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「バレンタインを機に結ばれる」
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
真っ赤な背景に板チョコが映えるCM。
ハートマークが飛び交うデパートの広告。
なんとなく町中で感じる、少し甘い香り。
この浮足立った雰囲気に絆されてみても、いいのかな。
バレンタインの魔法に背中を押してもらえたら、私の恋は一歩前進してくれるかもしれない。
今日こそ、告白するんだ。大好きな人に。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver. 𝑱𝒊𝒏
友達が多い彼を、今日という日に呼び出すのは勇気が要る。
だけど、彼は「俺チョコ苦手なんだよね。ごめんね?」と多くの贈り物を断っていて、地に落ちた自信が、少し回復した。
私は、ちゃんと迅のこと知ってる。
本命だと告げる勇気がなくても、中身で断られることはない。
その優越感を胸に一歩踏み出せば、その間に彼がタタッと走ってきた。
「みにやっほ〜」
「や、やっほ〜」
軽く挨拶をしたあと、迅の視線は私の手元に移る。
「ん?何持ってんのー?」
「ふふ、プレゼント」
差し出したのは、焼肉食べ放題の食事券。
「えー!マジで!めっちゃ嬉しい!」
「でしょ」
紙を掲げて飛び跳ねた後、迅はこちらに向き直った。
「俺とこれでデートしてくれるの?」
「……うん、行こう」
デート。
彼の方からその言葉を使ってくれると思わなかったけど、頷くしかなかった。
「よっしゃ。じゃあその計画立てながら一緒に帰ろ」
今日想いを告げることはできなくても、こんな会話をできただけで、満足だった。
(え、勢いでデートとか誘っちゃったけどいいのかな!?いや、女の子に言わせるとかダメだし、次のデートで絶対言おう……頑張れ俺)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑻𝒂𝒌𝒆𝒓𝒖
彼は優しいから、女の子の勇気を無下にはしない、というのも予想はついていた、けど。
「え、俺でいいん?」
そんな彼の声を聞きたくなくて、机に伏せて無理矢理に目を閉じてみたら、気づいたら意識が行方不明になっていた。
……頭ぽんぽん触られてる気がする。
「みにちゃん、帰らんの?」
そんな言葉が聞こえた気がして、飛び起きる。
夢かと思ったけど、隣の席から私に触れていたのは、威尊くんだった。
「え!?」
「もうすぐ下校時刻やで」
立ち上がった彼につられて立ち上がる。
あれ?彼の荷物にチョコがない。
そんな疑問は、彼の言葉によってすぐ消えた。
「今日さー、『後藤くんが代わりに渡してくれん?』って聞きすぎて変な気分やわ」
そういうことだったんだ。
安心したせいか、後先考えずに鞄の上の方に置きっぱなしだったチョコを手に取る。
「じゃあ、これ」
「え?自分で渡したほうがええんやない?」
きっとこの言葉も多く発したんだろう。
お疲れ顔の彼に、すぐに言葉を上書きした。
「今自分で渡してる」
(寝顔もご褒美やったんに、自分でって、え、そういうことやんな!?今!今言うべきやつやこれ!)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝒀𝒖𝒅𝒂𝒊
「なあみに、今日なんの日か言ってみてやあ」
「煮干しの日」
「え、そうなん!?」
「語呂で決まったらしい」
「へえ〜……じゃないねん!」
雄大の求めていることはわかりやすい。チョコが食べたいんやろ。
「もっとさあ、メジャーなのがあるやんか」
「雄大誕生日ちゃうやん」
「そうやで!?てか俺の誕生日覚えてんの?」
「秋だった気がする」
「ザックリしすぎやな、それ」
そろそろ、ちゃんと渡すか。
肩を落としてる雄大に、準備してきたものを差し出す。
「はい」
「……えぇ!?覚えてたん!?」
キャハハ!と満面の笑みで贈り物を受け取ってくれた。
……でもこの喜びは、きっと誰からもらってもこうやから。
「色んな子にくれって言うんやろ、これから。はよ行ってき」
勝手に当たり散らして去ろうとすると、ぐっと手首を掴まれて引き止められる。
「俺が催促してんの、みにだけやで」
(うわあ勢いでやってもうた。絶対みにびびってるよな……いやでも、引き下がれんよなもう。行くしかないぞ佐野雄大!言え!)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑯𝒊𝒓𝒐𝒎𝒖
……髙塚くん、何聴いてんのかな。
電車の隅に座ってる髙塚くんはイヤホンを耳にしていて、少し気になってしまう。
好きな人のことなら何でも気になるのも、バレンタインを理由に何かできそうな気がしてくるのも、女の子には普通のこと。だよね?
