INIのおんなのこ。
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メンバーの木村柾哉は、私を「俺の赤ちゃん」と呼ぶ。
「みにさんはどう思っていらっしゃるんですか?」
雑誌のライターさんに問われ、迷わず答えた。
「嫌ですよ。立派な大人ですもん」
彼は私の頬を両手で包んで「偉いね」と言うし、
髪を優しく梳いては「頑張ったね」と言う。
大人になりたい感情からしたら、嬉しくない。
でも、ここにいるのはライターさんと私だけ。
そう思ったら、普段言えない言葉がするすると飛び出した。
「頼ってほしいんです。でも、赤ちゃんには頼らないじゃないですか」
私たちのリーダーは、誠実で努力家。
だから、そんな彼を支えられるようになりたい。
「……そう思わせるくせに、頼る対象に最初から入れてくれないの、ずるい」
勢いのまま話し過ぎたかな。
ちょっと反省しながら顔をあげると、ライターさんは目を輝かせていた。
「愛に溢れてますね」
「いやいや。それに、嬉しい時もあるんですよ」
彼のそばにいれば、温もりと優しさをくれるってわかるから。
そんな居場所があることに、きっと私は救われてる。
「これは内緒にしてください」
インタビューが終わって、逃げるように飛び出した。
Side:Masaya
「……ってみにさんが仰ってました。内緒で教えてくださったんですけど、あまりにも柾哉さんが大事なんだなって伝わってくるので、思わず言っちゃいました」
ライターさんに愛おしすぎることを伝えられ、今すぐみにを抱きしめたい衝動に駆られる。
「ところで、なんで赤ちゃんって呼んでるんですか?」
「へへ、みにが大事だからじゃだめですか?」
それ以外ない。
でもきっと、みにが思ってるよりずっと俺は重い。
こんなとこで全てをさらけ出せるほど純白なものなんかじゃない。
そんな黒い気持ちが渦巻いてるのに気づくはずがないライターさんは、感動です!なんて言っている。
「大事な存在っていう意味なんですね!」
「そんなとこです」
みには真っさらでかわいくて、目を離したらどこかに行ってしまいそうで。
ちゃんと自立してるって分かってる。
だけど、俺がいなきゃだめって思ってほしい。
どこにも、誰にも、渡したくないから。
そう刷り込んでるなんてさ。
「言えるわけないじゃん」
今日も不満気に唇を尖らせながら、素直に身を委ねてくれるみにが愛おしくて仕方がない。
「みには俺の赤ちゃんだもんね」
だから、ずっと俺のそばにいて。
メンバーの佐野雄大は、私を「俺の推し」と称する。
「みにさんはどう思ってるんですか?」
「最近はその設定薄れてるので、何とも」
メイクさんにさらっと聞かれ、返答に困る。
オーディションのときなんかは、顔を見たら逃げられてたから嫌われてるのか心配になるレベルだった。
最近は隣に座っても別に動揺しないから、あんまりそんな感じしない。
「でもさっき、ものすっごい褒めてらっしゃいましたけど」
「確かにそう考えるとまだあの感じなんですかね?」
髪型を変えると絶対に叫び、落ち着いた頃にびっくりするぐらい褒めちぎるのだ。
そんな彼は見せがいがありすぎて、見た目を変えたときに1番に会いたくなるのは彼と言っても過言ではないのかもしれない。
「この前はみにさんのチッケム見てましたよ」
「え!?憧れられて嬉しくない人いないですもん。そりゃ嬉しいですよ」
照れることもあるけど、アイドルとして嬉しくないわけがない。
距離を置かれてると思うと寂しいけど、どんなときだって抜群のリアクションをくれるところなんかはありがたい。
「私もみにさんと佐野くんのケミ好きなので、ファンサしてあげてください」
「ふふ、考えときます」
上機嫌でメイクさんにお礼を言って、楽屋に戻った。
Side:Yudai
ほとんど一目惚れやった。
最初にみにを目に映したとき、ほんまに冗談抜きで息が止まった。
そして、みにの笑顔を見たときは心臓がドクドクいって目が離せなくなった。
もしかしたら、この子が好きになってまうんやないか。
そんな予感がした俺は、その気持ちを抑えるために“推し”と公言することを選んだ。
きっと、これは正解やったと思う。
どんなみにもめっちゃ綺麗で、リアクションに嘘ついてへんし。
でも、俺の褒め言葉にはにかんだように笑うみには、かわいくて。
それに、メンバーのみんなもMINIのみんなも「雄大しか引き出せない表情がある」って言ってくれるから、幸せで。
愛しいって思う度に、“推し”と自分に言い聞かせる。
そうしたら、少しだけ遠くに感じられるから。
俺なんかが手に入れられる存在じゃないって、諦められるから。
「うわ!このみにやばない!?表情良すぎるやろ。こんなん世界中の人が惚れてまうやん」
「あ、ありがとう……?」
ずっとずーっと、君に夢中。
きっと推し変なんかできん。
だから、ずっと俺にその笑顔を見せて。
メンバーの藤牧京介は、私を「俺のダチ」だと認識している。
「なんかいいですよね、そういうの」
「そうですか?」
レコーディングの休憩時間。
作曲してくださった方がポツリと呟いた。
「ただの友だちっていうより、藤牧さんの場合は愛を持って振る舞ってる感じするんです。それが眩しくて」
「……いや、そんな深いこと考えてないと思います」
他のメンバーには無理強いしないくせに、私はすぐ焼肉に連行するし。
そのくせストレートに「むくんでんね今日」とか言ってくるし。
どう考えたって、ただのダチじゃん。
「ふふ、でも藤牧さんと一緒に笑ってる時のみにさん、とっても楽しそうに見えます」
「まあ、否定はできないです」
それに、京介はきっと私の意向を汲んでいるんだと思う。
男だらけのグループでも浮かないようになりたいって、ずっと言ってるから。
パフォーマンスではみんな親身になって教えてくれるけど、なんだかんだ紳士だから甘やかしたりとびきり優しくしてくれたりする。
そんな中でも、日常で1番気安く接してくれる京介は、私に合わせてくれる優しさを持ってると思う。
そう言うと、作曲家さんは嬉しそうに目を細めた。
Side:Kyosuke
どうやったらみにに1番近い存在になれるか。
本気で考えた結果、みにの目標に付き合って、最初から友達として隣にいることだった。
