【三井】もしも運命の人が
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願いがかないますように。
かねてより約束していた箱根旅行。春休みと言うべきか迷う2月の下旬、話し合って決めた閑散期の箱根はそう大して閑散としているわけでもなく、観光地であることを実感した。
矢立の杉を見上げれば清浄な気持ちになった。89段の階段を上った時は、厄落としの厳しさに明音は顔をしかめた。そんな彼女をみて三井はからかうように笑った。繋いで、時に力強く先を促してくれるその手が明音を励ました。
九頭龍神社新宮は一際賑わいを増した。誓願符に願い事を書いて、成就水盤に注いでいる水に流す。すると誓願符が溶け、納められるらしい。笑い合って願いを込めた。
「何書いた?」
「言いません。」
「はいはい。」
溜息まじりに笑う三井を見上げて、明音もひとつ息をつく。
(ずっと、一緒に。…同じ気持ちだと、いいのだけど。)
言葉にするにはあまりにありきたりで、しかし切実なその願いを託した符は、ちゃんと届くだろうか。そんなことを思いながら、愛しい横顔に笑いかけた。
「明音、そんなに珍しいか。」
「えと、はい。」
レンタカーを運転する三井の助手席でそわそわと明音は辺りを見回す。見慣れない景色に心が躍るも、落ち着かない気持ちの方が大きかった。海岸沿いの道は瀬戸内海と似たようなものだと思っていたけれど、別物だった。あるいは、一緒にいる人間がそうさせるのか。
「ミーアキャットみてえ。」
「ええ!?」
「きょろきょろとせわしねえな。」
「すみませんね…。」
「褒めてる褒めてる、カワイイヨー。」
「気持ちこもってませんよー。」
前を見たまま口角を上げる三井を軽くにらみ、明音はパワーウィンドウに肘をつく。神社で買った寄木細工のお守りを握りしめた。鞄につけたそれは三井と揃いの物だった。
「疲れてねえ?もう着くからな。」
「階段がきいた。」
「鍛え方が足りねえよ。」
「一緒にしないでくれませんか。」
旅館に着くと、早速温泉に浸かった。主目的といっても過言ではないそれは疲れた体にしみわたるようで、明音は思わず感嘆の声を上げる。ロビーには一足先に上がっていた三井が片手を上げた。
「……裾、」
「少したりてねえよな、笑える。」
「お似合いです。」
「にやついてんじゃねえよ。」
三井は鼻を鳴らして、行くぞ、と手を差し出す。明音はなおも笑いながらその手を取って歩き出した。
「めっちゃうまかった。」
「流石湘南、海鮮最高でしたね…!」
刺身の盛り合わせや鉄板料理など、地元の食材をありとあらゆる方法で以って堪能した。明音は敷かれた布団に横たわり、大きく深呼吸した。
「幸せ〜。ここにして良かったですね。」
「探した甲斐あったな。」
同じように横になった三井が目を細める。手を伸ばして明音の顔にかかった髪をすくい上げる。
「いつ、帰省すんの。」
「3月の終わり頃に一度。三井さんは?」
「俺は別に…。高校の部活の集まりがあるとかないとかいう話が出てるけど未定。」
「引っ越しは?」
「ああ、それは3月の下旬に。」
荷物まとめなきゃな、と仰向けに転がった。そんな三井を眺めて、明音は微笑んだ。間接照明の元で照らされたその表情は、どこか艶っぽさを感じさせる。
「社会人か、なんだか少し不思議な感じ。」
「そうかぁ?」
「学生から見たら。…学生の2学年も結構違って見えますけど。」
「それはわかるかも。でも、社会人になったら今度はみんな一緒くたなんだろうな。」
「そうなの?」
「知らねーよ。」
「なにそれ。」
取り留めのない話をしながら笑い合っていると、三井が不意に明音の手を握る。自身の方へ引き寄せ、手首に口付けた。
「……いい?」
なにが、などと野暮を返すことなく、明音は黙ってうなずいた。互いに体を起こすと、身を寄せ合い、唇を重ねた。
角度を変え触れるだけの、やがてどちらともなく舌をさしだし絡め合う。三井が明音の口内へ舌をひそめると、裏側をなで、軽く吸い上げる。
衿元から手を差し入れ、肩をあらわにされたところで明音が体を離そうとする。それに気付いて三井は首を傾げた。
「あの、早くない……?」
「そんなことねえよ。」
「ちょっと待っ」
「待たない。……待てない。」
衿元を大きく開けられ、明音はシーツに押しつけられる。彼女の抗議は聞き入れることなく、三井はその体をてのひらでたどっていく。触れられた箇所から熱を持っていく。帯が解かれ、いよいよ正面があばかれるところで明音が待てをかけた。
「私ばっかり!」
「うるせえな…」
「…寿さんも。」
「じゃ、脱がせて。」
