海南
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浮かれてちゃダメってわかってても、
私だけって思ってても。
「何が欲しいかな…。」
「私に聞かれても。」
12月、華やかな街の雰囲気とは裏腹に迫るセンター試験。やっぱりイベントごとは大切にしたいし、なんなら一緒に勉強するのでも構わない。浮かれてるのは自分だけでもいいから、同じ時間を過ごしたいの。
「本人に聞けばいいじゃん。」
「それが出来ないから相談してんじゃん。」
友人はため息をつくと、あんたは何が欲しいのよ、と尋ねてくる。
「なにか…おそろいのものとか?」
「たとえば。」
「マフラーとか…。」
「じゃあそれでいいじゃん。」
「それでいいって…なんか恥ずかしいよ。」
「はあ?でももらったら嬉しいんでしょ?」
「それはもちろん!」
正が選んでくれただけでも嬉しいのにお揃いなんてそんなの、考えただけでどきどきする。
「じゃあ…あ、ほら!武藤、駅まで自転車乗ってるって言ってたじゃん。手袋は?」
「それいいかも。寒い寒いって文句言ってる。」
でもあの冷たい手が好きだったりもする。朝学校に来る時、バス停から歩いていると後ろから自転車で追いついてきて、あっためて!なんて手を握ってきた時の温度には驚かされる。けど、それさえ愛おしい。
それがなくなるのは惜しいけど、それ以上に真っ赤な指先が気の毒で仕方がない。
「決めた。手袋。」
「良かったね。」
「うん。…あ、予備校の時間だ。行くね。」
「気を付けて帰るんだよ。」
「ありがと。ばいばい!」
「ばーいばい。……ほんと、揃いも揃って世話がやける。」
週末、気後れしながらも百貨店に足を踏み入れる。店内の眩しい装飾と文字通り桁違いの値札に閉口した。高校生の来る場所じゃなかったかもしれない、そんな後悔を抱きながら売り場を眺める。
そしてふと目に留まった、よく見知った後ろ姿。
「……正?」
「……は?」
振り返りこちらを認めると、ぽかんと口を開けた。彼の目の前にはいろとりどりのマフラーが陳列されている。
…マフラー?
「なんで依紗が…」
「え!あ!奇遇だねえ!どうしたの?流石の武藤くんも寒さには敵わないのかなぁ!」
「なんだよそれ、落ち着けよ。」
早口にまくし立てる私の肩に手を置いて覗き込んでくる。近い近い近い!
「ふふ…、あーあ!見られちまったー!」
「え?」
「クリスマスプレゼント買いに来たんだよ。マフラー欲しいんだろ、おそろいの。」
「は、はあ!?」
どうしてそのこと知ってるの、そう言いかけてやめた。すぐに答えがわかったから。
「裏切り者……っ!」
「おいおい、物騒なこと言うなよな。」
明るく笑う正は私の背中を軽く叩くと、棚に向き直る。
「まあいいや。予定は変わったけど、一緒に選ぼうぜ。時間あるんだろ。」
「う、うん…。」
「クリスマスプレゼントはお前でいいからさ。」
「うん…。………は!?」
「返事したな、俺忘れねえから。」
「待った待った!」
「なしなし。キャンセル不可。」
浮かれてるのは自分だけじゃなかった、彼も楽しみにしてたんだ。そう思ったら無性に嬉しくて、彼が気付くまでマフラーを眺めるその横顔をずっと見つめていた。
きみとはじめるメリークリスマス
繋がった指先から熱が溢れる。