そしてこれは功を奏し、プライベートでみにと1番一緒にいるのは俺だと思う。そうじゃないと困る。
くだらないことも言い合える関係になり、軽い相談だってしてもらえるポジションを陣取った。
メンバーにマウントとれるくらい近づけた。
でも、お兄ちゃん組あたりに甘やかされて照れた表情を浮かべるみにを見ると、欲が出てしまう。
自分から安全なポジションを取っておいてさ。
ほんっとにずるい奴だと自分でも思う。
アニメや漫画でよく見かけるクサいセリフが何度も頭をよぎった。
“まーしょうがねえから、そんときは俺が貰ってやるよ”
流石に口にする勇気はねえけど、もし言ったらみに、どんな顔すんのかな。
そう考えて、なけなしの理性で無理矢理そんな欲をかき消す。
どんだけ努力して今の場所を手に入れたんだ、って言い聞かせてさ。
そして隣に行って、警戒心なんか微塵もないみにの笑顔を見て優越感に浸る。
「さすが俺のダチだわ」
このままみにに振り回されたっていい。
だからずっと、幸せでいて。
メンバーの髙塚大夢は、私を「俺の人見知り仲間」と呼ぶ。
理由は簡単、INIの中でずば抜けて私と大夢が人見知りだから。
単独の仕事ではINIのためだ!と言い聞かせて乗り切っているが、みんな揃ってるときには陽キャたちに任せてしまう。
そして、隅で私と大夢が影を消しているのだ。
「迅すごすぎ」
「ね。柾哉くんも話してる」
初対面のボーイズグループさんを前に、コミュ力を発揮するメンバーが頼もしい。
私たちは直立不動でぎこちなく笑みを浮かべる。
ボソボソ2人で喋りながら時が過ぎるのを待っていると、いつの間にか近くにいたあちらのメンバーさんに名前を呼ばれた。
「あの、みにさん!」
「っえ!?は、はい」
「うわ〜近くで見ると画面越しに見るよりもっと綺麗ですね!」
「あ、ありがとうございます」
勢いに圧倒されつつもお世辞に感謝していれば、横から手がぎゅっと握られた。
「あの、ごめんなさい。ちょっと僕たち歌の打ち合わせしたくて。今日はちょっと」
急に割り込んだ大夢と繋がれた手に驚きを見せたあと、彼は急いで戻っていく。
去っていった彼らを見送ると、大夢が息を吐く音が聞こえた。
「ありがと」
「ん」
Side:Hiromu
INIの人見知りツートップは、みにと俺。
だからこそ距離を縮めるのは遅かったけど、他の人に会うときはみにが近くに来てくれるようになった。
いっぱい人がいる中で、みにとふたり。
顔が強張ってるみにには申し訳ないなあと思うけど、小走りで駆け寄ってくるみにが愛おしい。
このドキドキ、横にぴったりと立つみににバレてなきゃいいけど。
鈍感だし、気づくはずもないか。
それに、ただ横にいるわけじゃなくて。
__俺らがいなかったら、大夢がみに守っといて。
なんて、保護者に見せかけて独占欲強めのお兄ちゃん組に言われてる。
みにの目にINI以外の男が映るのが嫌なんだろうな。俺もだけど。
そんなわけで、人見知り仲間として、俺にはみにの隣でみにを守るという義務もある。
いざとなれば人見知りとか言ってられない。
感じ悪くならないように、言葉ではさりげなく。
でも少し震えるみにの手を握って、みにには見えないように目で威嚇する。
「ありがと」
彼らが去った後、ほっとした顔で笑うみにを見ると醜い独占欲が満たされてしまう。
ずっと、俺らだけに心を開いていてよ。
そして、ずっと俺に守られててよ。
メンバーの許豊凡は、私を「俺の大事なひと」と言う。
そりゃ私にとってもメンバーは大事だし、そう思ってくれてるのは喜ばしいことだ。
そう、なんだけど。
「みにさんだけ、“大事なメンバー”じゃなくて“大事なひと”って最初に言ってました」
「え?」
どんな文脈だったか、ラジオのスタッフさんにそんなことを言われて戸惑った。
彼の中で、そんな使い分けがあるの?
「たまたまじゃないですか?」
いつだって紳士だし優しいけど、彼の優しさはもちろん私限定ではないはず。
「寒くない?」「怪我しないでね」と最初に声を掛けてくれるし、体調やちょっとした不安にすぐに気づいてはそっと頭を撫でてくれる。
そんな風に甘えさせてもらってるけど、時には私に寄りかかってくれることもあって、甘えてくれてもいるみたいで嬉しい。
でも別に、私だけってことはないと思うのだ。
そう思って否定してみるけど、スタッフさんは引き下がらなくて。
「その時の声が、今まで聞いた中で1番優しかったんです」
「……プロの方に言われたら否定できないですね」
得意げに笑うスタッフさんを見ながら、一体どんな意味が込められていたのだろうと考える。
面と向かって聞けるわけないし、答えは見当もつかない。
ただ、なんだか嬉しかったのは事実だ。
Side:Fengfan
人によっては、逃げてるって思うだろうな。
みには、大事な女の子だ。
それはどのメンバーにとっても、きっとMINIにとっても同じ。
でも僕は、その大事の意味を、わざと探さないようにしている。
メンバーだから?恋してるから?愛してるから?なんて。
メンバーだからって言えたらいいけど、そうじゃなかったときにはきっと同じグループにいちゃいけないだろうなって分かっているから。
そして、そうなのかもって思っている自分がいるから。
みにが危険な目に遭ってしまったら絶対に助けたいし、みにが苦しんでいたらそばに寄り添ってあげたい。
反対にみにの横にいたら安心するし、そばにいてほしい。
メンバーみんなそうだけど、みには特別にそう思う。
だけど、恋だなんて名前をつけてしまったら、絶対にだめだから。
大事って言葉でそうじゃないようにしてる。
でもひとつ絶対に言えるのは、メンバーじゃなかったとしても大事な存在だっただろうなって事。
みにの全部が大事で、失いたくない。
だからさ、一生、一緒にいてね。
メンバーの田島将吾は、時に私を「俺のみに」と呼ぶ。
それは、「ウチの」「INIの」というニュアンスだと思ってた。
だけど、ある夜、適当に点けたテレビを見て、頭を捻る事態となった。
__私のxxちゃんです
__いや、みんなのでしょ?
__私のです!
女性アイドルさんの冠番組で、メンバーからメンバーへの愛が重いって流れだったんだけど。
……たじの言い回し、この子と一緒?