明音はためらいながらも三井の帯を解く。同じように衿元を開き、袖から腕を抜かせると、三井はこそばゆそうに笑った。
「明音も。」
そう言って手を伸ばし、丁寧に浴衣を取り払う。明音は三井の背中に手回し、抱きしめる。
「あったかい。」
「…ん。」
口付け合い、三井は明音の下着の留め具を外す。シーツに寝かせ、下着を布団のかたわらに置くと、ゆるやかに揉みしだく。明音の口から小さく声が漏れると、その先を親指でなでる。逃げるように背を向けるのを阻むように、今度はそこに口付けた。
「あっ……は、」
甘やかな声に酔いしれながら、舌で弄び、吸い上げる。反対も同じように舌を施せば充血したそこはかたくもちあがる。
「ひ、さしさ…。」
「もうそんな余裕ねえの、大丈夫かよ。」
笑いながらキスをすると、唇を割り、口内を愛する。手は下腹部をなぞり、下着の上から入り口をなでた。明音は体を反応させる。三井はなんどもいったりきたりを繰り返した後、下着を下げて足から抜くと、じかに触れた。
「っ、ああ…!」
「痛い?」
「いたくは、ない、けど…っあ、」
「ならいいな。」
三井が指を入れると、明音は思わずシーツをかかとで蹴った。痛みではなく、不用意な刺激に対してすこし敏感になっていたためだった。
「ああっ、あ…っ」
「いつもよりいい?」
「わかんない…っ」
「感じる?」
「ん…っそう、かも…っ」
非日常が醸す空気にあてられたせいか、明音は指の動きに合わせて腰をわななかせた。息を荒くしながら三井の肩を掴む。
「だめ、あんまりもたなくて、わたし…っ」
「…欲しい?」
「は、い…。」
喉の奥でくつくつと笑う三井を、明音は恨めしく見上げる。その視線をものともせず、三井は指を抜くと、まってろ、と声を掛ける。
「入れる。…途中でやめねえから。」
いつもと違う空気にあてられたのは明音だけではなかった。三井は自身を入り口にあてがうと、ゆっくりと押し入った。思いの外すんなりと受け入れるも、圧迫感は拭えない。
「きっつ…。痛くねえか。」
「はい…っあ、だい、じょうぶ…。」
おさめきると、口付け合う。ゆっくりと動けば、それに合わせて明音が声を上げた。甘美なそれは時折悲鳴のようで、三井が気遣わしげに見下ろすと、明音は微笑んで首を横に振る。
大丈夫だから気にしないで。
三井は歪んだような笑みを浮かべると脚を持ち上げ、奥をなでるようにゆるやかに動く。一際甘やかな声を上げた明音の膝の裏に口付ける。
「…ここが、いい?」
「わかんない、でも、いつもとちがう…!
「じゃ、いいんじゃねえ?」
入れるときははやく、抜くときはゆっくりを繰り返す。明音はせりあがる波から逃れようと、シーツを握りしめた。
「あ、あ……っ!ああ!」
「はは…、すげーいいんじゃん。」
「やだ、へんになる…っ」
「なっちまえよ。」
「ひさしさ……っ!」
「愛してる、明音。」
「私も、あ、あぁっ……あ…!」
細く、高い声で達する明音の収縮に促され、三井も最後を迎える。脈打つその感触に明音はもういちど体をふるわせた。繋がりを解く前に、三井は明音を抱き締める。
「……私も、愛しています。」
明音が、最後まで言えなかったその言葉を呟くと三井は一層力を込めた。
「愛してる。」
見つめ合い、唇を重ねた。気怠く体を横たわらせる明音に三井は微笑みかけ首を傾げる。
「このまま寝るか?」
「ううん…ちゃんと着なきゃ。」
「そうだな、目の毒だ。」
「もう…。」
明音が体を起こそうとするのを三井が支える。散らばった下着や浴衣を集めると、緩慢ながらゆっくり身に付ける。その所作ひとつさえもどこか愛らしく、三井は後ろから抱きしめた。
「…ねえ、着られないんですけど。」
「いいよもう、てきとうで。寝ようぜ。」
下着を身につけ浴衣を羽織っただけの三井は甘えるように、明音の首元に顔を埋めた。明音はため息をつく。
「風邪ひいちゃいますよ。」
「敬語はいつやめる?」
「ええ?急になんですか。」
「もういいじゃん、疲れねえ?」
「…少しずつ。」
「ん。」
三井は顔を上げると明音の顔を覗き込むようにしてキスをした。
「寝よ。」
「…はい。」
明音は観念すると三井に促されるまま、身を寄せる。腕の中に収まるとその胸に顔を埋めた。
「…好き。」
「俺も。」
三井は明音の頭頂に口付け、目を閉じる。やがて聞こえてきた寝息に笑んだ。
「おやすみ、明音。」
髪をなで、自分も間もなく眠りに落ちた。互いの心音に身を委ね、深く眠った。
ねがい、おもい、つながって
このままずっと、2人一緒に。
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