*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「お、佐和。」
「彰、終わった?お疲れ…あ、こんにちは、高辻です。」
三者懇、俺の隣に俺の母親。
佐和は立ち止まり、挨拶をすると丁寧にお辞儀した。
こういうところが行き届いてると思う。重すぎず軽すぎない、感じの良い挨拶。
「あら〜はじめまして。彰の、ねえ、彰の?」
「そー、彼女の佐和だよ。お世話になってます。」
少しふざけて佐和の真似をしてお辞儀をする。
「お世話してます。いえいえ、いつも助けられています。」
佐和も少し乗ってくれてまたお辞儀をし、笑う。
おっとりと、でもテンションを上げる母親に少し恥ずかしくなる。佐和はまったく嫌な顔せずに話を合わせてくれる。感謝。
「お待たせ佐和…あら〜、こんにちは。お母さま?」
佐和のお母さんまでやってきて懇談会の第2ラウンドが始まってしまう。
俺、部活あるんだけど…まいっか。
「高辻さん?やだ〜いつも彰がすごくお世話になってるみたいで。」
「いいんですよ〜。うちは楽しくて、寧ろ付き合わせてごめんねって感じで。」
…なんだ、この初対面のはずなのに波長が合ってる感じ。こえーよ。
三者懇は、彰の後に1人置いて私、という順番だった。
待ち時間の間、母親同士が意気投合してしまってずっと喋ってるので、彰とそれを見守る形となった。
「変な感じ。」
「俺も。」
やがて私の母がこちらを見ると、
「仙道さん、ご主人が出張で居ないらしくて。彰くんのところ泊まるって言うからうちに誘っちゃった〜。彰くんも今夜泊まってって。」
「え?」
「ちょっと、無理に誘ったんじゃないの?大丈夫?」
「違うわよ佐和ちゃん。由佳ちゃんにも会えるし楽しみだわ〜。あ、今度はうちに来てね。娘も結婚して居ないしつまんないの。」
なんだか不思議な展開になっていて、最早何が何だかわからん。
「でも、佐和、試合は?」
「それは日曜だから大丈夫。」
都道府県対抗の大会が日曜に開催される。
今年は去年と違って怪我もなく良好な健康状態なので、無事出場出来る。
「どこでやるの?」
「日本武道館だよ。」
「じゃあ観に行こうかしら!」
話が聞こえたのか、彰のお母さんは声を弾ませて、そう言った。あ、笑った顔はそっくりかも。
てか…それむちゃくちゃ緊張するやつじゃん!
「じゃあ俺も行こうかな。」
お前は部活だろーが!
三者懇も終わり、お母さんは彰のお母さんと帰って行った。仲良しかよ。
「ごめんね、部活遅れちゃうだろ。」
私の順番の間、彰のお母さんを一人で待たせるわけにはいかず、彰も待っててくれた。
「いーよ、このくらい。」
複雑そうな表情だったので、どうしたのか聞いてみる。
「俺さ…彼女紹介すんの初めてなんだよ。」
「は?」
「うまく紹介できてた?」
「いや知らないよ…。」
「すごく気に入ったみたいだし、大丈夫だな、うんうん。」
「そりゃどーも…。」
なんて答えたらいいんだよ。
あーよかった!ってか?
部活が終わって帰ると、由佳ちゃんと彰母、私の母が談笑していた。キッチンにはヒロくん。双子はリビングで仲良くテレビを見て盛り上がってる。
「佐和ちゃんお帰り。彰くんは?」
「荷物入れ替えてから来るって。明日も部活だから。」
由佳ちゃんにそう伝え、私がお風呂の支度を始めると双子が飛んでくる。
「俺も入る!」
「私も!」
「もう小学生だろ…はいはい。フォーメーションB、直ちに準備せよ〜。」
ラジャー!とパジャマを取りに部屋にかけていく姿を見たヒロ兄は、助かる、とこちらに笑いかけてくる。
「わ、鮮やか。」
「でしょ、おばさん。佐和ちゃん頼もしくって。」
「佐和が子離れ出来るのか心配ねぇ。」
しばらくして、インターホンが鳴る。
由佳が立とうとするのを千尋が制し、モニター越しにやり取りをすると玄関へ消えて行った。
「優しい旦那さんだねぇ。」
「お義母さんの教育の賜物ですよ、ね?」
「お上手ね。」
ややあって、仙道が顔を出す。
「お邪魔します。」
「彰くんお疲れ様。」
「ありがとうございます。佐和は…」
佐和の母と由佳に挨拶をし、佐和を探すように見回そうとすると、
「彰ー!」
「彰くーん!」
洗面所から双子が飛び出して来て、仙道の足に抱きついた。
「うお、と。」
「あら、彰ったらモテモテ。」
仙道の母は目の前の光景に頬に手を当てて微笑む。
「こぉら!髪乾かしてから…」
洗面所の入り口から、双子を追うようにバスタオルを巻いた佐和が顔をのぞかせる。
「佐和!…服着て、連れてくから。」
「!」
その姿に仙道は一瞬驚いたが、努めて冷静に声を掛ける。
「由樹くん、由衣ちゃん、佐和が着替えたら髪乾かしてもらおうな。」
「おー。」
「うん。」
鞄をリビングの隅に置き、2人に目線を合わせて会話をする仙道に、母親2人は目を瞬かせる。
「由佳ちゃん、彰に何か仕込んだの?」
「彰くんは元々面倒見が良いんじゃないですか?」
「えー?あの子バスケ以外興味あるの?」
「よく遊んでくれてはいるけど…あの子たちがあんなに素直に言うこと聞くなんてびっくり。」
着替えた佐和が改めて顔を出すと、仙道は2人を洗面所に連れて行き、戻ってくる。その時の女性陣の視線に耐えきれず、苦笑いしながらキッチンの千尋の元に逃げ込んだ。
(…手伝います。)
(逃げて来たのか。)
(居た堪れないので…。)