湘北
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
さむいさむい冬空の下、北風から逃げるように飛び込んだコンビニで肉まんを買う。
「ひゅー!最高!」
そんなことを言いながら外にでると、見覚えのあるデカブツが、マフラーに顔を埋めながら自転車を停めていた。
「あっれ、流川じゃん。久しぶり。」
「…。」
盛大なお腹の音に依紗は目を見開き、笑った。
「っはは!!なにそれ、ご挨拶だなー。」
中学の同級生はじっと依紗の手元を見詰めていた。それに気付き、依紗は尚も笑う。
「はら、へってる?」
「へってる。」
「ん、あげる。」
そう言って肉まんを半分に割ると差し出す。流川はそれをじっと見詰めるが手は出さない。
「なに、あんまん派?」
「ピザまん派。」
「じゃあもうあげません、食べます。」
そう言って依紗が手を引っ込めようとすると、流川はその手首を掴み、肉まんを自身の口元へ運ぶ。
「んめぇ。」
「…ちょ、ちょっと…なにしてくれてんのよ…!」
「くれるんだろ。」
「ピザまん派なんでしょ!」
「どっちでもいー。徳重がくれるんなら。」
「どういう意味よそれ。」
依紗が流川を見上げたまま睨むと、流川は、ふん、と鼻を鳴らす。
「どあほう。」
「なんですって!?」
「にぶい。」
「終いにゃ怒るよ!?」
「もう怒ってる。」
「腹立つ!!離せ!!」
依紗は掴まれた腕をなんとか振りほどこうとするが、びくともしない。流川は溜息をつくと肉まんを取り上げ、腕を離す。
「サンキュー。」
「…最初から素直に受け取りなさいよ。」
むしゃむしゃと肉まんを頬張る流川を見て、依紗は溜息をつきつつ、その姿に微笑む。
「で。」
「なに。」
「どうなんだ。」
「なにが。」
「俺、お前のこと好きなんだけど。」
「……はぁ?え、あ、そういう意味だったの!?」
「…にぶい。」
「分かりづらいのよばか!」
(わかる奴いないわよ、フツー!!)
依紗は、ばし、と流川の腹のあたりをはたく。流川は少しむせる。
「食ってる時に腹殴んなよ。」
「油断すんな。」
「返事聞かせろ。」
「好きだバーカ!!」
「声がでかい。」
流川は屈むと依紗にキスをした。そして肉まんの最後の一口を放り込むと、帰るぞ、と言った。
「私まだ食べてない。」
「歩きながら食えば。」
「お行儀悪いよ。」
「そのつもりで買ったんじゃねーのか。」
「…そうだけど。」
自転車のスタンドを上げると、引いて歩き出す。依紗は慌ててそれを追い掛けた。
北風と肉まん
(肉まんで陥落したわけじゃねーよ。)