端の席に向かって歩いたら、イヤホン越しに気配を感じたらしい彼が驚いたように顔を上げた。
ここで目が合うのは想像してなかった。どうしよう!?
言おうとしたことが全部吹っ飛んで、でも綺麗な目に吸い込まれるような気がして目は逸らせなくて。
数秒間見つめ合っちゃって、電車が揺れたことによって我に返った。
「あ、ごめん。えっと、何聴いてるのかなって思って」
緊張のせいでカタコトになったけど、優しく最後まで聞いてくれた。
「……聴く?」
差し出された片耳分のイヤホンを恐る恐る受け取って耳に当てる。
「あんまりバレンタイン感じてないから、歌だけでも感じようかなと思って」
「じゃあ、これ!」
照れ笑いしながら言う彼を見て、突き出すようにチョコを差し出した。
(何チョコ!?貰えると思ってなかったからどうしていいかわかんないけど嬉しい、やっぱ好きだな……)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑻𝒂𝒌𝒖𝒎𝒊
「みに、なんでそんな機嫌悪いん?」
「別に悪くない」
困り眉で腕をつついてくるから、ニヤけそうになる。だけど視界に入ったものがムカつくから真顔を貫く。
その紙袋に色んな箱や袋が入ってるからだよ!なんて素直に言えるわけあるか。
「……カラオケ寄るか?」
ここで追及してこないで、機嫌が良くなるようにって考えてくれちゃうとこ。
その愛おしさ半分、気を遣わせた申し訳なさ半分で口角を上げる。
「大丈夫、ありがと」
「ならええけど……」
納得がいってなさそうな様子で、匠海はポリポリと頭を掻いた。
「あ、せや。チョコ食う?」
「は!?」
なんでそうなる。
「もっと大事にしなよ」
「どうせ全部友チョコやん。別にええやろ」
鈍感すぎない?
でもなんか、逆に軽い気持ちで渡せるのかも。
「……じゃあチョコ増やしてやる」
「うわ、めっちゃ嬉しい!」
感謝の言葉を述べ、匠海は鞄に仕舞った。
「1番大事なチョコは丁寧に持ち歩くべきやろ」
(今年も貰えて良かった〜!こんくらいアピールしても許されるよな、俺の気持ち)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑲𝒚𝒐𝒔𝒖𝒌𝒆
「みにじゃん。味見しに行っていい?」
「やだ」
チョコ作りの買い出しにスーパーに行ったら幼馴染と遭遇。
甘党なコイツは、調子良く盗み食おうとしてくるから丁重にお断りする。
「失敗作食ってやろうと思ったのに」
「私、失敗しないので」
「ドラマかよ」
笑ってカゴの中身を覗き込んでくる。
どうしよう。友達にあげる用の袋とは別に箱も入れてるから、本命にあげようとしてる人のカゴすぎる。
「ふーん」
気づかなかった?
