*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「落ちたよ。」
新入生が胸につける造花を拾って、渡す。
入学式の日は武道場も体育館使えないので佐和は外周ランをしていたが、走り終える頃には通常の登校時間に重なった。
「あ、ありがとうございます…。」
(あ、間違えられてる。)
制服着てなきゃ大体男と間違えられるのはいつものこと。頬を染めた女子生徒に、入学おめでとう、と微笑み返せば一丁上がり。
そんな一連の流れに小さな溜息をつき、真新しいセーラーの後ろ姿を見送る。
「よ、イケメン。ナンパ?」
「違うよ。」
仙道が笑いながら登校してくる。
佐和は呆れて笑う。
「はやいね、どうしたの。」
「朝練の時間に目が覚めた。朝練のある日は覚めないのに。」
「早起きの無駄遣い。」
「あはは、全くだ。」
笑いながら隣を歩く恋人を見上げ、佐和は穏やかな気持ちになるのを感じる。
彼の笑顔は安心感を与えてくれるし、そのせいか人を惹きつける。
クラスの編成表はまだ見ていないが、一緒ならいいのにと願ってやまなかった。
(本人には言ってやらないけど。)
「ところで昇降口あっちだけど。」
「部室寄るんだろ、一緒に行く。」
「良いけど中入ってくんなよ。」
「ちえ。」
口を尖らせる仙道にしばらく待つように告げ、佐和は部室に姿を消した。
「もうなにも隠すとこねーじゃん。」
「バカ!」
扉越しに、くぐもった佐和の声が飛んできて仙道は苦笑した。
「いいか、今年も言うぞ。俺は猛獣使いじゃねえ。」
担任が、今年も同じ台詞でホームルームを始める。
「わんぱく兄弟ー、怪我なくいい子にしてるんだぞー。」
「合点承知〜。」
「わかりました〜。」
佐和と仙道がにこにこと手を振る。
「お目付役、しっかり見張っとけよー。」
「あー、はいはい、もういいですよ何でも。」
「いくらでも目ェ付けときますよ。」
美代は頬杖をつき、越野は腕を組んで溜息をつく。
教室の中には緩やかに笑いが起こった。
「もうここまで来ると作為を感じるわ。」
美代のつぶやきに越野が頷いた。
「体育祭の種目かー。」
「もう最後なのね。」
種目一覧を見ながら佐和と美代は思い出話をしていた。
「今年は結構駆り出されるんじゃねえ?」
「そーかも。リレー出なきゃかなぁ。」
越野の言葉に佐和は溜息をつく。
美代が変更に気付いて声を上げる。
「あれ、二人三脚じゃなくて10人11脚になってる。」
「誰かさんたちが猛烈な速さでゴールしたからじゃね?」
越野が横目で仙道を見遣ると、
「照れるなぁ。」
仙道がにこにこと佐和に笑いかけた。
「俺、佐和がリレー出るなら出よっかな。」
それを聞いていた体育祭委員がリレーの所に高辻と書く。
「ちょっと、私まだなにも言ってないんですけどー。」
「あ、いいよいいよ、俺も出るから。」
「そういう問題じゃないだろ。」
「去年殆ど出られなくてつまんなかったんだろ、出よーぜ。」
「不可抗力だろ。」
わんぱく兄弟のやり取りにクラスには笑いが巻き起こる。担任も上機嫌で、今年も優勝だなー、と笑っていた。
前評判通りだね、と笑うクラスメイトの声に佐和は溜息をついた。
(ガチで走れるスニーカー買っといて良かったな。)
(本当だね、今年も勝つよ。)
(だな、やるからには勝たねーと。)
(それ私の台詞。)