いやいや、たじに独占欲とかそういう概念ないと思う。
ぽわ~ってしてるときあるし、特にそんな意味なく使ってるんだろう。
__独占欲がすごいね。もうカップルじゃん
__そのくらい好きです
……テレビ消そ。
夜も遅くなってきたから、その日はそこからなんもせず寝た。
でも、たじの「俺のみに」発言がリフレインして寝れなかった。
いつ言ってるのか思い出せないくらい聞き流してたのにな。
そして寝不足で翌日を迎え、車に乗り込むとタイムリーな彼が隣にやってきた。
「おはよ、みに」
「おはよ」
あくびを手で隠しながら応えると、さらりと髪に触れながら彼は言う。
「かわい。眠いの?」
「うん」
「俺の肩使っていいよ」
そう言いながら、優しく手を私の頭に添えて寄りかからせてくれた。
Side:Shogo
「あれ、珍しい。みに寝てんの?」
車に乗るなり、俺と隣の天使の寝顔を一瞥してそういう柾哉。
その声に一瞬不機嫌なニュアンスが乗ったのは無視させてもらって、ちゃんと答える。
「なんか眠いみたい」
「あは、それでも1番に来て偉いね」
そう言って彼は助手席に行ったので、改めてみにの寝顔を見つめる。
1番に来て隅っこ行っちゃうから、隣になれるのはひとりだけなんだよね。
メンバーが揃う頃にはみにはぐっすりで、その頭の重さすらもかわいいなあ、とか考えちゃう。
「たじ、我が物顔しすぎじゃね?」
今度は顔しかめぎみの最年長が言う。
どことなく目が怖いのは、眠いからってことにしちゃおう。
「俺のみに」
「……ここまで独占欲全開で気づかねえみにがすごいわ」
やれやれって顔して言う洸人にピースしたら、苦笑いされた。
気づかないから、言うんじゃん。
いくら俺らが愛を叫んだって、きっとみには振り向かない。
だから、俺のだぞーって言いたいだけ言って、俺が満足してるだけ。
でも、いつか。
俺のって言える日が来ないかなってほんの少し信じてる。
だから、ずっと一緒にいよう。
メンバーの松田迅は、ことあるごとに私を「俺の猫ちゃん」と呼ぶ。
最初の頃は「いや迅がね?」と言い続けていたが、迅が全然折れてくれないので諦めた。
「みにちゃん目元すごいキラキラしてるね」
「ね、すごいよね」
「綺麗〜やっぱ俺の猫ちゃん」
「……ありがとう?」
今日のやりとりといえば、こんなである。
そして、どのへんが猫なのか未だに教えてくれない。
猫顔って言われる方でもないし、そんなに気まぐれでもない。
なんから、たまにメディアで聞かれるこの質問に、彼以外のメンバーは誰も猫って言わない。
リーダーは「うさぎちゃんですね〜寂しがり屋さんなので」とかニヤついてるし、最年長は「飯食うときマジでリスっすね」って言うし、エトセトラ。
「どのへんが猫なの?」
「え?秘密だよ〜」
ほら、今日も教えてくれない。
「絶対MINIもみんなも迅が猫って思ってるのに」
「ふふ、でも俺は猫だと思う」
私の眉間にできたシワを指でちょんちょんとつつきながら、迅は笑う。
「俺も猫でみにちゃんも猫ってことでいいじゃ〜ん」
ぎゅっと腕に絡みつくように抱きついてきた迅を受けとめて、このふにゃふにゃの笑顔が見られるならいいか、なんて思った。
Side:Jin
“みにちゃんって華があって超かわいいんだけど、天使すぎて儚いよね”
“きっとみにちゃん本人は笑って否定してくれると思うんだけど、ふとした時にどっか行っちゃうんじゃないかって思うくらい儚いんだよなあ、、、”
みにちゃんには、MINIからこんなコメントが寄せられる。
そして俺は、本当にその通りだと思っている。
RUNWAYとかBrighterの、光に包まれて目を瞑るみにちゃんももちろんそうだけど。
日常でも、男子校みたいに騒ぐメンバーをニコニコ見てるときとか、少し体調が悪いときとか。
このままじゃ、みにちゃんがここからいなくなっちゃうのかな、って不安になる。
そんなところが、猫ちゃんだと思う。
かわいくて、でもある日フラッとどこかに行ってしまうようなところ。
それを口にしたら、もっとみにちゃんがどこかに行ってしまいそうだから、言わないけど。
それに、言わないでいると、みにちゃんが疑問に思っていっぱい俺のこと考えてくれるでしょ?
猫っていったら、仲間みたいにじゃれても誰にも怒られないでしょ?
そんなメリットを見出したから、猫って言い続けてる。
猫ちゃん仲間として、ずっと一緒に遊ぼうね。
メンバーの池﨑理人は、時々私を「俺のハニー」と呼ぶ。
初めて聞いた時を、鮮明に覚えてる。
韓国で迅に引っ張られて、迅の部屋で迅・威尊・京介そして理人とチャミスルを呑んで喋ってた夜。
いい感じにアルコールが回って楽しくなってたら、隣にいた理人がするりと手を繋いできた。
「理人酔ってる?」
拒むこともせず尋ねると、緩くなった滑舌で返事が来た。
「みに〜」
「酔ってんなこれ」
そろそろ帰そうと思ったら、コテンと理人の頭が肩に乗った。
「俺のハニー」
語尾にハートマークが見える、そんな言い方で囁かれて。
しかも、そのとき3人が威尊のモノマネで私たちそっちのけで盛り上がってたから、ふたりきりみたいで。
自分の体温が上がってしまったのは不可抗力。
「そろそろ俺帰るわー」
驚いていると、急に理人が部屋に戻って、処理できないまま取り残された。
そこから、理人の言葉が頭から抜けなくて。
部屋に戻って、自分の認識違いの可能性に思い至ったから検索してみた。
それでも、“ハニー=愛する人”以外出てこない。
私が疑問に思ってるのを置いて、ライブ終わりとか楽しいINIフォルダの撮影後とかに理人は言い続ける。
……深い意味はないってことでいいか。
Side:Rihito
“みには俺のもの”
なんてフレーズを合法的に口にできるやつが、もし、この世に生まれたとしたら。
そんとき、俺はソイツを思いっきり睨みつけてしまうと思う。
あんなに綺麗で可愛くて優しくて面白くて努力家で歌もダンスも上手くて、トータルすると超美人な高嶺の花。
なのにそんなことを考えてしまうんだから、俺もみにが欲しい男の一人なんかな。
そんな考えや、将吾くんがたまに「俺のみに」と心底愛おしそうな表情で言うことに、触発されてしまった。
だから、俺もそう言ってみたくて。
でも、みににそんな考えを絶対に見透かされたくはなくて。
勇気を振り絞って、酔ってるフリして甘えに行ったときに口にした。
言いたいことの本旨は変えずに、でもギリふざけてると思われそうな言葉を。
俺の思惑通り、みにはキョトンとした超可愛い表情を浮かべてた。
それ以上に、俺の気持ちが少しだけ報われたような気がして、めちゃくちゃ嬉しくなった。
それ以来、定期的に口にしては満たされている。
この言葉が実現されることは、叶わないかもしれないけど。
せめて、ずっと誰のものにもならないで、俺の近くにいて。
メンバーの後藤威尊は、常に私を「俺のプリンセス」と呼ぶ。
カメラが回ってる時は、まあいい。
彼は王子様キャラを目指しているし、ジェントルマンなところはMINIを虜にしてるんだろうな、と思うから。MINIが私を通して彼の良いところをいっぱい感じてくれたら嬉しいし。
ただ、プライベートでも崩れないのが彼の謎ポイント。
今日の練習帰りだって、ね。
「みに~」
送迎車に乗る前、私にだけ手を差し伸べてくれた。
「……ありがとう、ありがとうなんだけど普通に乗れるよ?」
「みにが怪我するとかダメやし」
「そんなすぐコケないよ!」
「みにを心配してるっていうか、みにがどんな理由であろうと悲しい思いしたら嫌やねんな」
どこぞの王子様のセリフ。
しかも、威尊に似合っているのがすごい。
だからこそ、こんなすっぴんに練習着のメンバーじゃなくてMINIの子たちの前で言ってほしい。
「……え、なんか、もっと適当でいいんだよ?」
「うん?」
「プライベートだし、王子様の威尊じゃなくて普通の威尊でいていいのに」
「ようわからんけど、普通の威尊やで?このやり取り何回すんねん」
ケロッとしてるから素で優しいんだろうけど、むず痒い。
一体彼はどこまで優しい人なんだろうか。
Side:Takeru
大切な女の子には、うんと優しくしてあげたい。
そう思うことは、全く不自然ではないと思っている。
その思いが彼女に届いてないから、毎回「無理すんな」的なことを言われるんやろうけど。
最初の方はずーっと言われ続けるから「なんでこの子素直に受け取らんのやろ」とちょっと不満だった。
だけど、いつかキムがポツリと溢したんよね。
「素でみにが1番照れてるのって威尊だよね。いいなあ」
「え?」
「威尊にお姫様扱いされてるときが1番照れてるよ絶対」
「それはキムが赤ちゃん扱いするからやん。俺は逆にそのほうがいっぱい触れられるのから羨ましいけどな」
絶対自分なりの理由がある癖にそう言うキムは謎やったけど、その言葉が本当なら、めちゃくちゃ嬉しかった。
メンバーの誰かが分かりやすく独占欲を口にしても全く気付かない鈍感姫やもん。
なのに、ただ俺がお姫様扱いしただけで動揺してんねやろ?