京介って割と鋭いからそんなはずないと思うけど。
「誰にあげんの、それ」
「え?」
「……今のやっぱなしで。じゃ」
ひらひらと手を振って、京介ママにパシられたであろうおつかいに向かう背中が、寂しそうに見えた。
だから、フライングして言っちゃったんだよ。
「京介!」
「なに?」
「って言ったらどうする?」
振り返った顔は驚きに満ち溢れていて、どこか照れが浮かんでいた。
「……勘違いする、けど」
(え、これ本当に俺がイタイ奴とかじゃなくて?本当に?なんでみにも否定しないんだよ……ガチ?)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑹𝒊𝒉𝒊𝒕𝒐
「なんでチョコなんだろ、バレンタインって」
「そこ考え始めんの?」
みにらしいけど、と笑ってくれる辺りが良い奴。
こっちはチョコ渡す口実が欲しくて、なんか理由を探してるだけなのに。
「現実的に、チョコレート会社の広告としか思えないんだもん」
でも、理人とこうやってくだらない会話をしてる時間は楽しくて好きだから、普通に見解を述べてみる。
「だろうね。でもさ、チョコってちょうどいいんやない?」
「ちょうどいい?」
「甘いのもビターなのもあるからそれぞれの恋の味、なんつって」
何言わせてんだよーと言いながら殴るフリをしてるけど、ちょん、って当たるだけだから全く痛くない。
そういうとこでまた好きが増してるなんて、理人は全く気づいてないんだろうな。
「じゃあ、名解答の理人くんに景品あげるよ」
「よっしゃー」
「ん。池﨑説、合ってるかもね」
結構スイートめなの渡してるけど、こういう形でしか伝えられないからいいよね。
(バレンタイン興味ないんかと思ってたし、実際今日みにが誰かに渡してんの見なかったけどな……これ言うのキモいから一人で浸ってよ。特別扱いってだけで飯食えるわ俺)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑺𝒉𝒐𝒈𝒐
やっぱり、今日は来ないかな。
図書室の隅で会う男の子。
お互い人見知りだけど、最近話すようになった。
確かな約束は交わさず、週に数回会えたら少しだけ喋る。
気づいたら、この関係も彼のことも好きになってた。
とはいえ、読書する横顔とか組まれた脚の長さとか容姿が整っていることには気づいてるから、優しいところも含めてモテることは安易に想像できる。
だからバレンタインの放課後が暇なはずがないのもわかってた。
そのくせに、好きな詩集の告白みたいなページだけ押し付けようとしてるのは私なんだけど。
ミステリーを読んで寂しさを抑え込んでいると、扉が開く。
「良かった。みにちゃん、いた」
微笑んで駆け寄ってくる姿に、胸がキュンと鳴いた。
「たじくんに借りて欲しい本あったから」
「本当?」
息を吐きながら腰掛ける姿に、大人気だったんだろうなと察する。
それでも会えたことに今だけ自惚れさせてもらって、付箋を貼った詩集を差し出した。
(やっぱりみにちゃんの隣がいいって思ってるのバレてる?……恋愛の詩集?都合よく解釈したくなるけど、いいのかな)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑭𝒆𝒏𝒈𝒇𝒂𝒏
「わ、どうしたの」
「しーっ」
放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると、ドアの前で息を潜めている想い人を発見。
疑問を呈せば、人差し指を立てて制止される。
内緒話をするように近づいてきて、私はその距離感の近さにドキドキしてるのに、当の本人は言葉を続けた。
「告白。してるみたいだから……」
「ああ!ぶち壊さなくて良かった、ありがとう」
感謝を伝えたら、我に返ったらしいフェンフェンは離れていった。
「無理に止めちゃってごめんね?」
「いやいや、ありがたい」
なんならラッキーだったとは言えない。
「あと、みにちゃんの忘れ物ってこれ?」
フェンフェンに差し出されたのは、紛れもなく私のスマホ。
「え、ありがとう!もしかして待っててくれたの?」
「あー、まあ、そうかも」
どこか歯切れの悪い言葉が引っかかりながら、今度こそ頑張れるように心の中で気合を入れる。
「じゃあ、お礼にこれ!またね!」
逃げるように去っちゃったけど、結局渡せたからいいか。
(わ、やった好きな子から貰えちゃった……みにちゃんのって気づいたから待ってただけなんだけどね)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑴𝒂𝒔𝒂𝒚𝒂
