【Fengfan.X】
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「やっぱり私が出勤増やすか?」
下書きが大量に残るシフト表と対峙する。
色々な事情で常に人手は足りず、バイトさんもみんな良い子だけど全員仕事が凄くできるってわけでもない。
まあ、普通に忙しすぎてぶっ倒れそう。
「あの、立花さん」
「許くん。どうしたの?」
後ろから現れたのは、たくさんシフトに入ってくれるし仕事もできるバイトさん。
それでいて、中国から留学中という努力家な一面もあり、陰ながら尊敬している子だ。
「僕はシフトリーダーになれますか?」
「え?」
いつも穏やかな空気を纏っている許くんが、意志のこもった眼差しを送っている。
その事実に確かに心が動いたけど、悟られないように平然を装った。
「許くんのことは本当に信頼してるんだけど、うち会社がバイトリーダーの類は設けないって意向だから難しいのよね」
これは本当。
だから、心意気を無駄にするのは申し訳ない。
「なら、実質っていうのは?」
「へ?」
基本的に人を困らせないイメージの許くんから予想外の言葉が飛び出した。
「僕はただ、立花さんの負担を減らしたいだけです。肩書きとか給料は要りません」
「……そう」
どうしよう。
私は“バイトみんなの憧れの立花さん”なのに。
出てくるのは意味のない相槌だけで、代わりに目が潤んでいく。
見返りを求めずに、ただ手を差し伸べようとする気持ち。
それは眩しくて、でもやっぱり嬉しかった。
「絶対に他の人には言わないので、僕に手伝わせてくれませんか?」
おずおずとティッシュを差し出しながら言われて、甘えるべきなんだと悟る。
でもその悟りは諦めなんかじゃなくて、どことなく心地良い。
「本当に、いいの?」
「はい」
力強く頷く彼は、きっと世界中の誰よりも頼り甲斐があった。
「許くんに何のメリットもないのに?」
「立花さんの忙しさが減るなら何でも良いです」
「ダサい姿見せちゃうかも」
「頑張ってる人はダサくなんかないです」
それでもやっぱり、素直に甘えるのは無理だった。
物凄く面倒くさい質問をしても、顔色一つ変えずに返事をする許くんは本当に優しい。
「なら、申し訳ないけどお願いします」
「やりたかったことなので謝らないでください。頑張ります」
頭を下げると、許くんの固く握られた拳が見えた。
そのくらい緊張したのだと気付いて、なんだか胸が締め付けられた。
それから、許くんとふたりで過ごす時間が増えた。
許くんは前よりも長時間働いてくれる。
仕事を終えた後、一緒にご飯を食べながらシフトを考える。
連絡先を交換して、たまに電話もする。
お互いのことについても知れて、優しさに触れて。
気づけば、ひとりのときも許くんのことを考えていた。
買い物に出かけて茎わかめを見かけると、許くんが好きって言ってたなと思い出して手に取る。
中国での悲しいニュースを見かけると、どの地区かまで確認して許くんのご家族に近いかを考える。
ふと目的もなく音楽が聴きたくなると、許くんが口ずさんでいた歌を聴く。
仕事の忙しさで視界から外していたものが見えるようになって、毎日が少しずつ明るく見えた。
「許くんのお陰だよ、ありがとう」
バイト終わりのご飯で、仕事についての話が一段落した後。
改めて感謝を伝えると、ご飯を頬張っていた許くんが驚いたように顔を上げる。
意外と一口が大きいことに気付いたのは最近だし、そんなところが可愛いと思う。
「こちらこそ、任せていただいてありがとうございます」
「ううん、勇気を出してくれたのは許くんだし、本当にありがたいから」
実際、本当に助かっているのだ。
仕事をテキパキとこなすだけじゃなくて、シフトも増やしてくれた。
中国語と日本語だけじゃなくて英語も話せるから、何度も助けられた。
そう伝えると、許くんはお冷をすごい勢いで飲んでいた。
「どうしたの!?」
「褒められると舞い上がっちゃうので、照れ隠しです」
仕事ができて頭も良くて努力家で真面目。
でもこういうお茶目というか不思議なかわいいところがある。
その愛おしさがこみ上げてきて、笑うしかなかった。
だってこんな気持ち伝えちゃったら、そんなの。
「あの、みにさん」
大きくなった恋心を封印しようと決めた瞬間、初めて名前で呼ばれてそんな決意が砕け散る。
「なあに?」
そんな動揺がバレないように気をつけながら顔を上げると、あの時と同じような強い目をしていた。
ううん、きっとあの時よりもっと意思の強い目だ。
「一人の女性として好きです」
息を呑んだ。
また素直に甘えられない私を見透かしてか、すぐに許くんが付け足す。
「みにさんのお仕事に向き合う姿勢を尊敬しています。でも、みにさんが大変なときには守りたいと思います」
