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「後生だから!!!」
薬学部棟前テラス、悲惨な国試過去問の結果を前に南は絶句した。叩き出した張本人は平伏さんばかりの勢いで頭を下げている。この光景は一体何回目か。
「お前のそれ何回目や。」
「本当に…わかんないんだよ…教えてよ…臨床系は苦手なんだって!このままじゃ足切りされる!進級できない!」
「……わかったから、じゃあ週末うち来」
「おう、なにやってんだ。」
ひょっこり顔を出したのは経済学部に籍を置く三井だった。その声に依紗は顔を上げ、首を傾げる。
「三井じゃん、なにしてんの?」
「3限休講になってよ。お前3限ないんだろ、昼メシがてらちょい付き合え。」
「アホ、こいつはいまから国試対策や。邪魔すんな。」
「え?いまなの!?」
「鉄は熱いうちに打たんと。」
「さっき週末って」
「週末も、や。」
「横暴だなー。んな詰め込んだってすぐ抜けてくって。」
「なんだよなんだよ雁首揃えて。なに企んでんだよ、俺も混ぜろ。」
「げ……」
三井の後ろから遅れて顔を出した藤真に、南は眉間のしわをさらに深くした。そんな南の様子はお構いなしに藤真は依紗の隣に座る。三井もその向かいに腰を下ろした。
「よお藤真。聞いたか、休講。」
「は?儲けた。徳重、メシ食いに行こうぜ。」
「それがよ、南と仲良く国試対策だと。」
「はあ?メシくらい良いじゃん。おい南、お前普段こいつのこと独り占めしてんだろ、昼休みと3限くらい解放してやれよ。」
「ひとりじめってなによ、馬鹿じゃないの。」
依紗は笑いながら、まあ成績優秀な南烈大先生を独り占めさせてもらえるなんて光栄の極みよね!などとテーブルを叩いた。笑い方が下品、と藤真がその頭をはたく。南はため息をつくと腕を組んだ。
「進級かかっとんねん。次の模試で指定の点数取らへんと5年になれんからな。」
「そーなの!わかる!?危機!絶体絶命!君たちみたいに内定もらってるやつらとは違うの!でもごはんくらいよくない!?いいと思います!先生、行きましょう!」
「やかましすな。学食でええわ。」
すると藤真が思いついたように、そういえば、と口を開く。
「エッグベネディクトの食える店が近くにニューオープンしたってよ。お前食いてえっつってたろ。」
「エッグベネ…?なんだよそりゃ。」
「しょっぱいパンケーキだよ。」
「ぞんざいすぎでしょ、バチ当たれ。」
三井が首を傾げると藤真は簡潔に答える。その回答に依紗が藤真を睨んだ。三井は頭の後ろで手を組むと椅子の後ろに重心をかけ、面倒臭そうにため息をついた。
「ラーメンでいいだろ、ラーメン。俺ラーメン食いてえわ。」
「じゃあ1人で行けよ。」
「時間の無駄や、学食。」
3人の意見が割れたところで依紗が答案用紙を片付けながら鞄を覗き込み声を上げる。
「あ、待って!家に財布忘れた!私帰って食べてから4限出直すわ!またね!」
片手を上げて風の如く走り去る依紗の後ろ姿を3人は呆然と見送る。ややあって、三井が口を開いた。
「藤真、あいつ高校ん時からあんななの?」
「そーだな、相変わらずけたたましい限りだよ。」
南が首の後ろをかきながら立ち上がるのでそれを制するように藤真が腕を掴む。
「薬学部棟の学食うめえんだろ、案内しろよ。」
「新しいもんな。ラーメンもあんの?」
「どんだけラーメン食いたいねん、あるわ。行くならさっさと行くで。」
「で?週末は南の家行きゃいいわけ?」
「は?」
三井の言葉に南が怪訝な声を上げる。それにすかさず藤真が反応した。
「なんだよそれ。」
「国試対策するのに週末なんとかって。」
「抜けがけすんなよ南、行くわ。」
「ホンマにめんどくさいな。こっちは進級と国家試験っちゅーもんが関わっとんねん、俺らの未来を邪魔すんな。」
「引っかかる言い方すんなよ。」
腰を上げて薬学部棟の自動ドアをくぐる。1階奥の小洒落た学食はカフェのような内装で、学生たちで賑わっている。
「やらしーこと考えてんじゃねえの。」
「それは三井な。」
「アホらし…。」
「鍋する?」
「は?」
「たこ焼きでもよくね?」
「やめろや。」
トレーを2人に押し付けながら南は本日何回目かわからないため息をつく。心底面倒くさい状況に内心頭を抱えた。
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風は誰にもつかめない