学校で幼馴染が人気だったから、さっさと家に帰ってきた。なのに、家まで押しかけてきて。
「みにからはチョコないのー?」
「ない」
「欲しいな〜」
「たくさん貰ってるでしょ」
わざと目を逸らしながら答えてるのに、柾哉は許してくれない。
両手で私の顔を挟み、強制的に目と目が合わせてきた。
「ね、ないの?」
「……ある、けど」
「けど?」
「別にいらないかなって」
「いる」
「いやほんと気遣わなくていい」
「いる」
何を言っても、いるの一点張りで譲ってくれない。
そんなに言うなら、と1番丁寧に包んだチョコを渡した。
さっきまでの威圧感は消え、柾哉はふにゃふにゃ笑っている。
「毎年みにのが1番嬉しいもん」
「……好み分かってるからね」
「そうかも!あと毎年違うのもワクワクする」
毎年渡す意味をググっては、気持ちを込めてることなんて知らないんだろうなあ。
(よかった、今年も俺の分用意されてた……俺はずっと本命ってことにしてるけど、みには気づいてないんだろうなあ)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑯𝒊𝒓𝒐𝒕𝒐
「ちゃんと部活来て偉いじゃん」
「むしろこんな減ると思ってなかったわ」
「ね。みんな青春してんだね」
バレンタインでも部活に来ている私たち。
でも他に部員はいなくて、放課後の体育館には寂しい空気が漂っていた。
「てか洸人こそなんでここ居んの?」
「お前イジってるだろ」
いや、これ本音なんだけどな。
下駄箱開けたらチョコがドサドサみたいなタイプのはずなのに、荷物の量いつもと同じなんだもん。絶対おかしい。
「どうする?自主練?」
追及するのは諦めて、今日の予定を聞くことにした。
……これは建前で、洸人が背を向けるタイミングを伺ってるんだけど。
想定通り洸人は歩き回ってるから、その隙にチョコを彼の鞄の傍に置いておいた。
「んー、どうせなら俺らもどっか行く?」
「え!?」
思ってもみなかった誘いに、素っ頓狂な声が出る。
「嫌なん」
「嫌じゃないけど」
むしろ、嬉しい。
その呟きは届いたかわからないけど、口角を上げた洸人は荷物の近くに戻ってきた。
「え?何これ」
「さあ?洸人のじゃない?」
(今日一か八か全員のチョコ断っといて良かったな、本命からこんな渡し方されると思ってなかったけど……え待ってこれデート?)
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
真っ赤な背景に板チョコが映えるCM。
ハートマークが飛び交うデパートの広告。
なんとなく町中で感じる、少し甘い香り。
この浮足立った雰囲気に絆されてみても、いいのかな。
バレンタインの魔法に背中を押してもらえたら、私の恋は一歩前進してくれるかもしれない。
今日こそ、告白するんだ。大好きな人に。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver. 𝑱𝒊𝒏
友達が多い彼を、今日という日に呼び出すのは勇気が要る。
だけど、彼は「俺チョコ苦手なんだよね。ごめんね?」と多くの贈り物を断っていて、地に落ちた自信が、少し回復した。
私は、ちゃんと迅のこと知ってる。
本命だと告げる勇気がなくても、中身で断られることはない。
その優越感を胸に一歩踏み出せば、その間に彼がタタッと走ってきた。
「みにやっほ〜」
「や、やっほ〜」
軽く挨拶をしたあと、迅の視線は私の手元に移る。
「ん?何持ってんのー?」
「ふふ、プレゼント」
差し出したのは、焼肉食べ放題の食事券。
「えー!マジで!めっちゃ嬉しい!」
「でしょ」
紙を掲げて飛び跳ねた後、迅はこちらに向き直った。
「俺とこれでデートしてくれるの?」
「……うん、行こう」
デート。
彼の方からその言葉を使ってくれると思わなかったけど、頷くしかなかった。
「よっしゃ。じゃあその計画立てながら一緒に帰ろ」
今日想いを告げることはできなくても、こんな会話をできただけで、満足だった。
(え、勢いでデートとか誘っちゃったけどいいのかな!?いや、女の子に言わせるとかダメだし、次のデートで絶対言おう……頑張れ俺)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑻𝒂𝒌𝒆𝒓𝒖
彼は優しいから、女の子の勇気を無下にはしない、というのも予想はついていた、けど。
