*【花形】アオハルアゲイン
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「あれ、透は?」
「花形ならまだ寝てる。起きねーもん。倫乃起こして来いよ。」
「健司、あんた同室なんだからしっかりしてよ、全く。」
食堂を出て健司たちの部屋に向かう。
ノックをして、中に入った。
起きた後の布団は性格が出ていて笑ってしまう。
多分、ここは一志だ。綺麗にめくられてる。
その隣は暴君だな。雑。昭一、満も布団から出まして候、といった具合だ。
そして、まだ眠る透。
眼鏡は枕元に置かれ、横向きに、腕を組んで眠っている。表情は険しい。
どんな夢見てんのよ…もっと可愛い顔すりゃいいのに。
「透、起きて。朝食だよ、もうみんな集合してる。」
「……んん…眼鏡…。」
「ここだよ、ほら。」
伸びてきた手が、私の手首を掴み、引き寄せられる。布団の中に引き込まれそうになるところで声を上げた。
「ちょっと、透!」
その声に透が眼を覚ます。
「……倫乃。すまない、助かる。」
のっそりと体を起こし、目をこすってから眼鏡をかける。まだ覚醒しきらない、ぽやんとした表情に、思わず吹き出してしまう。
「はは…寝起き悪いんだ。おはよう透。早く支度して来てね。」
「ああ、わかった。」
そこで目が覚めた。
「う…わ。めちゃ久し振りな夢見た。」
天井を見上げ、深呼吸をする。
夕べがあまりに楽しかったから、高校の時の夢なんか見ちゃった。
楽しかったなぁ。
しかし現実は厳しくて。
あーもーさいあく。
頭、がんっがんする。
夕べは結局、野郎共が買い足したお酒もおでんも食べることなく、全てが終わってから起こされた。帰るぞ、と一志に連れられて帰った。
気の置けない仲間とのお酒は美味しくて思った以上に進んでて、回るのも早かった。
その結果が、これ。
いい歳してなにやってんだか。
社会人になって何年経ったのよ、いい加減にしろ自分。
「倫乃はさ、もっと頼ること覚えろよな。」
別れた彼氏に言われた言葉。
よくあるよね。
私としてはかなり甘えてたと思うよ?
でもさ、1人になったらしっかりするしかないじゃん、誰も助けてくれないし。
そうさ、今みたいに二日酔いになったって買い物は自分で行かなきゃどうしようもないし!
悔しいからちょっとオシャレなカフェで一息ついてやる!
「……あれ。」
小洒落たカフェの横を通ると、ガラス越しに見えた見覚えのある顔。
透だった。
向かいに座る可愛らしい女の人。
彼女、居たんだ。
…辛気臭い研究者のくせに。
あんな可愛い彼女が。
胸が軋むように痛んだ。
私はこの意味を知っている。
なんだろう、これ。なんて言うような時期は疾うに過ぎてしまっている。グッバイアオハル、甘酸っぱいあの年頃に戻れたら楽だった。
だから私はこの気持ちに気付かないふりをした。
あの笑顔は思いの外
私の心を抉る。