*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「せーの」
画面に表示されたのは。
「やー良かった良かった。」
「本当、これでなんとか進学は出来るねー。」
金曜日、売店に向かう仙道に佐和が同行していた。
「ヒロ兄に報告しとこっと。」
「俺も。」
「お母さんには?」
「そのうちしとくよ。」
「すぐしろよ、バカ。」
なんやかんやと言いながら、2人は機嫌よく廊下を歩く。
11月が間も無く終わりを迎えようとしていた。
「ここんとこ本当寒いね。」
「だなぁ。大丈夫?」
「へーきだよ。」
設備が整っているとはいえ、廊下は冷え込んだ。仙道は、カーディガンの袖を伸ばして指先まで隠す佐和の手を取る。
「わ、つめて。」
「末端冷え性。」
「そのくせよく裸足になれるよな。」
「それはまた別問題。」
そのまま手を繋いで歩く。
「由佳さん、里帰りしてるんだっけ。」
「そう。いよいよ予定日近付いてきたし。」
「もう12月になるのかー、はえー。」
「え?本当に?」
「母さんが良かったらどうかって。」
「年越しを…」
「俺の実家で。」
「ハードルたっかい。」
仙道が合格の報告を母親にしたところ、そのように提案があった。
学校からの帰り道、いつも通る公園の前で立ち止まる。
「いつもお世話になってるから、って。」
「いいのに。」
「佐和が困るなら俺は反対。だったらこっちで一緒に年越ししよ。」
「全然困ってないけど。迷惑じゃないかな?」
「姉ちゃんもいねーから、そこは大丈夫だよ。」
(どうせ年末年始のどっかで由佳ちゃんのとこに行こうと思ってたしな…。)
佐和は少し考えたが、じゃあ、と口を開く。
「お世話になろうかな。」
「ん、じゃあ伝えておく。ありがとな。」
仙道は器用に携帯を操作して、その事を伝える返信を送る。そして再び歩き出した。
「ね、彰の実家の近くにもこういう、バスケットゴールのある公園あった?」
「あるある。お世話になったし、今も帰るとお世話になってる。」
「へー、行きたい!」
「なんでだよ。ふつーだよ。」
「彰にも小さい頃があったんだなー、ってしたい。」
「なんじゃそりゃ。」
「ついでに車乗ってけよ、由佳の家の近くなんだろ。」
夕飯の際に佐和が年末年始の話をする。大学合格を祝うということで仙道も招かれていた。
千尋は、年末年始に双子を連れて由佳の実家に行くので、それに仙道と佐和を誘う。
「いいの?」
「嫌じゃなきゃな。」
「千尋、仙道さんによろしくお伝えして。本当は私が行けるといいのだけど…。」
佐和の母がそう言うと、仙道は眉尻を下げて困ったように笑う。
「気を遣わせてしまってすみません。」
「彰が謝ることじゃないだろ。それに、これはこっちの勝手でやってることだからガキ…子供は気にすることじゃない。」
(あ、言い直した)
佐和は小さく笑うと、じゃあお願いしようかな、と言った。
「ヒロくん、兄弟の中で1番ヤンチャだったんだよ。」
「へぇ、だから…」
「うん、怒ると怖い。迫力が違う。」
「あはは、確かにおっかなかった。」
「あれ、見たことある?」
「あるよ。あぁ、佐和は寝てたな。」
佐和は首を傾げるが、仙道は笑うばかりだった。
「…あっという間に大きくなったな。」
仙道は眠る由樹の頭を撫でる。
「彰が初めて泊まった時はまだ年中だったよな。それがもう小学生か…。」
佐和は由衣の頬をつつく。
「高校卒業したら、会わなくなるのかな。」
「また遊びに来てよ。帰省する時、一緒に来よう。」
「…もし、別れても?」
仙道の言葉に、佐和は悠々と笑った。
「関係ないよ、大切な人だから。」
「…でもさ、」
少しトーンを落とすと仙道を指差す。
「二度と言うなよ、本当に別れる時以外は。」
そう言って、佐和は仙道を睨んだ。
うっすらと目元を赤らめている。
「ごめん。」
「本当にごめん、佐和。」
仙道はその手を強く握った。