「え、俺でいいん?」
そんな彼の声を聞きたくなくて、机に伏せて無理矢理に目を閉じてみたら、気づいたら意識が行方不明になっていた。
……頭ぽんぽん触られてる気がする。
「みにちゃん、帰らんの?」
そんな言葉が聞こえた気がして、飛び起きる。
夢かと思ったけど、隣の席から私に触れていたのは、威尊くんだった。
「え!?」
「もうすぐ下校時刻やで」
立ち上がった彼につられて立ち上がる。
あれ?彼の荷物にチョコがない。
そんな疑問は、彼の言葉によってすぐ消えた。
「今日さー、『後藤くんが代わりに渡してくれん?』って聞きすぎて変な気分やわ」
そういうことだったんだ。
安心したせいか、後先考えずに鞄の上の方に置きっぱなしだったチョコを手に取る。
「じゃあ、これ」
「え?自分で渡したほうがええんやない?」
きっとこの言葉も多く発したんだろう。
お疲れ顔の彼に、すぐに言葉を上書きした。
「今自分で渡してる」
(寝顔もご褒美やったんに、自分でって、え、そういうことやんな!?今!今言うべきやつやこれ!)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝒀𝒖𝒅𝒂𝒊
「なあみに、今日なんの日か言ってみてやあ」
「煮干しの日」
「え、そうなん!?」
「語呂で決まったらしい」
「へえ〜……じゃないねん!」
雄大の求めていることはわかりやすい。チョコが食べたいんやろ。
「もっとさあ、メジャーなのがあるやんか」
「雄大誕生日ちゃうやん」
「そうやで!?てか俺の誕生日覚えてんの?」
「秋だった気がする」
「ザックリしすぎやな、それ」
そろそろ、ちゃんと渡すか。
肩を落としてる雄大に、準備してきたものを差し出す。
「はい」
「……えぇ!?覚えてたん!?」
キャハハ!と満面の笑みで贈り物を受け取ってくれた。
……でもこの喜びは、きっと誰からもらってもこうやから。
「色んな子にくれって言うんやろ、これから。はよ行ってき」
勝手に当たり散らして去ろうとすると、ぐっと手首を掴まれて引き止められる。
「俺が催促してんの、みにだけやで」
(うわあ勢いでやってもうた。絶対みにびびってるよな……いやでも、引き下がれんよなもう。行くしかないぞ佐野雄大!言え!)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑯𝒊𝒓𝒐𝒎𝒖
……髙塚くん、何聴いてんのかな。
電車の隅に座ってる髙塚くんはイヤホンを耳にしていて、少し気になってしまう。
好きな人のことなら何でも気になるのも、バレンタインを理由に何かできそうな気がしてくるのも、女の子には普通のこと。だよね?
端の席に向かって歩いたら、イヤホン越しに気配を感じたらしい彼が驚いたように顔を上げた。
ここで目が合うのは想像してなかった。どうしよう!?
言おうとしたことが全部吹っ飛んで、でも綺麗な目に吸い込まれるような気がして目は逸らせなくて。
数秒間見つめ合っちゃって、電車が揺れたことによって我に返った。
「あ、ごめん。えっと、何聴いてるのかなって思って」
緊張のせいでカタコトになったけど、優しく最後まで聞いてくれた。
「……聴く?」
差し出された片耳分のイヤホンを恐る恐る受け取って耳に当てる。
「あんまりバレンタイン感じてないから、歌だけでも感じようかなと思って」
「じゃあ、これ!」
照れ笑いしながら言う彼を見て、突き出すようにチョコを差し出した。
(何チョコ!?貰えると思ってなかったからどうしていいかわかんないけど嬉しい、やっぱ好きだな……)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑻𝒂𝒌𝒖𝒎𝒊
「みに、なんでそんな機嫌悪いん?」
「別に悪くない」
困り眉で腕をつついてくるから、ニヤけそうになる。だけど視界に入ったものがムカつくから真顔を貫く。
その紙袋に色んな箱や袋が入ってるからだよ!なんて素直に言えるわけあるか。
「……カラオケ寄るか?」
ここで追及してこないで、機嫌が良くなるようにって考えてくれちゃうとこ。
その愛おしさ半分、気を遣わせた申し訳なさ半分で口角を上げる。
「大丈夫、ありがと」
「ならええけど……」
納得がいってなさそうな様子で、匠海はポリポリと頭を掻いた。
「あ、せや。チョコ食う?」
「は!?」
なんでそうなる。
「もっと大事にしなよ」
「どうせ全部友チョコやん。別にええやろ」
鈍感すぎない?
