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ただただ素直になれない。
「トリックオアトリート!」
「徳重をやろう。」
「ひどい!罰ゲームじゃん!」
「徳重、言い方言い方。流石の俺も傷付く。」
ハロウィン当日、高野が藤真におきまりのあれを投げかければ私をくれてやろうと言う。咄嗟に罰ゲームだなんてわめいてしまったが何を隠そう私は高野のことが気になっていて。恥ずかしさ100%その勢いで剛速球を返してしまった。
「い、いや!ごめんごめん!お菓子かいたずらかってやつでしょ。藤真も何言ってんだか、」
「徳重、お前駅前のクレープ屋行きたいつってたじゃん。おい高野、クレープでいいか。」
「ごめんね藤真くん、君何言ってんの。」
「ほんとだよ。意味わかんねーわ。」
「徳重がクレープおごってくれるってよ。よかったな高野。」
「ば、馬鹿じゃないの。」
藤真が意味の分からない提案をするのでため息だ。……嘘ですそれ口実に一緒に行けるんですよね、ありがとうございま、
「おごるおごらないは置いといて、徳重あそこ行きてーの?」
「う、うん、まあ、そう……。」
「いいじゃん。帰り行こうぜ。」
「でも高野まだ部活やってるんでしょ。」
「今日は運動部長全体会議で休みでーす。」
そう言って藤真は私の肩を叩くと高野の方を見上げる。
「トリックなのかトリートなのかわかんねーけどこいつで手を打ってくれよ、高野。」
で?辞書がないんだっけ?と高野に電子辞書を差し出した。高野は、さすがキャプテン!などとはしゃいでそれを受け取ると軽やかに去っていった。
待ってよ、圧倒的トリートでしょ。何をどうしたらトリックになるのよ、失礼しちゃう!イケメンだからって調子に乗るな!あ、うそうそ。感謝してるって!
「そういうわけなんで。頑張れ。」
「やっば……めっちゃかわいい!しかもおいしい!」
「すげえうまそうに食うのな。」
「あ、ははは……そう?」
ハロウィン仕様になった期間限定のメニューが気になっていたものの、仲の良い友人たちは通学手段が自転車だったりバスだったりと方向が違うので誘うに誘えなくて、かと言ってひとりで来るのもなぁと迷っていたらあっという間に日が過ぎていた。縁がなかったかなーなどと思っていたが、こんな形で来ることになるなんて。
「ごめん、出させちゃった。」
「なあに、いいってことよ。」
店の中は満席だったので外のベンチで並んで座る。この微妙な距離が私たちの心理的な距離なのかもしれない。ああやだどうしよ、沈黙だ!何かしゃべらなきゃ、なにか……
「徳重って藤真のこと好きなんだろ。」
高野のその一言に凍り付く。そんな私のことなんかお構いなしに言葉が続いた。
「協力してやるから相談しろよな。あいつ忙しいしあんま相手してくれねーかもしんねーけど話くらい聞いてやるから!」
……そっか。そうなんだ。高野はずっとそう思ってるんだ。じゃあ私の気持ちはどうしたってなにしたって届かないじゃないか。
違うよ高野、そうじゃないよ。私はこうやってささいなことでも付き合ってくれて、どうしようもない話題で一緒に笑ってくれる高野がいいんだよ。
と、そう言えたらどんなによかったか。
「なんでそーなるの……」
「ん?」
「……人類みな藤真を好きになると思わないでばか!!!」
素直になれない自分がきらいだ。大嫌い。
「馬鹿なのはお前だろ。こうやって俺に泣きついて来るからそんなこと言われんじゃん。」
「でも女子誰も取り合ってくれないもの。高野を好きだって言っても冗談にしかとらえてもらえない。」
「そんな評価なの、あいつ……。」
さすがに可哀想だろ、と呟く藤真に苦笑いしてしまう。
あんな風に言い捨てて逃げ帰ってしまい、それ以来うまく話せなくなってしまった。避けてしまう。こんな風になりたかったわけじゃないのに。
あの日はごめんね、それでいいのに。難しく考えなくてもいい。今まで通りよろしく!って小突けばきっと元通りだ。
「そんなに好きなの?」
「そーだよ、好きだよ。」
「高野のことが?」
「高野が好きなんだって。」
「ならそう言えばいいんじゃねえの。」
「ねえ、藤真って恋愛したことある?」
「あるだろ、人並みに。」
「あるだろ、って何で他人事なのよ。簡単に好きとか言えるわけないっての。ましてや勘違いされてんのに。」
「そーだな。」
「はぁ……。愚痴に付き合わせてごめんなさいね。部活頑張って。」
棒読み、なんて笑う藤真を置き去りにして教室から出る。もうどうしようもないところまできてるんだから、どうにか前までのところまで関係を修復させなくちゃ。そんなことを考えながら帰路についた。
「盗み聞きはどうかと思うけど。」
廊下の窓を開ければ高野が座り込んでいた。どこから聞いてたのか尋ねれば、女子が取り合ってくれない、の辺りからだと。結構前じゃねえか。
「あいつもなんで高野が居ることに気付かないかね。」
「さすがにばれると思ったけどさっさと帰っちまった。」
「声かけろよ。」
「かけらんねえよ……。」
高野はそう言って立ち上がった。しょうがねえな。
「今日、遅れてもいいから。」
「はあ?」
「荷物置いてっていいぞ。部室まで運んどいてやる。」
「……。」
「行けって。まだ間に合うだろ。」
少しためらったが鞄を床に置いて、高野は走っていった。
「さて。俺も行くかな。」
言ったからには運んどいてやるしかない。人の惚れた腫れたに首突っ込んだって良いことひとつもないのはわかっているのにああいうのを見ると放っておけない。高野もはっきりしないし徳重 は素直じゃねえし。どう見たって両想いなんだよバーカ、見てるこっちが恥ずかしいっての。
30分しても戻らなかったらペナルティだな、どうしてやろうか。そんなことを考えながら歩いていると花形がいた。事情を話せば呆れたように笑った。
「こーいう青臭いのが似合うよな、高野も徳重も。」
あがいても届かない
でも、届けたい。