だれそれくんのきょうだい
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どうにも集中力を欠いた俺は頭を冷やすために水道の水をかぶった。
髪伸びたな。少し切るか。
そんなことをぼんやり考えてながら顔を上げようとして、はたと気付く。
タオル、体育館から持ってくんの忘れた。
その時、向かいで同様に顔を上げた奴がいた。
短い髪の、女子だった。
切れ長の目に整った眉、すっと通った鼻筋に薄い唇。
俺でもわかる、美形の典型。
美人、というより美少年の方がイメージしやすいと思う。
「……これ、」
タオルが差し出される。
「使ってないから。」
いやいや、自分も今顔洗ってんじゃん。
「大丈夫だって。」
「髪長いじゃん、風邪ひくよ。」
そう言って押し付けてくる。
「お前だって今めちゃ濡れたんじゃん。」
「平気。」
そう言うや否や、着ているTシャツの首元を引っ張るとそれで顔を拭く。
その時見えたリストバンドが、どうも引っかかった。
「依紗ー!」
「今行く。」
拭きながらそちらへ向かう彼女の脇腹が少し見えて思わず目を逸らす。
しかし、このまま引き下がるのは。
「おい、これ…。」
「返さなくていーから。牧さんに叱られるぞ。」
その言葉にびくっとして、つい体育館の方へ戻ってしまった。
あいつは、体育館にいた。
ネットで仕切った半面、女子バスケットボール部。
そのプレイスタイルにやはり見覚えがある。
鋭いドライブ、
チームに勢いをつけるペネトレイト、
的確で素早いカットイン。
なんだなんだ、なんなんだこれは。
あーーーーもやもやする。
「あーあ、恋だね、ノブ。」
「じ、神さん!?」
「ほらほら、牧さんが見てるよ。」
慌てて練習に戻る俺を、神さんはにこにこ見ていた。
練習の合間に女バスの知り合いに声を掛けて、奴の正体を探る。
「ああ、依紗?この間ベスト5にも入ったし、新人王にも選ばれてたよ。」
「…まじか。」
「1on1したら清田でも勝てないかもよ。」
「流石にそりゃねーだろ。」
「どうだかね。それにしてもすごいよねぇ、新人王ツインズだよ。」
「新人王ツインズ?」
新人王って2人も選出されるのか??
俺が困惑していることに気付いたのか、その女子は、馬鹿ねぇ、と笑った。
「清田なら知ってると思った。」
「依紗の片割れくんも新人王取ったんでしょ?」
…片割れ、くん?
片割れ。
片割れ!?
男子の新人王つったら、流川だろ!?
いや、まさかそんな!?
んん!?
いやしかし、
プレイスタイル、容姿、そして、リストバンド。
確かに一致する。
……そんなバナナ。
待て待て待て、混乱が過ぎるぞ清田信長。
そんな偶然普通あるか???
「あいつの苗字、なんつうの?」
「流川だよ。流川依紗。」
ギャーーーース!
その悲鳴が口をついて出る前に、重い衝撃が襲ってくる。
それよりあんた練習いいの?という声も重なったような気がする。
「いい加減にしろ清田。」
牧さんの鉄拳を喰らい、悶絶する。
ズルズルと引きずられるようにして練習の輪に入る。
が、
その手前で牧さんに縋る。
「牧さぁん。」
「どうしよう、俺、とんでもない奴に恋したみたいです。」
その時の牧さんの表情と言ったらなかった。
混乱が過ぎるな、牧さん!
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