翔陽
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「徳重が協力してくれるなんてなぁ。」
「折角だから盛大に祝ってあげよ。」
藤真が楽しそうに笑う。
彼の隣の席になったのは、この日のためなのかも知れない。
「よっ!ドッキリ奉行藤真!」
「…悪ノリが過ぎるんじゃないか。」
「やめてやれよ。」
高野の誕生日をドッキリ仕立てで祝うらしく、協力することになった。藤真の提案に乗り気な永野に対し、長谷川と花形は言うことがまともだ。
「じゃ、手筈としては…。」
彼らは高野が私を好きだったことも、告白したことがあるなんてことも知らない。それにしても、そのシナリオはなかなかえぐい。…協力する私も大概だけど。
「じゃ、頼んだぜ、徳重。」
「まかせて。」
摩天楼軍団に囲まれての作戦会議終了。本当にでかいな、こいつら。
西日が差す放課後、私は席について待つ。
あの日とよく似た景色だな。心持ちは全く違うけど。
「ほら高野、行けって!俺の顔立てると思って!」
「やめろよ、誰なんだよ、もう!」
教室の扉が開く。高野は藤真に押し込まれるように入って来る。藤真はにやにやと笑いながら扉を閉めた。
高野は扉の向こうの藤真に何か言い掛けてやめ、こちらを見た。私と目が合うと、思い切り後退りした。勢いよく扉にぶつかる。
「いてっ!」
「馬鹿だなー…。」
「な、な、な、なんで徳重がいるんだよ!ええ!?なに!?」
両手で後頭部をさすりながら、扉と私を交互に見る。いいから座りなよ、と私の前の椅子を示すと、恐る恐る近付いてきて、私に対して横向きに腰を下ろす。半身を捻ってこちらを見た。
「…な、んだよ、話って。」
「私さ。」
「高野のこと、好きになったみたい。」
高野は目をかっ開いて、その後何度か瞬かせた。鯉みたいに口をぱくぱくさせている。驚く、という感情をここまで体で表現出来るのはちょっとした才能かも知れない。高野、あんたすごいやつだよ。
…でも、ほんと、ごめんね。
「お、俺…は……。」
「たかのぉおおおおおおお!!!!」
「ハッピーバースデエエエェエエ!!!!」
扉を開けてクラッカーを鳴らしながら藤真と永野が入って来る。その後ろを微妙な表情をしながら長谷川と花形がついてくる。
こんなの可哀想すぎる。
「ドッキリでしたー!あはははは!」
「いい夢見れたかぁ!?」
高野の想いも、辛さも、全部知ってるのは、私だけ。
「なん…なんなんだよ…!」
高野は座ったまま頭を抱えている。
ごめんね高野。
残酷だよね。
でも、私、こうでもしないと伝えられなくて。
「あのね。」
騒ぐ彼らを尻目に高野にそっと耳打ちする。立っていたら絶対に届かないけど、座っているから難しいことじゃない。
同じように、私の気持ちも届くといいな。
あのね。ほんとうは、ね。
(あの日からずっと好きだったの。そう言ったら驚く?)
(ねえ、まだ間に合うかな。)
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