そう思うと、頑なに素直に認めてくれないみにへの愛おしさが増してく。
なあ、みに?
ずっと、俺のプリンセスでいてよ。
いや、ずっと認めてくれなくてもいいけど、やり取りはずっとしてたいな。
メンバーの尾崎匠海は、私を「俺の光」と言っていた、らしい。
普段1ミリもそんな空気を出さないくせに、インタビューとかで急にそんなことを言い出すから、正直何考えてんのか読めない。
そして、問い詰めても「なんとなく」しか言わない。
光って、一体なんだろう。
底抜けにポジティブかって言われてもそんなことないしなあ。
むしろ、匠海に救われてばっかりだし。
「たくみ」
「ん?」
振り入れの休憩時間、床に座ってどこかを見てる匠海を呼んでみる。
「何考えてるの~?」
「え?」
「いや、なんか悩んでんのかぼーっとしてんのか中間の顔してたから」
「なんやそれ」
小さく笑って、隣の床をペチペチ叩いてる匠海。
従って隣に腰を落とせば、二カッと笑って小突いてきた。
「それアホ面って言ってるやん」
「言ってない」
「まあええけど」
「いいんだ」
適当だなあ。
この緩い感じが匠海っぽさで、良いところだけど。
「でもありがとな、みに」
「匠海をいじりにきただけなのに?」
「なんやねん。やっぱいじってたんかい」
「うん」
気遣って欲しくなくて言ったけど、それを全部分かった上で匠海もノってくれてるんだろう。
やっぱり匠海が“光”だと思うなあ。
Side:Takumi
みには、とんでもなく自分のすごさを分かってない。
眩しいくらい真っすぐに目標を見てて、何も考えてないように人に寄り添う。
そのくせに、自分が輝いていることに気づいてない。
そんなところが光、なんよなあ。
でもさ、光の近くに光じゃないもん置いたら、影ができてまうやん。
そう思うと、簡単にみにに近づいちゃいけない気がしてくる。
理人も言ってたけど、みにの誰のものにもならん感じってこういうとこから出てる気がすんねんなあ……
最近の理人は試行錯誤してそばにいられるようにしてるみたいやけど。
俺はあんまりできひんかもな。
なのに、みには自分から何でもないように近づいて勇気づけてくれる。
平然と優しさをくれて、前を向かせてくれる。
ほんますごいなあと思うし、憧れる。
そんな気持ちの反面、近づくのは怖い癖に俺だけにそうしててほしいなんて思うようになってしまった。
な、「そうやって照らすの、俺だけにしてくれん?」って言ったらどうする?
想像するだけで今の関係が崩れそうな気がして、すぐに頭の中に打ち消した。
でも、願うだけならきっと許される。
ずっと、俺を照らしててよ。
メンバーの西洸人は、私を「俺の仲間」と呼ぶ。
色んなメンバーが「俺の」から始まる括りをつける中で、1番まともだと思う。
オーディションのときから、同じ夢を目指して突き進むかけがえのない仲間だから。
「洸人」
次のCDに封入されるユニットセルカが洸人と一緒だったから、準備しようと声を掛ける。
「うぃ」
立ち上がった彼は、照れたように笑って歩き始めた。
「どこで撮る?」
「誰とも被んねえとこにしようぜ」
「うわ、それあり。MINIびっくりさせよ」
悪巧みは私たちの得意分野。
セルカはかなり自由だから、たぶん怒られないだろう。
そう考えた私たちは、メンバーはみんな室内で撮ると踏んで、屋上に来てみた。
「あれ、意外と過ごしやすそう」
「だな」
ササッと数枚撮って、なんだか名残惜しくなって2人で外の景色を眺める。
「なんか洸人って安心するよね」
隣から感じる人の気配にあてられて、いつの間にかそんなことを口走っていた。
「え?」
「みんな優しいけど、ほんとにたまーに、不思議なときあるから」
「ああ……」
納得した表情を見せた洸人は、ぽんと手を私の肩に置いた。
Side:Hiroto
えぐい束縛を隠して甘やかす柾哉、
推し目線に舵を切って恋心を消す雄大、
友達ポジで傍にいることを選んだまっきー、
頑なに他の男との接点を消す大夢、
想いをぼやけた言葉に留めるフェンファン、
独占欲全開で実は1番攻めてるたじ、
自分なりに見出した共通点に縋る迅、
ふざけたフリで彼氏面する理人、
自然な姫扱いで照れさせて喜ぶ威尊、
尊敬しつつ自分だけがいいと願う匠海。
みにに抱く思いの発露の仕方は、十人十色。
そんなメンバーを見て、何もできない俺が1番ダサい。
だってもう、俺の感情自体が訳わかんなくなっちゃってるし。
恋だかわかんないくらい好きだし愛してる。
友だちとして横にいても楽しいし、ステージに立つみには推し。
知らん奴と話しててほしくないし、憧れの気持ちもある。
全員の想いに共感するし、全員がその表現の仕方を結論付けてて羨ましくもなる。応援もしてる。
一番どっちつかずな俺は、揺るぎない仲間という事実に安堵しながら、自分らしさを探してる。
でも。
それでみにが落ち着くんなら、それでいっか。
きっとメンバーみんなが大きな愛をぶつけたら、いつか潰れてしまうから。
だったら俺は、みんなをセーブする方でいいよ。
だからずっと、INIでいて。
「みにさんはどう思っていらっしゃるんですか?」
雑誌のライターさんに問われ、迷わず答えた。
「嫌ですよ。立派な大人ですもん」
彼は私の頬を両手で包んで「偉いね」と言うし、
髪を優しく梳いては「頑張ったね」と言う。
大人になりたい感情からしたら、嬉しくない。
でも、ここにいるのはライターさんと私だけ。
そう思ったら、普段言えない言葉がするすると飛び出した。
「頼ってほしいんです。でも、赤ちゃんには頼らないじゃないですか」
私たちのリーダーは、誠実で努力家。
だから、そんな彼を支えられるようになりたい。
「……そう思わせるくせに、頼る対象に最初から入れてくれないの、ずるい」
勢いのまま話し過ぎたかな。