ふわりと微笑んだ許くんから、目が離せなかった。
そうして、付き合うことになった私たち。
それでも職場では絶対に内緒にしている。
だから、私たちを繋ぐ秘密が2つになった。
「みにさんって本当にカッコイイですよね」
ミスを補った直後、バイトの女の子にしみじみと言われて、曖昧に頷く。
「そうかな?」
「はい!それに最近は前よりも雰囲気が柔らかく見えます」
思い当たる節しかなくて、横目で豊凡を見ると、口角が上がっていた。
「褒めても何も出ないんだから、頑張ってくださーい」
その姿を見て私も口角が上がりそうになるのを堪え、集中するよう彼女に促した。
「立花さん、これ」
「どうしたの?許くん」
急に呼ばれて、平然を装いながら近づく。
渡されたメモには、“今日おれのいえ”と書いてあった。
顔に出ないように唇をぎゅっと結んで頷くと、ポーカーフェイスを保ったままの彼氏はメモをすぐに仕舞っていた。
仕事を終えて、メモ通りに彼の家に向かう。
今日は豊凡は私より早上がりだったからかな。
足取り軽く向かい、インターホンを押すとすぐにドアが開いた。
「お疲れ様」
「うん、豊凡もお疲れ様」
ドアを締めて言葉を交わした直後、エプロンをしたままの豊凡に抱きしめられる。
「無理してない?」
「してないよ。豊凡がいてくれるから」
「なんか、そんな気がした」
日々削られていくメンタルを心配してくれているのかな。
イライラを表に出さないってだけでも気を遣わなきゃいけない日常。
それでも明日も頑張ろうと思えるのは、間違いなく彼氏のおかげだろう。
「すぐ抱え込んじゃうから……それに気付くのが俺の役目」
「私もだよ。お互い様でしょ」
「そうだね」
微笑んだ豊凡は、するりと私の髪を撫でた。
「レポート頑張ったから俺も甘える」
「夜ふかしした?そんな感じする」
「みにには何でもバレちゃうなあ」
「無理しないでね」
「みにもね」
私のヒーローで、栄養で、でも甘やかしたい人。
この幸せがずっと続きますようにと願って、彼の顔にうっすらと浮かぶクマにキスを落とした。
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
リクエスト「スーパーアルバイターと隠れて付き合う高嶺の花の社員さん」
バイトとして1番社員さんにストレスを与えなさそうなイメージなので、初登場のおフェンにしました。リクエストありがとうございます!
皆さま、本当に本当にお疲れ様です。良いこといっぱいありますように⸝⋆
下書きが大量に残るシフト表と対峙する。
色々な事情で常に人手は足りず、バイトさんもみんな良い子だけど全員仕事が凄くできるってわけでもない。
まあ、普通に忙しすぎてぶっ倒れそう。
「あの、立花さん」
「許くん。どうしたの?」
後ろから現れたのは、たくさんシフトに入ってくれるし仕事もできるバイトさん。
それでいて、中国から留学中という努力家な一面もあり、陰ながら尊敬している子だ。
「僕はシフトリーダーになれますか?」
「え?」
いつも穏やかな空気を纏っている許くんが、意志のこもった眼差しを送っている。
その事実に確かに心が動いたけど、悟られないように平然を装った。
「許くんのことは本当に信頼してるんだけど、うち会社がバイトリーダーの類は設けないって意向だから難しいのよね」
これは本当。
だから、心意気を無駄にするのは申し訳ない。
「なら、実質っていうのは?」
「へ?」
基本的に人を困らせないイメージの許くんから予想外の言葉が飛び出した。
「僕はただ、立花さんの負担を減らしたいだけです。肩書きとか給料は要りません」
「……そう」
どうしよう。
私は“バイトみんなの憧れの立花さん”なのに。
出てくるのは意味のない相槌だけで、代わりに目が潤んでいく。
見返りを求めずに、ただ手を差し伸べようとする気持ち。
それは眩しくて、でもやっぱり嬉しかった。
「絶対に他の人には言わないので、僕に手伝わせてくれませんか?」
おずおずとティッシュを差し出しながら言われて、甘えるべきなんだと悟る。
でもその悟りは諦めなんかじゃなくて、どことなく心地良い。
「本当に、いいの?」
「はい」
力強く頷く彼は、きっと世界中の誰よりも頼り甲斐があった。
「許くんに何のメリットもないのに?」
「立花さんの忙しさが減るなら何でも良いです」
「ダサい姿見せちゃうかも」
「頑張ってる人はダサくなんかないです」
それでもやっぱり、素直に甘えるのは無理だった。
物凄く面倒くさい質問をしても、顔色一つ変えずに返事をする許くんは本当に優しい。
「なら、申し訳ないけどお願いします」
「やりたかったことなので謝らないでください。頑張ります」
頭を下げると、許くんの固く握られた拳が見えた。
そのくらい緊張したのだと気付いて、なんだか胸が締め付けられた。
