからって我慢してたのに、そっと腕を広げて威尊くんに引っ付いてみる。
泣いたまんまで全然ちゃんと喋れなかったけど、ぎゅっと力強く抱きしめ返してくれたから、安心してもっと泣いちゃうよ。
「今、しんどい……」
「うん、よく頑張ってるなあ」
威尊くんの手が触れたのは、さっき必死に隠した箇所だって気づく。
泣いてしかも擦ったから浮き出てきちゃったみたいだけど、威尊くんは痛々しい顔をしても私の努力を否定することはなかった。
「ずっと、威尊くんが好き」
「……ほんまはちょっと気づいてたけど自惚れかもって思ってたんよ。ありがとう」
もう1回ぎゅっと抱きしめた後、名残惜しそうに体を離してまた見つめ合った。
「へへ、父さんと母さんにはもう話してある。二人も、あとたぶんみにが想像してる会社の人たちも『みにの幸せが最優先』って思ってるよ」
「そうだったんだ……」
「それに、みにを連れ出せるように俺もがんばったから、もうお金は大丈夫。へへっ」
差し出された手を握って、連れ出される先は、わからない。
けど、この人と過ごせるならどこだっていいってわかってるから。
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
リクエスト「back numberの曲がモチーフのお話」
例に出していただいた『怪盗』をテーマにたけちーで書いてみました!
“君の笑顔奪うやつから君を奪うのさ”というフレーズに彼らしさを感じました⸝⋆
ありがとうございました!もう1曲あります🎶