ちょっと反省しながら顔をあげると、ライターさんは目を輝かせていた。
「愛に溢れてますね」
「いやいや。それに、嬉しい時もあるんですよ」
彼のそばにいれば、温もりと優しさをくれるってわかるから。
そんな居場所があることに、きっと私は救われてる。
「これは内緒にしてください」
インタビューが終わって、逃げるように飛び出した。
Side:Masaya
「……ってみにさんが仰ってました。内緒で教えてくださったんですけど、あまりにも柾哉さんが大事なんだなって伝わってくるので、思わず言っちゃいました」
ライターさんに愛おしすぎることを伝えられ、今すぐみにを抱きしめたい衝動に駆られる。
「ところで、なんで赤ちゃんって呼んでるんですか?」
「へへ、みにが大事だからじゃだめですか?」
それ以外ない。
でもきっと、みにが思ってるよりずっと俺は重い。
こんなとこで全てをさらけ出せるほど純白なものなんかじゃない。
そんな黒い気持ちが渦巻いてるのに気づくはずがないライターさんは、感動です!なんて言っている。
「大事な存在っていう意味なんですね!」
「そんなとこです」
みには真っさらでかわいくて、目を離したらどこかに行ってしまいそうで。
ちゃんと自立してるって分かってる。
だけど、俺がいなきゃだめって思ってほしい。
どこにも、誰にも、渡したくないから。
そう刷り込んでるなんてさ。
「言えるわけないじゃん」
今日も不満気に唇を尖らせながら、素直に身を委ねてくれるみにが愛おしくて仕方がない。
「みには俺の赤ちゃんだもんね」
だから、ずっと俺のそばにいて。
メンバーの佐野雄大は、私を「俺の推し」と称する。
「みにさんはどう思ってるんですか?」
「最近はその設定薄れてるので、何とも」
メイクさんにさらっと聞かれ、返答に困る。
オーディションのときなんかは、顔を見たら逃げられてたから嫌われてるのか心配になるレベルだった。
最近は隣に座っても別に動揺しないから、あんまりそんな感じしない。
「でもさっき、ものすっごい褒めてらっしゃいましたけど」
「確かにそう考えるとまだあの感じなんですかね?」
髪型を変えると絶対に叫び、落ち着いた頃にびっくりするぐらい褒めちぎるのだ。
そんな彼は見せがいがありすぎて、見た目を変えたときに1番に会いたくなるのは彼と言っても過言ではないのかもしれない。
「この前はみにさんのチッケム見てましたよ」
「え!?憧れられて嬉しくない人いないですもん。そりゃ嬉しいですよ」
照れることもあるけど、アイドルとして嬉しくないわけがない。
距離を置かれてると思うと寂しいけど、どんなときだって抜群のリアクションをくれるところなんかはありがたい。
「私もみにさんと佐野くんのケミ好きなので、ファンサしてあげてください」
「ふふ、考えときます」
上機嫌でメイクさんにお礼を言って、楽屋に戻った。
Side:Yudai
ほとんど一目惚れやった。
最初にみにを目に映したとき、ほんまに冗談抜きで息が止まった。
そして、みにの笑顔を見たときは心臓がドクドクいって目が離せなくなった。
もしかしたら、この子が好きになってまうんやないか。
そんな予感がした俺は、その気持ちを抑えるために“推し”と公言することを選んだ。
きっと、これは正解やったと思う。
どんなみにもめっちゃ綺麗で、リアクションに嘘ついてへんし。
でも、俺の褒め言葉にはにかんだように笑うみには、かわいくて。
それに、メンバーのみんなもMINIのみんなも「雄大しか引き出せない表情がある」って言ってくれるから、幸せで。
愛しいって思う度に、“推し”と自分に言い聞かせる。
そうしたら、少しだけ遠くに感じられるから。
俺なんかが手に入れられる存在じゃないって、諦められるから。
「うわ!このみにやばない!?表情良すぎるやろ。こんなん世界中の人が惚れてまうやん」
「あ、ありがとう……?」
ずっとずーっと、君に夢中。
きっと推し変なんかできん。
だから、ずっと俺にその笑顔を見せて。
メンバーの藤牧京介は、私を「俺のダチ」だと認識している。
「なんかいいですよね、そういうの」
「そうですか?」
レコーディングの休憩時間。
作曲してくださった方がポツリと呟いた。
「ただの友だちっていうより、藤牧さんの場合は愛を持って振る舞ってる感じするんです。それが眩しくて」
「……いや、そんな深いこと考えてないと思います」
他のメンバーには無理強いしないくせに、私はすぐ焼肉に連行するし。
そのくせストレートに「むくんでんね今日」とか言ってくるし。
どう考えたって、ただのダチじゃん。
「ふふ、でも藤牧さんと一緒に笑ってる時のみにさん、とっても楽しそうに見えます」
「まあ、否定はできないです」
それに、京介はきっと私の意向を汲んでいるんだと思う。
男だらけのグループでも浮かないようになりたいって、ずっと言ってるから。
パフォーマンスではみんな親身になって教えてくれるけど、なんだかんだ紳士だから甘やかしたりとびきり優しくしてくれたりする。
そんな中でも、日常で1番気安く接してくれる京介は、私に合わせてくれる優しさを持ってると思う。
そう言うと、作曲家さんは嬉しそうに目を細めた。
Side:Kyosuke
どうやったらみにに1番近い存在になれるか。
本気で考えた結果、みにの目標に付き合って、最初から友達として隣にいることだった。
そしてこれは功を奏し、プライベートでみにと1番一緒にいるのは俺だと思う。そうじゃないと困る。
くだらないことも言い合える関係になり、軽い相談だってしてもらえるポジションを陣取った。
メンバーにマウントとれるくらい近づけた。
でも、お兄ちゃん組あたりに甘やかされて照れた表情を浮かべるみにを見ると、欲が出てしまう。
自分から安全なポジションを取っておいてさ。
