*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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夏休みの練習に、大学で現役のOBOGが自身の練習の合間を縫って稽古をつけに来た。
「なんか…気合い入ってますよね、先輩たち。」
「なんでそんな他人事なんだよ。お前のためだろ。」
顧問はそう言うと佐和の背中をばしんと叩いた。佐和は小さくむせる。
「それから、椙山くんにもよくお礼を言っておくんだぞ。」
(洋ちゃん先生、定期的に連絡くれるんだよなぁ…。)
「そうですね。ほんと、そうですよ。」
「だから、他人事やめろ。」
(だって先生、なんか全然実感湧かない。)
「今年は熊本だよ。そっちは?」
「鹿児島〜、遠いなぁ。7月の終わりの方に開会式だから、出発も早いし。」
「大変だ。気を付けて行って来て。」
「佐和も。」
帰り道、いよいよ迫るインターハイに、互いの予定を話し合う。泣いても笑ってもこれが高校生としての最後の活動となる。
「国体は?」
「出るよ、でもそこまで。」
「じゃあ、藤真さんたちみたいに冬のは出ないの?」
「うん、いつまでも俺がいちゃダメだ。」
その言葉に佐和がきょとんとしていると、仙道は首を傾げる。
「なんか変なこと言った?」
「仙道っぽくなくて。」
「なんで急に苗字なの、こわい。」
「あ、ごめんごめん。彰って、自分がチームにとってどういう存在なのか考えてないのかと思ってて。」
佐和は繋いでいない方の手を口に当てて、わー驚いたー、などと呟いた。
(佐和のお陰だよ。)
朗らかに笑うその横顔を盗み見て、ふ、と微笑む。
(佐和が個人としても主将としても頑張ってるから、俺もキャプテンとしてチームを見なきゃと思えるようになったんだ。)
「高辻はインターハイの後どうするの?」
仙道はいたずらっぽく笑って返す。
「…なんか新鮮だな、変に緊張する。私も国体に出たらそれでおしまい。そしたら…」
「そしたら?」
「受験して、大学決めて、教習所通おっかな。」
「え?教習所?」
思いも寄らない回答に、仙道は素っ頓狂な声を上げる。
「そんなに驚く?」
「うちって免許取っていいの?」
「許可取りゃいいだろ。どーせ大学入ったらそんな時間ないんだから。」
「確かに。佐和ってこういうことは賢いなー。」
「喧嘩売ってんのか。」
「な、高辻。」
「…なに、仙道。」
くすくすと笑いながら返事をする佐和に仙道も笑いながら、繋いだ手を離し、佐和の頬に触れる。
「怖い?」
「え?」
「インターハイ、1年の時は怖いって言ってただろ。」
佐和は目を瞠り、やがてそのまま瞬かせる。
(そんなこと、覚えてたんだ…。)
首を横に振り、仙道の手に自身の手を重ねる。
その腕には、アクアマリンのブレスレットが光る。
「ううん、平気、怖くない。私は勇敢だから。」
「そりゃ頼もしいな。」
「彰は?初めてのインターハイは怖い?」
仙道は、ふ、と笑う。
「そうでもねえな。佐和がいるし。」
そう言って唇を重ねる。
「いい知らせを、待ってる。」