【南】グリーンライト
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なぜだかわからない。
好きと伝えたい
「あー…。」
判定はD、手ごたえはあまりなかったので妥当と言えば妥当。しかしこの時期にこれは少し厳しい気もする。
「徳重。」
「ぎゃ!」
指定された空き教室で、椅子に浅く腰掛け背もたれに体を預けてぼんやりと模試の結果を眺めていたところ、南が後ろからそれを取り上げた。内容を見るとさっさとこちらに寄越す。
「フェアやない、南のも。」
「ん。」
「…。」
「おんなじやからドローか。」
同じD判定だった。しかし同じに見えてもこいつはあとちょっとでC、私はあとちょっとでE判定だ。同じなもんか。
「薬学部、ぜったいレベル高いやん。」
「ピンキリやわ。できることならあんま金かけたないけど…見てみ。」
一応書いた、と言った府内の薬学部がある国公立は見事にE判定だった。身の丈はわかっとる、と鼻を鳴らした。
「南、部活やりながらこれやもん。引退したらこっちでも行けるんちゃう?」
「アホ、浪人生に勝てる気せんわ。」
「バスケでは大阪のトップなんやろ。」
「それはそれや。…そんなこと知っとるんか。」
「ヤジに聞いてん。最近仲いいけど付きおうとん?言われて。」
「アホやな…。」
「アホやんなぁ。でも南のこと色々教えてもらったんよ。そん時聞いた。」
「ふーん。」
「それより対策立てんとな。判定は判定や。わかっとらんとこがどこなのか分かったし、ちゃんとやらんと。」
そういってマーカーとカラーペンで書き込んでいると、南にはたかれた。え?なんなん?なにが気に障ったん?
「えらい変わりようやんけ…悪いもんでも食ったか。」
「はあ…?」
「特にやりたいこともなかったんやろ。」
「いまもやりたいことはないけどな。でも、南に触発されたわ。自分の好きなことやりながら、やらないかんこともこなしててすごいと思ってん。」
「そんな大層なもんちゃうわ。」
「そういうの好きやで。」
「………は?」
「前から伝えたかったんよ。南は自分のこと自分で決めて、それに向かって努力しとるやん、尊敬するわ。」
頬杖をついていた南が切れ長の目をいっぱいいっぱいまで開いてこちらを見ているので、アホ面、とクリアファイルではたいてやる。さっきの仕返しや。
「今度数C教えてや。先生に聞いてもわからん。」
「教師としてどうなんや。」
「脱線するもん、あの人。」
「誰の授業受けとん。」
「小芝。」
「あいつか…木下のがええぞ。」
「聞いたことある!木下先生って予備校で教えとったんやろ、絶対わかりやすいやん。」
「それはさて置き、今度なんていつか分からん、いますぐやるで。」
南の速攻に脳みそがあわただしくなる。模試の問題を開くとその当時書いた計算式が残っていて、南がそれを辿っていく。私のペンケースからシャープペンシルを取り出すと、指摘と解説をしてくれた。いつかのように、私が参考書を取り出してページを繰ると、こつんと小突かれ、
「こっち見ろ。」
と手元を指される。思わず南の顔をみてしまった私がそれに気づいて視線を落とそうとしたときに南が顔を上げた。
「こっちて、そのこっちやない。」
おかしそうに笑う南の表情に、脳みそは更にあわただしさを増した。そんな風に笑うなんて聞いてない。言っておいてもらわないと困るよ。