ほんっとにずるい奴だと自分でも思う。
アニメや漫画でよく見かけるクサいセリフが何度も頭をよぎった。
“まーしょうがねえから、そんときは俺が貰ってやるよ”
流石に口にする勇気はねえけど、もし言ったらみに、どんな顔すんのかな。
そう考えて、なけなしの理性で無理矢理そんな欲をかき消す。
どんだけ努力して今の場所を手に入れたんだ、って言い聞かせてさ。
そして隣に行って、警戒心なんか微塵もないみにの笑顔を見て優越感に浸る。
「さすが俺のダチだわ」
このままみにに振り回されたっていい。
だからずっと、幸せでいて。
メンバーの髙塚大夢は、私を「俺の人見知り仲間」と呼ぶ。
理由は簡単、INIの中でずば抜けて私と大夢が人見知りだから。
単独の仕事ではINIのためだ!と言い聞かせて乗り切っているが、みんな揃ってるときには陽キャたちに任せてしまう。
そして、隅で私と大夢が影を消しているのだ。
「迅すごすぎ」
「ね。柾哉くんも話してる」
初対面のボーイズグループさんを前に、コミュ力を発揮するメンバーが頼もしい。
私たちは直立不動でぎこちなく笑みを浮かべる。
ボソボソ2人で喋りながら時が過ぎるのを待っていると、いつの間にか近くにいたあちらのメンバーさんに名前を呼ばれた。
「あの、みにさん!」
「っえ!?は、はい」
「うわ〜近くで見ると画面越しに見るよりもっと綺麗ですね!」
「あ、ありがとうございます」
勢いに圧倒されつつもお世辞に感謝していれば、横から手がぎゅっと握られた。
「あの、ごめんなさい。ちょっと僕たち歌の打ち合わせしたくて。今日はちょっと」
急に割り込んだ大夢と繋がれた手に驚きを見せたあと、彼は急いで戻っていく。
去っていった彼らを見送ると、大夢が息を吐く音が聞こえた。
「ありがと」
「ん」
Side:Hiromu
INIの人見知りツートップは、みにと俺。
だからこそ距離を縮めるのは遅かったけど、他の人に会うときはみにが近くに来てくれるようになった。
いっぱい人がいる中で、みにとふたり。
顔が強張ってるみにには申し訳ないなあと思うけど、小走りで駆け寄ってくるみにが愛おしい。
このドキドキ、横にぴったりと立つみににバレてなきゃいいけど。
鈍感だし、気づくはずもないか。
それに、ただ横にいるわけじゃなくて。
__俺らがいなかったら、大夢がみに守っといて。
なんて、保護者に見せかけて独占欲強めのお兄ちゃん組に言われてる。
みにの目にINI以外の男が映るのが嫌なんだろうな。俺もだけど。
そんなわけで、人見知り仲間として、俺にはみにの隣でみにを守るという義務もある。
いざとなれば人見知りとか言ってられない。
感じ悪くならないように、言葉ではさりげなく。
でも少し震えるみにの手を握って、みにには見えないように目で威嚇する。
「ありがと」
彼らが去った後、ほっとした顔で笑うみにを見ると醜い独占欲が満たされてしまう。
ずっと、俺らだけに心を開いていてよ。
そして、ずっと俺に守られててよ。
メンバーの許豊凡は、私を「俺の大事なひと」と言う。
そりゃ私にとってもメンバーは大事だし、そう思ってくれてるのは喜ばしいことだ。
そう、なんだけど。
「みにさんだけ、“大事なメンバー”じゃなくて“大事なひと”って最初に言ってました」
「え?」
どんな文脈だったか、ラジオのスタッフさんにそんなことを言われて戸惑った。
彼の中で、そんな使い分けがあるの?
「たまたまじゃないですか?」
いつだって紳士だし優しいけど、彼の優しさはもちろん私限定ではないはず。
「寒くない?」「怪我しないでね」と最初に声を掛けてくれるし、体調やちょっとした不安にすぐに気づいてはそっと頭を撫でてくれる。
そんな風に甘えさせてもらってるけど、時には私に寄りかかってくれることもあって、甘えてくれてもいるみたいで嬉しい。
でも別に、私だけってことはないと思うのだ。
そう思って否定してみるけど、スタッフさんは引き下がらなくて。
「その時の声が、今まで聞いた中で1番優しかったんです」
「……プロの方に言われたら否定できないですね」
得意げに笑うスタッフさんを見ながら、一体どんな意味が込められていたのだろうと考える。
面と向かって聞けるわけないし、答えは見当もつかない。
ただ、なんだか嬉しかったのは事実だ。
Side:Fengfan
人によっては、逃げてるって思うだろうな。
みには、大事な女の子だ。
それはどのメンバーにとっても、きっとMINIにとっても同じ。
でも僕は、その大事の意味を、わざと探さないようにしている。
メンバーだから?恋してるから?愛してるから?なんて。
メンバーだからって言えたらいいけど、そうじゃなかったときにはきっと同じグループにいちゃいけないだろうなって分かっているから。
そして、そうなのかもって思っている自分がいるから。
みにが危険な目に遭ってしまったら絶対に助けたいし、みにが苦しんでいたらそばに寄り添ってあげたい。
反対にみにの横にいたら安心するし、そばにいてほしい。
メンバーみんなそうだけど、みには特別にそう思う。
だけど、恋だなんて名前をつけてしまったら、絶対にだめだから。
大事って言葉でそうじゃないようにしてる。
でもひとつ絶対に言えるのは、メンバーじゃなかったとしても大事な存在だっただろうなって事。
みにの全部が大事で、失いたくない。
だからさ、一生、一緒にいてね。
メンバーの田島将吾は、時に私を「俺のみに」と呼ぶ。
それは、「ウチの」「INIの」というニュアンスだと思ってた。
だけど、ある夜、適当に点けたテレビを見て、頭を捻る事態となった。
__私のxxちゃんです
__いや、みんなのでしょ?
__私のです!
女性アイドルさんの冠番組で、メンバーからメンバーへの愛が重いって流れだったんだけど。
……たじの言い回し、この子と一緒?
