*【花形】アオハルアゲイン
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「忘年会しようぜ!」
我らが暴君…もとい、リーダー藤真健司が急に提案してきた。
高校卒業して何年経ったか、社会人になってそれなりに乗ってきてる所へ、その連絡はなかなかに嬉しい。しかも、マネージャーだった私にも連絡くれるところが意外と細やかだ。
「花形ん家でやるぞ、各自酒を持参するように。」
そう連絡が来たものの、透の家なんか知らんし、なんなら皆今どこに住んでるのかもよく知らない。
「倫乃、こっちこっち。」
満が手招きしていた。デカすぎて目立つよ、恥ずかしいんだけど…。
「おつかれ。」
「おつかれ。最近忙しい?」
「まあまあかな。海外出張申請書のフォーマットが変わって鬱陶しい。」
「それな、こっちもちょっとバタついてる。総務には迷惑かけるなぁ。」
満とは就職先が同じで、自動車部品のメーカーの、こいつは技術職、私は事務職。たまに業務で内線のやりとりがある。どうやら透の家を知ってるらしいので待ち合わせて行くことにした。
「花形、博士課程まで取るらしいじゃん。」
「は?まだ学生やってんの?勉強好きだねえ。」
「そのまま助手になって、ゆくゆくは教授にでもなるんじゃね?」
「あり得る〜。」
そんなことを話しながら、お酒を調達。
すると、健司から連絡が入る。
「先始めるぞ、って、こいつ暇なの?」
「今日明日は練習休みらしいからな。」
健司はどこぞの実業団でバスケしてるらしい。
「高野は出張からの直帰で早いみたいだから、もう加わってんじゃねえ?」
「昭一がアパレルの営業って、とんだファッションモンスターじゃんね。」
「よせよ、俺は未だに笑いが止まらん。」
「一志は?」
「あいつはなんかの営業だったな…なんだっけ。」
「あ、ほら、オーリングとかパッキンとかの部品系の商社じゃなかった?」
「あーそうそう、そうだ。」
いつもの面子の進路について話しているうちに透の家に着く。
なんか結構…いいマンションじゃないか。
オートロックに部屋番を打ち込むと、健司が出て、「合言葉は?」とか言ってる。馬鹿じゃん。
「エイヒレの炙り。」
「なにそれ。」
あ、開いた。
なにこのやりとり、必要?
「ウース、久し振り。」
「ああ…。どうぞ。」
ドアを開けたのは透だった。
「お邪魔しまーす…なんか疲れてない?」
靴を脱ぎながら尋ねる。すごく眠そうな目をしてる。
「徹夜…。」
「ええ?論文?」
「そう…。」
おいおいおい、なんでこいつの家でやろうと思ったんだあの暴君は。満身創痍じゃないか!
「そんなんで飲んだら死ぬよ、やめなよ。」
「大丈夫だ、無茶な飲み方はしない。」
本当かなぁ。
みるみるうちに酒が減っていき、空の缶や瓶が増える。私がまとめて片付けていると一志が手伝ってくれる。優しいなぁ。
「あ、そこの丸いプラのボトルと空き缶2〜3本は残しておいてくれって花形が。」
「なに、コレクター?」
「研究に使うらしい。」
「…あそ。」
健司、昭一、満は昔の試合のビデオを見ながら盛り上がってるし、透は隅で壁に向かって横になってる。酔ったのではなくて、単に眠くなってしまったそうだ。
「なんか掛けてあげないと冷えるよね。寝室入って大丈夫かな。」
「まあ良いだろ、頼む。」
一志が手際よく分別してくれるので、私は寝室と思しき部屋のドアを開けて中に入る。
…なんか、悪いなぁ。
照明を点けると、片付けられた部屋が現れる。机とベッドがあって、本棚には難しそうな本が並んでる。分厚いハードカバーの本とか。あと…ドミノ?ビー玉?なんの趣味?
あまりジロジロ見るのもなんなので、毛布一枚引っ掴むと電気を消してドアを閉める。
リビングに戻ると、姿勢を変えることなく目を瞑っていた。その表情は険しい。
毛布を掛けてあげると、大きな体を小さく震わせて目を開けてこちらを見る。
「あ、ごめん。」
「倫乃か。いや…いい、悪いな。」
「こちらこそ、勝手に部屋に入ってごめん。」
「全く問題ない。…寒かったから助かった…。」
そう言って、我慢できなかったのかそのまま目を閉じた。ぐらりと仰向けになる。
「ちょ、そんなに眠いならちゃんとベッドで寝なよ!」
揺すっても、起きない。
私の声に健司がこちらにやってくる。
「あー、ダメダメ。こいつこうなると起きねーから。」
床に置かれていた眼鏡を拾い、キッチンカウンターに置く。
「起きない、って…。」
「倫乃お前、合宿の時起こしに行ったろ。」
「……あ。」
思い出した。
そうだ。
…うわ、うわうわうわ。
「なに、なんかあったの。」
健司がにやにやと覗き込んでくる。
「ないけどあったけどなかった。」
「意味わかんねー。」
酔っ払いめ、と軽く頭をはたかれた。
お前に言われたかない。
いやいや、思い出しただけでも恥ずかしい。
私のせいじゃないんだけどね。
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