*【花形】アオハルアゲイン
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あいつらが高校の時の試合を見るとか言って、デッキをいじっていたのは覚えている。
だけど、そのすぐ後から記憶が曖昧だ。
寝たんだ。眠すぎて。
倫乃が毛布を掛けてくれたのは覚えてる。
……眼鏡、どこだ。
「あ、ここだよ〜。ほら、」
その声に、覚醒しきらない脳が急速に回転数を上げる。徹夜明けだから焼き切れる、手加減してくれ。
声のした方に手を伸ばし、掴んで、引き寄せる。
そうだ、高校の時にもこんなことがあった。
「透、ちょっ…!」
「……倫乃。」
驚いてこちらを見ているのは、あの頃より少し大人になったマネージャー。
想いを告げられないまま離れてしまった少女が、すっかり成人して、女性になっていた。
綺麗になった。
俺の腕の中の彼女はあの頃と同じように動揺している。
少し体温が高いのは酒のせいか。
「……すまない、助かる。」
多分、あの時も同じことを言った。
「透、変わってない、ふふ。」
くすくすと笑う倫乃は、平然と立ち上がる。やはり俺は眼中にないのだろうか。
その覚束ない足元に、どのくらい飲んだのか問いかける。
「えー?覚えてない。気持ちいい。」
「もうやめろよ。」
「えー!いま野郎どもが買い足しに行ってるんだよ、これからこれから!」
おでん欲しいな、と電話をかけ始める。
相手は長谷川か。かずしぃ、とか、やめろよ馬鹿、甘えんな。
「透は?なんかある?」
「大根と厚揚げ。」
「大根と厚揚げ追加〜。ええ?牛すじないの?あー…じゃあしらたきもよろしくー。柚子胡椒忘れないでね。」
「やれやれ。」
「へー。じゃあ結構学会で飛び回るんだ。」
「倫乃は?」
「私は専ら中の仕事。受付もやるよ、美しい響きよね、受付嬢。」
「……。」
「なぜ黙る。」
お互いの空白の時間を埋めるように、現状を報告し合う。寒いというので一緒の毛布に入れてやったが、酒臭い。
「こんな酒臭いのが受付なぁ。」
「なによ、辛気臭い研究者のくせに。」
こう見えて労働組合の支部長もやってんのよ、と胸を張る。それは忙しいだろうな。
それから、いくつか愚痴をこぼしていた。
旅行会社とのやりとりや、内部の面倒な人間関係など。
営業の誰それとよく飲みに行くが、気乗りしない、とも言っていたがその辺りから船を漕ぎ出し、俺の膝の上に崩れ落ちて眠ってしまった。
「まあ、いいけど…。」
その健やかな寝顔に、つられて俺も再度眠りに落ちた。膝の温もりが心地よかった。
「…だから言ったろ、鍵持ってって正解だって。」
「俺ら締め出されるところだったな。」
「ところで、花形彼女いるんじゃなかったか?」
「…マジか、これ写真撮っておくか。」
「性格悪いなお前。」
目が覚めた時の、男たちの生温い視線が気持ち悪くて身震いした。