いやいや、たじに独占欲とかそういう概念ないと思う。
ぽわ~ってしてるときあるし、特にそんな意味なく使ってるんだろう。
__独占欲がすごいね。もうカップルじゃん
__そのくらい好きです
……テレビ消そ。
夜も遅くなってきたから、その日はそこからなんもせず寝た。
でも、たじの「俺のみに」発言がリフレインして寝れなかった。
いつ言ってるのか思い出せないくらい聞き流してたのにな。
そして寝不足で翌日を迎え、車に乗り込むとタイムリーな彼が隣にやってきた。
「おはよ、みに」
「おはよ」
あくびを手で隠しながら応えると、さらりと髪に触れながら彼は言う。
「かわい。眠いの?」
「うん」
「俺の肩使っていいよ」
そう言いながら、優しく手を私の頭に添えて寄りかからせてくれた。
Side:Shogo
「あれ、珍しい。みに寝てんの?」
車に乗るなり、俺と隣の天使の寝顔を一瞥してそういう柾哉。
その声に一瞬不機嫌なニュアンスが乗ったのは無視させてもらって、ちゃんと答える。
「なんか眠いみたい」
「あは、それでも1番に来て偉いね」
そう言って彼は助手席に行ったので、改めてみにの寝顔を見つめる。
1番に来て隅っこ行っちゃうから、隣になれるのはひとりだけなんだよね。
メンバーが揃う頃にはみにはぐっすりで、その頭の重さすらもかわいいなあ、とか考えちゃう。
「たじ、我が物顔しすぎじゃね?」
今度は顔しかめぎみの最年長が言う。
どことなく目が怖いのは、眠いからってことにしちゃおう。
「俺のみに」
「……ここまで独占欲全開で気づかねえみにがすごいわ」
やれやれって顔して言う洸人にピースしたら、苦笑いされた。
気づかないから、言うんじゃん。
いくら俺らが愛を叫んだって、きっとみには振り向かない。
だから、俺のだぞーって言いたいだけ言って、俺が満足してるだけ。
でも、いつか。
俺のって言える日が来ないかなってほんの少し信じてる。
だから、ずっと一緒にいよう。
メンバーの松田迅は、ことあるごとに私を「俺の猫ちゃん」と呼ぶ。
最初の頃は「いや迅がね?」と言い続けていたが、迅が全然折れてくれないので諦めた。
「みにちゃん目元すごいキラキラしてるね」
「ね、すごいよね」
「綺麗〜やっぱ俺の猫ちゃん」
「……ありがとう?」
今日のやりとりといえば、こんなである。
そして、どのへんが猫なのか未だに教えてくれない。
猫顔って言われる方でもないし、そんなに気まぐれでもない。
なんから、たまにメディアで聞かれるこの質問に、彼以外のメンバーは誰も猫って言わない。
リーダーは「うさぎちゃんですね〜寂しがり屋さんなので」とかニヤついてるし、最年長は「飯食うときマジでリスっすね」って言うし、エトセトラ。
「どのへんが猫なの?」
「え?秘密だよ〜」
ほら、今日も教えてくれない。
「絶対MINIもみんなも迅が猫って思ってるのに」
「ふふ、でも俺は猫だと思う」
私の眉間にできたシワを指でちょんちょんとつつきながら、迅は笑う。
「俺も猫でみにちゃんも猫ってことでいいじゃ〜ん」
ぎゅっと腕に絡みつくように抱きついてきた迅を受けとめて、このふにゃふにゃの笑顔が見られるならいいか、なんて思った。
Side:Jin
“みにちゃんって華があって超かわいいんだけど、天使すぎて儚いよね”
“きっとみにちゃん本人は笑って否定してくれると思うんだけど、ふとした時にどっか行っちゃうんじゃないかって思うくらい儚いんだよなあ、、、”
みにちゃんには、MINIからこんなコメントが寄せられる。
そして俺は、本当にその通りだと思っている。
RUNWAYとかBrighterの、光に包まれて目を瞑るみにちゃんももちろんそうだけど。
日常でも、男子校みたいに騒ぐメンバーをニコニコ見てるときとか、少し体調が悪いときとか。
このままじゃ、みにちゃんがここからいなくなっちゃうのかな、って不安になる。
そんなところが、猫ちゃんだと思う。
かわいくて、でもある日フラッとどこかに行ってしまうようなところ。
それを口にしたら、もっとみにちゃんがどこかに行ってしまいそうだから、言わないけど。
それに、言わないでいると、みにちゃんが疑問に思っていっぱい俺のこと考えてくれるでしょ?
猫っていったら、仲間みたいにじゃれても誰にも怒られないでしょ?
そんなメリットを見出したから、猫って言い続けてる。
猫ちゃん仲間として、ずっと一緒に遊ぼうね。
メンバーの池﨑理人は、時々私を「俺のハニー」と呼ぶ。
初めて聞いた時を、鮮明に覚えてる。
韓国で迅に引っ張られて、迅の部屋で迅・威尊・京介そして理人とチャミスルを呑んで喋ってた夜。
いい感じにアルコールが回って楽しくなってたら、隣にいた理人がするりと手を繋いできた。
「理人酔ってる?」
拒むこともせず尋ねると、緩くなった滑舌で返事が来た。
「みに〜」
「酔ってんなこれ」
そろそろ帰そうと思ったら、コテンと理人の頭が肩に乗った。
「俺のハニー」
語尾にハートマークが見える、そんな言い方で囁かれて。
しかも、そのとき3人が威尊のモノマネで私たちそっちのけで盛り上がってたから、ふたりきりみたいで。
自分の体温が上がってしまったのは不可抗力。
「そろそろ俺帰るわー」
驚いていると、急に理人が部屋に戻って、処理できないまま取り残された。
そこから、理人の言葉が頭から抜けなくて。
部屋に戻って、自分の認識違いの可能性に思い至ったから検索してみた。
それでも、“ハニー=愛する人”以外出てこない。
私が疑問に思ってるのを置いて、ライブ終わりとか楽しいINIフォルダの撮影後とかに理人は言い続ける。
……深い意味はないってことでいいか。
Side:Rihito
“みには俺のもの”
なんてフレーズを合法的に口にできるやつが、もし、この世に生まれたとしたら。
そんとき、俺はソイツを思いっきり睨みつけてしまうと思う。
あんなに綺麗で可愛くて優しくて面白くて努力家で歌もダンスも上手くて、トータルすると超美人な高嶺の花。
なのにそんなことを考えてしまうんだから、俺もみにが欲しい男の一人なんかな。
そんな考えや、将吾くんがたまに「俺のみに」と心底愛おしそうな表情で言うことに、触発されてしまった。
だから、俺もそう言ってみたくて。
でも、みににそんな考えを絶対に見透かされたくはなくて。
勇気を振り絞って、酔ってるフリして甘えに行ったときに口にした。
言いたいことの本旨は変えずに、でもギリふざけてると思われそうな言葉を。
俺の思惑通り、みにはキョトンとした超可愛い表情を浮かべてた。
それ以上に、俺の気持ちが少しだけ報われたような気がして、めちゃくちゃ嬉しくなった。
それ以来、定期的に口にしては満たされている。
この言葉が実現されることは、叶わないかもしれないけど。
せめて、ずっと誰のものにもならないで、俺の近くにいて。
メンバーの後藤威尊は、常に私を「俺のプリンセス」と呼ぶ。
カメラが回ってる時は、まあいい。
彼は王子様キャラを目指しているし、ジェントルマンなところはMINIを虜にしてるんだろうな、と思うから。MINIが私を通して彼の良いところをいっぱい感じてくれたら嬉しいし。
ただ、プライベートでも崩れないのが彼の謎ポイント。
今日の練習帰りだって、ね。
「みに~」
送迎車に乗る前、私にだけ手を差し伸べてくれた。
「……ありがとう、ありがとうなんだけど普通に乗れるよ?」
「みにが怪我するとかダメやし」
「そんなすぐコケないよ!」
「みにを心配してるっていうか、みにがどんな理由であろうと悲しい思いしたら嫌やねんな」
どこぞの王子様のセリフ。
しかも、威尊に似合っているのがすごい。
だからこそ、こんなすっぴんに練習着のメンバーじゃなくてMINIの子たちの前で言ってほしい。
「……え、なんか、もっと適当でいいんだよ?」
「うん?」
「プライベートだし、王子様の威尊じゃなくて普通の威尊でいていいのに」
「ようわからんけど、普通の威尊やで?このやり取り何回すんねん」
ケロッとしてるから素で優しいんだろうけど、むず痒い。
一体彼はどこまで優しい人なんだろうか。
Side:Takeru
大切な女の子には、うんと優しくしてあげたい。
そう思うことは、全く不自然ではないと思っている。
その思いが彼女に届いてないから、毎回「無理すんな」的なことを言われるんやろうけど。
最初の方はずーっと言われ続けるから「なんでこの子素直に受け取らんのやろ」とちょっと不満だった。
だけど、いつかキムがポツリと溢したんよね。
「素でみにが1番照れてるのって威尊だよね。いいなあ」
「え?」
「威尊にお姫様扱いされてるときが1番照れてるよ絶対」
「それはキムが赤ちゃん扱いするからやん。俺は逆にそのほうがいっぱい触れられるのから羨ましいけどな」
絶対自分なりの理由がある癖にそう言うキムは謎やったけど、その言葉が本当なら、めちゃくちゃ嬉しかった。
メンバーの誰かが分かりやすく独占欲を口にしても全く気付かない鈍感姫やもん。
なのに、ただ俺がお姫様扱いしただけで動揺してんねやろ?
