翔陽
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
選手権監督とか言われちゃいるけど。
「藤真おはよ。朝練じゃないの?」
「お、おお…はよ、徳重。ちょい忘れ物。」
好きな女子相手に、会話がまともに続かない。
不器用な愛の話
バスケ部の連中じゃダメだ、色恋沙汰に関しては参考にならないに違いないし、そもそもこんな話をしたくねえ。あーあ、情けねぇ。
「ねえ藤真、ここ分かる?今朝から考えてるんだけど、どうもひっかかっちゃって。」
「…え?あ、ああ。」
朝練が終わって席に着くなり、隣の席の徳重がこちらに話し掛けてくる。昨日の授業のやつか。
「これは、」
幸い俺の分かる範囲だったから説明することが出来た。徳重は合点がいったようで、安堵の息を吐いて笑った。
「やっぱ数学は藤真に敵わないなぁ。花形もだけど、いつ勉強してんの?」
「そりゃあれだ、元が違う。」
「はいはい、羨ましいことで。」
楽しそうに笑うその笑顔が好きだ。屈託無くて朗らかで。
こいつの事は、試験の順位で花形の次くらいに常に名前があるのを知っていたし、どんなガリ勉女だよ、とか思ってた。
なんてことない、一目惚れだった。
3年になって同じクラスになって、まず、可愛いと思った。互いにクラス委員長なるものになり、話してみたらますます魅力的だと思った。俺が部活で会議に出られなくても翌日には事細かに報告をしてくれ、仕事における責任感の強さを感じた。
「今日、また会議あるけど出られそう?体育祭の役割分担決めるみたいだから来た方が良いかも。」
「おう、出る。部活は花形に任せりゃいいから。」
そう言って振り返ると、花形が片手を軽く上げた。んだよ、聞いてたのかよ。
「思う存分どうぞ。」
…野郎、見透かしてやがるな。透だけに。あーくそ!
資料にメモをしながら、生徒会の役員の話に耳を傾ける。とは言っても正直退屈で、カチカチとシャーペンの芯を出しては入れるを繰り返しながら欠伸をした。
隣を目だけで見ると、徳重はシャーペンの背を顎につけて何か思案している様だった。知的な横顔に見惚れそうになる。左手はだらりと垂れて、時折握ったり開いたりしている。それは癖なのか?
…ああ、そうだ。
この時ほど左利きであることに感謝したことはないかも知れない。メモを取る左手はそのままに、右手を伸ばす。
一度躊躇ったが、そっとその左手に触れ、指を絡め、繋ぐ。徳重はこちらを振り返ろうとしたがすぐに前を向き、頬を少し染めて、微笑んだ。繋いだ手を、握り返して。
前を見たまま俺も微笑んで、もう一度力を込めた。その手は少し冷たかったけど、じんわり温まっていくのが分かった。
好きだよ、徳重。
(上手くいったのか藤真。)
(お前は本当に透だな。)
(……はあ?)