*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「へえ、由樹と由衣は彰の応援に行ってるんだ。」
「そー。由佳さんも調子イマイチだし丁度良かったんじゃねえの。」
今回はハル兄が応援に来てくれた。
アキ兄は双子を連れてバスケを見に行ってるらしい。
由佳ちゃんのお腹に子供がいる。
私がそれを知ったのは県予選、個人戦の少し前。
本人曰く、今くらいがつわりのきつい時期、らしい。
それで今回は双子を連れ出す為に、私の試合と彰の試合を天秤にかけたそうで、彰に軍配が上がった。なんか釈然としない。
「優勝しないと団体はインターハイ行けないぞ。」
「知ってるよ。」
時計を見る。
試合、始まってるな。
ハーフタイムがまもなく終わる。
「一本、確実に取るぞ。」
相手は神率いる海南。
今年こそ勝ってやる。
「リバウンド頼むな。スクリーンアウトきっちり。」
「取ったらすぐ回せよ、走ってるからな。」
「すぐにおっつく。」
植草、越野、福田が声を掛け合う。
「菅平、頼りにしてる。」
去年よりうんと頼もしくなった後輩のその肩に手を置くと、しっかりと頷き返してくる。
「仙道の勝利の女神は戦ってる最中かね。」
「そーだな…でも、その女神お付きの天使が来てるから情けない姿はみせらんねーぞ。」
「…だな。」
双子と、秋也さんの姿を見付け、俺たちは思わず笑ってしまった。
「いい感じに力抜けたかも。」
「本当に。あ、越野の勝利の女神は来てる?」
「うるせーよ。」
「…いた。」
「福田!」
「後で見せろよ。」
「勝ったらな。」
「じゃー大丈夫だ。」
「そろそろ王者を引き摺り下ろすぞ。」
肩を組んで気合いを入れる。
最後の1秒まで走り抜けるんだ。
「おつかれさん。まーそんな上手くはいかねえよな。」
ハル兄の手が肩に乗る。
団体戦は3位に終わり、インターハイは無しだ。
「こればっかりはお前1人の問題じゃない。」
自分に回る前に勝負は決まっていた。
それが団体戦の辛いところだ。
「今年はあの学校伸びてきてたもんなぁ。どうだった、お前の相手は。」
「ん…強かったよ、でも、負ける気はしなかった。」
「事実、勝ったしな。」
でも負けは負けなのだ、チームは。
「指導不足だなぁ…。」
「それお前が言う?」
「佐和、出たか。」
シャワーを浴びた佐和が洗面所で髪を乾かしていると千尋に声を掛けられる。扉を開け、出たよ、と返事をする。
「髪乾かしたら、これ、彰のとこ持ってけ。」
紙袋が渡される。去年と同じだ。
時刻は午後5時半、たしかに頃合いは頃合い。
「あいつ試合だったんだろ、ちゃんと食わせてこい。」
「あはは…うん、わかった。」
「お前の分も入ってるから。帰りはちゃんと送らせろよ。」
そう言って戻っていった。
(私、落ち込んでるように見えたかな。)
(連絡せずに来てしまった。)
双子の甥姪から結果は聞いていた。
しかし、やっぱり本人から聞いてからリアクションした方がいいのだろうか、などと迷っているうちに到着してしまい、今度はインターホンを鳴らすべきか電話をするべきか迷っていた。
「ええい、ままよ!」
インターホンをを鳴らそうとした時だ。
「あれえ、佐和だ。」
佐和が振り返ると、ジャージ姿でボールを片手に帰ってくる仙道がいた。
「あ…おつかれ。」
「おつかれ。どしたの、連絡くれた?」
「ううん、なしで来ちゃった、ごめん。」
「嬉しいなぁ、謝ることないよ。」
いらっしゃい、と言って鍵を開ける。
佐和の荷物に気付いて、ひょいと持ち上げる。
「入らないの?」
「…え、あ、ありがと、お邪魔します。」
「邪魔じゃないよ〜。」
からからと笑う仙道からは喜びも悔しさもどちらも感じられず、自分の情報は確かなのかと佐和はやや不安になるだけだった。