そう思うと、頑なに素直に認めてくれないみにへの愛おしさが増してく。
なあ、みに?
ずっと、俺のプリンセスでいてよ。
いや、ずっと認めてくれなくてもいいけど、やり取りはずっとしてたいな。
メンバーの尾崎匠海は、私を「俺の光」と言っていた、らしい。
普段1ミリもそんな空気を出さないくせに、インタビューとかで急にそんなことを言い出すから、正直何考えてんのか読めない。
そして、問い詰めても「なんとなく」しか言わない。
光って、一体なんだろう。
底抜けにポジティブかって言われてもそんなことないしなあ。
むしろ、匠海に救われてばっかりだし。
「たくみ」
「ん?」
振り入れの休憩時間、床に座ってどこかを見てる匠海を呼んでみる。
「何考えてるの~?」
「え?」
「いや、なんか悩んでんのかぼーっとしてんのか中間の顔してたから」
「なんやそれ」
小さく笑って、隣の床をペチペチ叩いてる匠海。
従って隣に腰を落とせば、二カッと笑って小突いてきた。
「それアホ面って言ってるやん」
「言ってない」
「まあええけど」
「いいんだ」
適当だなあ。
この緩い感じが匠海っぽさで、良いところだけど。
「でもありがとな、みに」
「匠海をいじりにきただけなのに?」
「なんやねん。やっぱいじってたんかい」
「うん」
気遣って欲しくなくて言ったけど、それを全部分かった上で匠海もノってくれてるんだろう。
やっぱり匠海が“光”だと思うなあ。
Side:Takumi
みには、とんでもなく自分のすごさを分かってない。
眩しいくらい真っすぐに目標を見てて、何も考えてないように人に寄り添う。
そのくせに、自分が輝いていることに気づいてない。
そんなところが光、なんよなあ。
でもさ、光の近くに光じゃないもん置いたら、影ができてまうやん。
そう思うと、簡単にみにに近づいちゃいけない気がしてくる。
理人も言ってたけど、みにの誰のものにもならん感じってこういうとこから出てる気がすんねんなあ……
最近の理人は試行錯誤してそばにいられるようにしてるみたいやけど。
俺はあんまりできひんかもな。
なのに、みには自分から何でもないように近づいて勇気づけてくれる。
平然と優しさをくれて、前を向かせてくれる。
ほんますごいなあと思うし、憧れる。
そんな気持ちの反面、近づくのは怖い癖に俺だけにそうしててほしいなんて思うようになってしまった。
な、「そうやって照らすの、俺だけにしてくれん?」って言ったらどうする?
想像するだけで今の関係が崩れそうな気がして、すぐに頭の中に打ち消した。
でも、願うだけならきっと許される。
ずっと、俺を照らしててよ。
メンバーの西洸人は、私を「俺の仲間」と呼ぶ。
色んなメンバーが「俺の」から始まる括りをつける中で、1番まともだと思う。
オーディションのときから、同じ夢を目指して突き進むかけがえのない仲間だから。
「洸人」
次のCDに封入されるユニットセルカが洸人と一緒だったから、準備しようと声を掛ける。
「うぃ」
立ち上がった彼は、照れたように笑って歩き始めた。
「どこで撮る?」
「誰とも被んねえとこにしようぜ」
「うわ、それあり。MINIびっくりさせよ」
悪巧みは私たちの得意分野。
セルカはかなり自由だから、たぶん怒られないだろう。
そう考えた私たちは、メンバーはみんな室内で撮ると踏んで、屋上に来てみた。
「あれ、意外と過ごしやすそう」
「だな」
ササッと数枚撮って、なんだか名残惜しくなって2人で外の景色を眺める。
「なんか洸人って安心するよね」
隣から感じる人の気配にあてられて、いつの間にかそんなことを口走っていた。
「え?」
「みんな優しいけど、ほんとにたまーに、不思議なときあるから」
「ああ……」
納得した表情を見せた洸人は、ぽんと手を私の肩に置いた。
Side:Hiroto
えぐい束縛を隠して甘やかす柾哉、
推し目線に舵を切って恋心を消す雄大、
友達ポジで傍にいることを選んだまっきー、
頑なに他の男との接点を消す大夢、
想いをぼやけた言葉に留めるフェンファン、
独占欲全開で実は1番攻めてるたじ、
自分なりに見出した共通点に縋る迅、
ふざけたフリで彼氏面する理人、
自然な姫扱いで照れさせて喜ぶ威尊、
尊敬しつつ自分だけがいいと願う匠海。
みにに抱く思いの発露の仕方は、十人十色。
そんなメンバーを見て、何もできない俺が1番ダサい。
だってもう、俺の感情自体が訳わかんなくなっちゃってるし。
恋だかわかんないくらい好きだし愛してる。
友だちとして横にいても楽しいし、ステージに立つみには推し。
知らん奴と話しててほしくないし、憧れの気持ちもある。
全員の想いに共感するし、全員がその表現の仕方を結論付けてて羨ましくもなる。応援もしてる。
一番どっちつかずな俺は、揺るぎない仲間という事実に安堵しながら、自分らしさを探してる。
でも。
それでみにが落ち着くんなら、それでいっか。
きっとメンバーみんなが大きな愛をぶつけたら、いつか潰れてしまうから。
だったら俺は、みんなをセーブする方でいいよ。
だからずっと、INIでいて。
