湘北
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のまれてしまわぬように。
おぼれてしまわぬように。
「はあ!?マジかよありえねー!」
「声大きいのよ、馬鹿。」
人がまばらな公園の桜の下、ビールを片手に同期の三井がこちらを指さして笑う。
ありえねえって言いたいのは私の方だ。付き合っていた男の人に妻子がいたなんて。本当にありえない、本当に笑えない。
「何でわかったわけ?」
「泊まりで遠出しようかって話を出したらやたら渋るから…」
「から?」
「尾けた。」
「ありえねー!!」
「うるさい!」
年度末の処理業務を終えた体にアルコールはよく回るらしい。私も三井も多分いつもより声が大きい、だって道ゆく人がちらちらとこちらを見るんだもの。
「もう俺にしたら?」
「くそほどチープな口説き文句だわ。ありえねー!」
「あははは!」
ビール足んねえ、と私の手元からビールを取り上げてあおる。チープもここまでくると笑えてきてしまう。ありえねー通り越してありえねー。ん?なんだ?わけわからんな。
「返してよ!」
「間接チューな。」
「中学生!?ありえねー!」
要らねーよばーか、と悪態をついてやるとビールを飲んだ時の独特の吐息が鼻をかすめた。三井の顔が近い。
「要らねえの?本当に?」
私が答えに詰まっていると、ビールの話だよ、と含みのある笑みを浮かべた。うそつき、そうじゃないんでしょ。
「……俺は欲しいけど。もらっていい?」
シャツ越しの体温がもどかしい。公園にいることも忘れてしまいそう。
小さく、いいよ、と呟いた。
夜桜には気を付けて
彼ならきっと大丈夫。
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