薬学部棟前テラス、悲惨な国試過去問の結果を前に南は絶句した。叩き出した張本人は平伏さんばかりの勢いで頭を下げている。この光景は一体何回目か。
「お前のそれ何回目や。」
「本当に…わかんないんだよ…教えてよ…臨床系は苦手なんだって!このままじゃ足切りされる!進級できない!」
「……わかったから、じゃあ週末うち来」
「おう、なにやってんだ。」
ひょっこり顔を出したのは経済学部に籍を置く三井だった。その声に依紗は顔を上げ、首を傾げる。
「三井じゃん、なにしてんの?」
「3限休講になってよ。お前3限ないんだろ、昼メシがてらちょい付き合え。」
「アホ、こいつはいまから国試対策や。邪魔すんな。」
「え?いまなの!?」
「鉄は熱いうちに打たんと。」
「さっき週末って」
「週末も、や。」
「横暴だなー。んな詰め込んだってすぐ抜けてくって。」
「なんだよなんだよ雁首揃えて。なに企んでんだよ、俺も混ぜろ。」
「げ……」
三井の後ろから遅れて顔を出した藤真に、南は眉間のしわをさらに深くした。そんな南の様子はお構いなしに藤真は依紗の隣に座る。三井もその向かいに腰を下ろした。
「よお藤真。聞いたか、休講。」
「は?儲けた。徳重、メシ食いに行こうぜ。」
「それがよ、南と仲良く国試対策だと。」
「はあ?メシくらい良いじゃん。おい南、お前普段こいつのこと独り占めしてんだろ、昼休みと3限くらい解放してやれよ。」
「ひとりじめってなによ、馬鹿じゃないの。」
依紗は笑いながら、まあ成績優秀な南烈大先生を独り占めさせてもらえるなんて光栄の極みよね!などとテーブルを叩いた。笑い方が下品、と藤真がその頭をはたく。南はため息をつくと腕を組んだ。
「進級かかっとんねん。次の模試で指定の点数取らへんと5年になれんからな。」
「そーなの!わかる!?危機!絶体絶命!君たちみたいに内定もらってるやつらとは違うの!でもごはんくらいよくない!?いいと思います!先生、行きましょう!」
「やかましすな。学食でええわ。」
すると藤真が思いついたように、そういえば、と口を開く。
「エッグベネディクトの食える店が近くにニューオープンしたってよ。お前食いてえっつってたろ。」
「エッグベネ…?なんだよそりゃ。」
「しょっぱいパンケーキだよ。」
「ぞんざいすぎでしょ、バチ当たれ。」
三井が首を傾げると藤真は簡潔に答える。その回答に依紗が藤真を睨んだ。三井は頭の後ろで手を組むと椅子の後ろに重心をかけ、面倒臭そうにため息をついた。
「ラーメンでいいだろ、ラーメン。俺ラーメン食いてえわ。」
「じゃあ1人で行けよ。」
「時間の無駄や、学食。」
3人の意見が割れたところで依紗が答案用紙を片付けながら鞄を覗き込み声を上げる。
「あ、待って!家に財布忘れた!私帰って食べてから4限出直すわ!またね!」
片手を上げて風の如く走り去る依紗の後ろ姿を3人は呆然と見送る。ややあって、三井が口を開いた。
「藤真、あいつ高校ん時からあんななの?」
「そーだな、相変わらずけたたましい限りだよ。」
南が首の後ろをかきながら立ち上がるのでそれを制するように藤真が腕を掴む。
「薬学部棟の学食うめえんだろ、案内しろよ。」
「新しいもんな。ラーメンもあんの?」
「どんだけラーメン食いたいねん、あるわ。行くならさっさと行くで。」
「で?週末は南の家行きゃいいわけ?」
「は?」
三井の言葉に南が怪訝な声を上げる。それにすかさず藤真が反応した。
「なんだよそれ。」
「国試対策するのに週末なんとかって。」
「抜けがけすんなよ南、行くわ。」
「ホンマにめんどくさいな。こっちは進級と国家試験っちゅーもんが関わっとんねん、俺らの未来を邪魔すんな。」
「引っかかる言い方すんなよ。」
腰を上げて薬学部棟の自動ドアをくぐる。1階奥の小洒落た学食はカフェのような内装で、学生たちで賑わっている。
「やらしーこと考えてんじゃねえの。」
「それは三井な。」
「アホらし…。」
「鍋する?」
「は?」
「たこ焼きでもよくね?」
「やめろや。」
トレーを2人に押し付けながら南は本日何回目かわからないため息をつく。心底面倒くさい状況に内心頭を抱えた。
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風は誰にもつかめない
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