*【花形】アオハルアゲイン
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「この日、飲みに行こうよ。」
いつもの営業部の人が声を掛けてくれる。
別に悪い人じゃない。
話も楽しいし、優しいし、よく気がつく。
きっと付き合ったらそれなりに楽しいだろうとも思う。
けど。
私には、まだ忘れられない人がいる。
忘れられるまでは、誰とも付き合いたくない。
「倫乃、あの人と付き合ってるの?」
たまたま満と帰りが一緒になったのだけど、そんなことを聞いてくるから眉間に皺がよる。
「付き合ってないよ。あんまりその気もない。」
「なんで。」
「うーん…私の問題。」
「そーかい。」
「ねえ満、ちょっと付き合ってよ、ごはん食べに行こ。」
「へいへい。」
「ふーん、じゃあ別に嫌いとかそんなんじゃないんだ。」
「うん、でもやっぱ気乗りないし断った方がいいのかな。」
「無理することでもないしなぁ。」
ちょっと洒落た定食屋で満とならんで夕飯。そういえば新入社員研修の時、こいつと付き合ってるって本気で勘違いされたなあ。
「…満との仲を本気にされてた時の方がずっといいよ。」
「そーか?俺はごめんだぜ。」
わはは、と笑う満はプロポーズを考えている彼女がいる。
「付き合わせてごめんね、彼女によろしく。」
「大丈夫、倫乃とメシって言ったら、それは何か一大事があったよ、だってさ。」
「もー、彼女の方が大人〜。よろしく伝えてね、今度そっちとごはん行きたい。」
彼女というのが2コ下の経理の子で、社食でよく一緒にお昼を食べている。明るくって、優しい子だ。
生意気に、満のくせに社内恋愛か!くそー!
「呼ばれて飛び出て」
「呼んでないよ。」
「俺が呼んだ。」
なぜ手配されたかわからない昭一が加わる。私の隣に座るとさくっと注文してにやにやこちらを見る。
てゆーか、こいつらに挟まれると酸素薄くなる気がするんだけど。
「倫乃にいい男ができたって?」
「出来てないよ。」
「高野から見て倫乃はどう?」
「はあ!?」
「俺こいつと付き合う気ねーよ!?」
こっちから願い下げだバーカ!
満は笑い、違う違う、と言って私の肩に手を置く。
「花形のこと気になってるようにしか見えねーよな?」
「あー、そういうことか。年末の飲み会の時から花形にほの字だろ。」
「古いなおまえ、だからモテねーんだよ。」
なんだって…?
なんでこいつらにバレてんだ…?
そんなに私って、
「分かりやすいよ、バーカ。」
「藤真〜お疲れさん。」
「高野チェンジ、そこ俺。」
こいつらほんとなんなの、何大集合してんの、カウンター座りづらいでしょ。
店員さんがテーブル席を勧めてくれたのでそちらに移る。こんな予定じゃなかったのに。さくっと食べてさくっと帰るはずだったのに。
「で、どこに飲みに行くんだよ。」
私は営業さんと飲みに行く話を吐かされた挙句、健司にすっごい詮索される。すっごい迷惑。
「あそこの、ちょっとお洒落なバルあるじゃん…」
「げ、お前が?似合わねー。お前なんて赤提灯だよ、このワンカップ大関。」
「おい藤真、赤提灯とワンカップ大関に謝れよ。」
「あんたたち本当に失礼ね。」
私に飲みに行くなってのか?
「脱線する、お前ら少し黙れよ。」
満が健司と昭一を諌める。いいよ、脱線でもなんでもさせておいて。
「お前が納得してんならいいんだけどさ、そうじゃないんならあの人に迷惑だからやめとけよ。」
「ちゃんと本気でお前のこと口説いてるみたいだぞ。」
そんなこと言われたって。
結局、何も決められないまま飲みに行く日になってしまった。
もう、断った方が良いのかな。
それとも、営業さんと付き合って忘れられるのを待つのが良いのかな。
学生だったら取り敢えず付き合っちゃえーって思えたけど、年齢的にも、結婚という二文字が過ぎる。
慎重にもなる。
それとも、この考え方がだめ?重い?
あー!もー!
大体なんで私なんだ。
自分で言うのもなんだけど、口悪いし、性格悪いし、品がないし。
そーよ、こんなオシャレなお店より赤提灯とかコンビニおでんとワンカップ大関なんかがお似合いよ。
本当、なんでなのよ……。
なんで、透じゃなきゃダメなのよ。