でもなんか、逆に軽い気持ちで渡せるのかも。
「……じゃあチョコ増やしてやる」
「うわ、めっちゃ嬉しい!」
感謝の言葉を述べ、匠海は鞄に仕舞った。
「1番大事なチョコは丁寧に持ち歩くべきやろ」
(今年も貰えて良かった〜!こんくらいアピールしても許されるよな、俺の気持ち)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑲𝒚𝒐𝒔𝒖𝒌𝒆
「みにじゃん。味見しに行っていい?」
「やだ」
チョコ作りの買い出しにスーパーに行ったら幼馴染と遭遇。
甘党なコイツは、調子良く盗み食おうとしてくるから丁重にお断りする。
「失敗作食ってやろうと思ったのに」
「私、失敗しないので」
「ドラマかよ」
笑ってカゴの中身を覗き込んでくる。
どうしよう。友達にあげる用の袋とは別に箱も入れてるから、本命にあげようとしてる人のカゴすぎる。
「ふーん」
気づかなかった?
京介って割と鋭いからそんなはずないと思うけど。
「誰にあげんの、それ」
「え?」
「……今のやっぱなしで。じゃ」
ひらひらと手を振って、京介ママにパシられたであろうおつかいに向かう背中が、寂しそうに見えた。
だから、フライングして言っちゃったんだよ。
「京介!」
「なに?」
「って言ったらどうする?」
振り返った顔は驚きに満ち溢れていて、どこか照れが浮かんでいた。
「……勘違いする、けど」
(え、これ本当に俺がイタイ奴とかじゃなくて?本当に?なんでみにも否定しないんだよ……ガチ?)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑹𝒊𝒉𝒊𝒕𝒐
「なんでチョコなんだろ、バレンタインって」
「そこ考え始めんの?」
みにらしいけど、と笑ってくれる辺りが良い奴。
こっちはチョコ渡す口実が欲しくて、なんか理由を探してるだけなのに。
「現実的に、チョコレート会社の広告としか思えないんだもん」
でも、理人とこうやってくだらない会話をしてる時間は楽しくて好きだから、普通に見解を述べてみる。
「だろうね。でもさ、チョコってちょうどいいんやない?」
「ちょうどいい?」
「甘いのもビターなのもあるからそれぞれの恋の味、なんつって」
何言わせてんだよーと言いながら殴るフリをしてるけど、ちょん、って当たるだけだから全く痛くない。
そういうとこでまた好きが増してるなんて、理人は全く気づいてないんだろうな。
「じゃあ、名解答の理人くんに景品あげるよ」
「よっしゃー」
「ん。池﨑説、合ってるかもね」
結構スイートめなの渡してるけど、こういう形でしか伝えられないからいいよね。
(バレンタイン興味ないんかと思ってたし、実際今日みにが誰かに渡してんの見なかったけどな……これ言うのキモいから一人で浸ってよ。特別扱いってだけで飯食えるわ俺)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑺𝒉𝒐𝒈𝒐
やっぱり、今日は来ないかな。
図書室の隅で会う男の子。
お互い人見知りだけど、最近話すようになった。
確かな約束は交わさず、週に数回会えたら少しだけ喋る。
気づいたら、この関係も彼のことも好きになってた。
とはいえ、読書する横顔とか組まれた脚の長さとか容姿が整っていることには気づいてるから、優しいところも含めてモテることは安易に想像できる。
だからバレンタインの放課後が暇なはずがないのもわかってた。
そのくせに、好きな詩集の告白みたいなページだけ押し付けようとしてるのは私なんだけど。
ミステリーを読んで寂しさを抑え込んでいると、扉が開く。
「良かった。みにちゃん、いた」
微笑んで駆け寄ってくる姿に、胸がキュンと鳴いた。
「たじくんに借りて欲しい本あったから」
「本当?」
息を吐きながら腰掛ける姿に、大人気だったんだろうなと察する。
それでも会えたことに今だけ自惚れさせてもらって、付箋を貼った詩集を差し出した。
