*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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文化祭、3年生のクラス企画は自由になる。
「でもうちのクラスはやりまーす。執事喫茶でーす。」
企画とかそういうのが好きな子たちがホイホイと企画を進めるので私は傍観。小論文対策で思考回路はショート寸前なのだ、悪いな!
「佐和の衣装はこれでーす。頑張ってねー。」
燕尾…燕尾!?
「私、もてなす側なの!?」
「佐和程適任な人はいないよ。女の子に優しくするだけでいいから、ね?」
「それなら大丈夫でしょ、野郎は適当にあしらっておきな。」
美代さん、そんな言い方。
「仙道は何着ても似合うね。こりゃ客来るぞ〜。」
企画担当の子が満足げに笑う。
「ははは、照れるなぁ。」
「仙道、接客とか出来んの?」
「任せて任せて。」
「不安…越野、お目付役なんだから頼むよ。」
「日下部が躾けろよ、俺の言うことなんか聞きゃしねー。」
「やーよ、私は佐和のお目付役なの。」
そう言って美代は私の方を見る。
「うんうん、決まってる。」
「でも、やっぱ胸は隠せないな。」
ぽん、と彰が何気なく手を置く。
……おい。
「インテンション!」
「ってえ〜。」
美代と越野が声を揃えて彰の後頭部を思い切りはたいた。
グッジョブ。
予想外の出来事に私は動けなかった。
「折角だからさ、一緒に回ろうよ。」
彰の誘いに、諸手を挙げて大賛成。
去年は一緒に回れなかった。
企画の子に担当する時間帯を調整してもらい、彰と文化祭を回れるよう手配してもらった。
「ありがたいね。」
「うん。」
どのクラスも賑やかしく楽しそうにやっている。
「お化け屋敷は入らないよ。」
「分かってるって。」
「あ、縁日だ。うちら去年やったね。」
「だな〜。佐和の浴衣可愛かった。」
「はいはい。彰もすごく似合ってたよ。あ、射的ある!勝負勝負!」
「お、負けねーぞ。」
……結局ジュースを奢らされる羽目になった。
「ねえ、バスケ部のいこーよ、私フリースローやりたい。」
「オッケー。」
「これは勝負しないからね。」
「そもそも部員と勝負するのがルールだから。」
そっかーと笑っていたら、不意に手を握られる。
「手、繋ぎたい。」
学校だし流石に照れくさいよ、と言ったけど、彰は頑として譲らず、結局指が絡められる。
…仕方ないな。
「は〜。やっぱ敵わないなぁ。」
「佐和に負けたらあいつらペナルティもんだよ。」
やっぱ勝てなかった。
彰にやってみないか尋ねたけど、俺がやっちゃダメでしょ、と笑っていた。
「ちょっと休憩しようぜ。」
「うん。結構回ったね、付き合ってくれてありがと、彰。」
「ううん、一緒に回ろうって誘ったの俺だし。ありがとな。」
「ね、どっちがツーショット写真頼まれたの多かったかな?」
「俺だろ。」
「えー?結構いい勝負だったよね?」
「いや、もしかしたらスリーショットが1番多かったんじゃないか?」
「あー、確かに。あはは!」
毎週金曜にヒロくんたちがお店を出してるスペースに座る。床はひんやりとしていて少し冷たい。
「1年の球技大会の時、佐和、ここに隠れてたろ。」
「あー…うん。よく覚えてるね。」
「まーね。」
「懐かしいね。」
目が合う。
自然にキスをした。
「こういう風に彰と過ごすのも、あと少しだね。」
「そうだね。」
「……少し、寂しい。」
「そっか、そうだな。」
「彰はそうでもない?」
「んー、大学一緒だし。」
「受かればね。」
「受かるよ。」
まっすぐこちらをみて微笑む彰を見ていると、本当に大丈夫な気がするから現金なものだ。
「私はね。」
「ひっでえ。俺も受かるよ。」
「あはは、うん、そうだね。」
私が笑っていると、彰は思い出したように口を開く。
「ね、入学式のこと覚えてる?」
「え?」
堪えるように笑う彰に、私は首を傾げる。
「佐和さ、女子の中で背が高くて、後ろの席にされただろ。」
「あー…。」
思い出した。そうだ。失礼な話だよ、全く。
「その時、俺の隣になっただろ。その時なんて言ったか覚えてる?」
「え?覚えてない。」
彰がおかしそうに笑ってるからますます気になる。なになに、なんて言った?
「イケメン、友達になろーよ。」
「……は?本当に?」
だから事あるごとに私のこと、イケメン、って言ってたの?
「本当。何コイツって思ったよ、正直。でもさ、俺、東京から来てて知り合いいなかったし、助かった。ありがとな。」
「私と友達になったところで別にいいことなかっただろ。」
苦笑いで返すと、彰は、何言ってんの、と驚いていた。
「こんなに楽しく高校生活送れてんだぞ、良いことしかない。」
そう言って朗らかに笑った。
「イケメン、友達になろーよ。」
「は?」
「私、高辻。剣道部なんだ。仙道だっけ?バスケやってんだろ?良い体してるな。」
「それ、セクハラ手前だから。よく名前覚えてんな。」
「はは、悪い悪い。人の名前覚えるの得意なんだよ。よろしくな、仙道。怪我しねーように頑張ろ。」
「…ああ、そうだな。よろしく、高辻。」
「ところでさ、校長の話終わったら起こして。」
「…はあ?」
「結局一緒に寝ちまって説教をくらったよなぁ。」
「そういやそうだ、あはは!」
「ねえ、なんで俺に声かけてくれたの?佐和ってわざわざ男に声掛けるタイプじゃないだろ?」
「あー、どっちかっていうと女の子に声掛けるタイプ。」
「だよなぁ。」
うーん…なんでかな。
「なんか、違って見えたんだよ。他の男子が中坊臭いのに対して、彰はこう…洗練されてたっていうか。オーラが違った。キラキラしてた。」
「……それって、さ。」
「ん?」
「んーん、やっぱなんでもない。」
彰が目を細めて私の頬に手を添える。
「…イケメン、これからも一緒にいてくれよな。」
その言葉に思わず吹き出す。
「イケメン、ずっと一緒にいようね。」
もう一度、今度は少し長めのキスをした。
(佐和さん、俺に一目惚れだったんじゃない?)