それから、許くんとふたりで過ごす時間が増えた。
許くんは前よりも長時間働いてくれる。
仕事を終えた後、一緒にご飯を食べながらシフトを考える。
連絡先を交換して、たまに電話もする。
お互いのことについても知れて、優しさに触れて。
気づけば、ひとりのときも許くんのことを考えていた。
買い物に出かけて茎わかめを見かけると、許くんが好きって言ってたなと思い出して手に取る。
中国での悲しいニュースを見かけると、どの地区かまで確認して許くんのご家族に近いかを考える。
ふと目的もなく音楽が聴きたくなると、許くんが口ずさんでいた歌を聴く。
仕事の忙しさで視界から外していたものが見えるようになって、毎日が少しずつ明るく見えた。
「許くんのお陰だよ、ありがとう」
バイト終わりのご飯で、仕事についての話が一段落した後。
改めて感謝を伝えると、ご飯を頬張っていた許くんが驚いたように顔を上げる。
意外と一口が大きいことに気付いたのは最近だし、そんなところが可愛いと思う。
「こちらこそ、任せていただいてありがとうございます」
「ううん、勇気を出してくれたのは許くんだし、本当にありがたいから」
実際、本当に助かっているのだ。
仕事をテキパキとこなすだけじゃなくて、シフトも増やしてくれた。
中国語と日本語だけじゃなくて英語も話せるから、何度も助けられた。
そう伝えると、許くんはお冷をすごい勢いで飲んでいた。
「どうしたの!?」
「褒められると舞い上がっちゃうので、照れ隠しです」
仕事ができて頭も良くて努力家で真面目。
でもこういうお茶目というか不思議なかわいいところがある。
その愛おしさがこみ上げてきて、笑うしかなかった。
だってこんな気持ち伝えちゃったら、そんなの。
「あの、みにさん」
大きくなった恋心を封印しようと決めた瞬間、初めて名前で呼ばれてそんな決意が砕け散る。
「なあに?」
そんな動揺がバレないように気をつけながら顔を上げると、あの時と同じような強い目をしていた。
ううん、きっとあの時よりもっと意思の強い目だ。
「一人の女性として好きです」
息を呑んだ。
また素直に甘えられない私を見透かしてか、すぐに許くんが付け足す。
「みにさんのお仕事に向き合う姿勢を尊敬しています。でも、みにさんが大変なときには守りたいと思います」
ふわりと微笑んだ許くんから、目が離せなかった。
そうして、付き合うことになった私たち。
それでも職場では絶対に内緒にしている。
だから、私たちを繋ぐ秘密が2つになった。
「みにさんって本当にカッコイイですよね」
ミスを補った直後、バイトの女の子にしみじみと言われて、曖昧に頷く。
「そうかな?」
「はい!それに最近は前よりも雰囲気が柔らかく見えます」
思い当たる節しかなくて、横目で豊凡を見ると、口角が上がっていた。
「褒めても何も出ないんだから、頑張ってくださーい」
その姿を見て私も口角が上がりそうになるのを堪え、集中するよう彼女に促した。
「立花さん、これ」
「どうしたの?許くん」
急に呼ばれて、平然を装いながら近づく。
渡されたメモには、“今日おれのいえ”と書いてあった。
顔に出ないように唇をぎゅっと結んで頷くと、ポーカーフェイスを保ったままの彼氏はメモをすぐに仕舞っていた。
仕事を終えて、メモ通りに彼の家に向かう。
今日は豊凡は私より早上がりだったからかな。
足取り軽く向かい、インターホンを押すとすぐにドアが開いた。
「お疲れ様」
「うん、豊凡もお疲れ様」
ドアを締めて言葉を交わした直後、エプロンをしたままの豊凡に抱きしめられる。
「無理してない?」
「してないよ。豊凡がいてくれるから」
「なんか、そんな気がした」
日々削られていくメンタルを心配してくれているのかな。
イライラを表に出さないってだけでも気を遣わなきゃいけない日常。
それでも明日も頑張ろうと思えるのは、間違いなく彼氏のおかげだろう。
「すぐ抱え込んじゃうから……それに気付くのが俺の役目」
「私もだよ。お互い様でしょ」
「そうだね」
微笑んだ豊凡は、するりと私の髪を撫でた。
「レポート頑張ったから俺も甘える」
「夜ふかしした?そんな感じする」
「みにには何でもバレちゃうなあ」
「無理しないでね」
「みにもね」
私のヒーローで、栄養で、でも甘やかしたい人。
この幸せがずっと続きますようにと願って、彼の顔にうっすらと浮かぶクマにキスを落とした。
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
リクエスト「スーパーアルバイターと隠れて付き合う高嶺の花の社員さん」
バイトとして1番社員さんにストレスを与えなさそうなイメージなので、初登場のおフェンにしました。リクエストありがとうございます!
皆さま、本当に本当にお疲れ様です。良いこといっぱいありますように⸝⋆