(やっぱりみにちゃんの隣がいいって思ってるのバレてる?……恋愛の詩集?都合よく解釈したくなるけど、いいのかな)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑭𝒆𝒏𝒈𝒇𝒂𝒏
「わ、どうしたの」
「しーっ」
放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると、ドアの前で息を潜めている想い人を発見。
疑問を呈せば、人差し指を立てて制止される。
内緒話をするように近づいてきて、私はその距離感の近さにドキドキしてるのに、当の本人は言葉を続けた。
「告白。してるみたいだから……」
「ああ!ぶち壊さなくて良かった、ありがとう」
感謝を伝えたら、我に返ったらしいフェンフェンは離れていった。
「無理に止めちゃってごめんね?」
「いやいや、ありがたい」
なんならラッキーだったとは言えない。
「あと、みにちゃんの忘れ物ってこれ?」
フェンフェンに差し出されたのは、紛れもなく私のスマホ。
「え、ありがとう!もしかして待っててくれたの?」
「あー、まあ、そうかも」
どこか歯切れの悪い言葉が引っかかりながら、今度こそ頑張れるように心の中で気合を入れる。
「じゃあ、お礼にこれ!またね!」
逃げるように去っちゃったけど、結局渡せたからいいか。
(わ、やった好きな子から貰えちゃった……みにちゃんのって気づいたから待ってただけなんだけどね)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑴𝒂𝒔𝒂𝒚𝒂
学校で幼馴染が人気だったから、さっさと家に帰ってきた。なのに、家まで押しかけてきて。
「みにからはチョコないのー?」
「ない」
「欲しいな〜」
「たくさん貰ってるでしょ」
わざと目を逸らしながら答えてるのに、柾哉は許してくれない。
両手で私の顔を挟み、強制的に目と目が合わせてきた。
「ね、ないの?」
「……ある、けど」
「けど?」
「別にいらないかなって」
「いる」
「いやほんと気遣わなくていい」
「いる」
何を言っても、いるの一点張りで譲ってくれない。
そんなに言うなら、と1番丁寧に包んだチョコを渡した。
さっきまでの威圧感は消え、柾哉はふにゃふにゃ笑っている。
「毎年みにのが1番嬉しいもん」
「……好み分かってるからね」
「そうかも!あと毎年違うのもワクワクする」
毎年渡す意味をググっては、気持ちを込めてることなんて知らないんだろうなあ。
(よかった、今年も俺の分用意されてた……俺はずっと本命ってことにしてるけど、みには気づいてないんだろうなあ)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ver.𝑯𝒊𝒓𝒐𝒕𝒐
「ちゃんと部活来て偉いじゃん」
「むしろこんな減ると思ってなかったわ」
「ね。みんな青春してんだね」
バレンタインでも部活に来ている私たち。
でも他に部員はいなくて、放課後の体育館には寂しい空気が漂っていた。
「てか洸人こそなんでここ居んの?」
「お前イジってるだろ」
いや、これ本音なんだけどな。
下駄箱開けたらチョコがドサドサみたいなタイプのはずなのに、荷物の量いつもと同じなんだもん。絶対おかしい。
「どうする?自主練?」
追及するのは諦めて、今日の予定を聞くことにした。
……これは建前で、洸人が背を向けるタイミングを伺ってるんだけど。
想定通り洸人は歩き回ってるから、その隙にチョコを彼の鞄の傍に置いておいた。
「んー、どうせなら俺らもどっか行く?」
「え!?」
思ってもみなかった誘いに、素っ頓狂な声が出る。
「嫌なん」
「嫌じゃないけど」
むしろ、嬉しい。
その呟きは届いたかわからないけど、口角を上げた洸人は荷物の近くに戻ってきた。
「え?何これ」
「さあ?洸人のじゃない?」
(今日一か八か全員のチョコ断っといて良かったな、本命からこんな渡し方されると思ってなかったけど……え待ってこれデート?)
