海南
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それを言ったらおしまいだ。
連日の雨が嘘のように晴れた。天の川をおがむことはできなかったが、久しぶりの晴天に胸がすく思いだった。否、明日までの期末試験に陰鬱とした気持ちは拭い去れず、どちらかというとまだまだテンションは低いままだ。
「まだ残ってる。」
「日直なの。」
あの日、唐突に私の心に入り込んできたこの男はこちらの気を知ってか知らずか綺麗に口角をあげて微笑みかける。恐ろしい、それだけで陰鬱としていた気持ちは突如晴れ渡るのだ。
「黒板、消すよ。」
「いいよ。…と言いたいところだけど頼も。高いところ重点的に。」
「全部消すから。」
几帳面に消していく神の背中を眺める。スポーツマンと言うにはやや細身な気もする。姿勢は良く、髪の毛も清潔感のある長さだ。手が大きい、指が長い、それから、
「見過ぎ。」
「ごめん、つい。」
顔が良い。その笑顔がたまらない。
「日誌は書けたの?」
「うん、書けた。」
お疲れ、と言いながらチョークの粉を払う。どうして私立のくせにチョークなんだろ、ホワイトボードの方が良くない?ランニングコスト?よくわからないけど。そんなことを考えながら、この口は全く関係のないことを宣うのだ。
「神は七夕何かお願いごとした?」
この通り。神は小動物のような可愛らしい目をなんどか瞬かせるとふきだした。
「なにそれ。」
「一応そういう日でしょ。」
「そうだっけ。一年に一度、天の川に橋がかかって織姫と彦星が会える日じゃなかった?」
「あの雨じゃその橋もかけられないね。」
「可哀想な話だな。」
少しでも神と話していたいだけなんだ。笑顔はたまらなくきれいだし、声は耳を疑うほど美しい音色を奏でる。惚れた弱みだ、仕方がない。
「…インターハイ優勝できますように、かな。」
「いいじゃん。叶うよ。」
「でも、昨日の雨じゃ橋はかけられないんだろ。」
「空の上は晴れてるから大丈夫でしょ。」
「身も蓋もないな…。」
「大丈夫だよ、神頑張ってるんだから。遅くまで練習してんじゃん。報われなかったらうそだよ。」
神はこちらをみて黙ってしまった。何か気に障ったのだろうか。真剣な眼差しに居心地の悪さを感じていると、ふ、と表情を緩ませた。
「ありがとう。徳重が言うなら、大丈夫かな。」
まだ高い太陽が彼の笑顔を鮮やかにうつしだす。だめだ、まただ、また、胸の奥がくすぶるようなこそばゆい感触でいっぱいになる。
「神なら、大丈夫だよ。」
上手に笑えたかはわからない。でも、私の言葉にすこしでも力があるのなら、届け、とどけ
プロメテウスに告ぐ
もし、足りないとしたら運だけだよ。
そう言ったら、声を出して笑った。