*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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今年のクリスマスも甥姪の強い押しにより、佐和は仙道を家に誘って過ごすことになった。
それは夕飯の話で、折角だからその前に一緒に出掛けようという話をしていた。
しかし今は、仙道の自宅。
見事に寝坊をした仙道を佐和が迎えに来たのだ。
「ごめんな。」
「いーよ、これはこれで。そういや去年は日曜も練習あったよね。」
「あったあった。今年はお互い休みで良かったよ。佐和と過ごせるの、嬉しい。」
「私も嬉しいよ。」
ベッドサイドに座って待っている佐和は、支度をする仙道の背中を見ながら怪訝な顔をする。
「風邪引くよ、服着たら。」
「ん?」
タオルを首にかけ、部屋着のジャージを下だけをはいた状態で歯磨きを始め、そのなりでキッチンに立つ仙道は上半身裸である。
暖房を入れているとはいえ、寒々しい。
「何してんの、お茶なら私淹れるから、」
「ふぁー!まらひひゃらめ!」
「はあ?」
佐和が立ち上がろうとすると仙道は慌てて口をゆすぎ、タオルで口を拭く。
「まだ来ちゃダメって言ったの、でももういいよ、おいで。」
歯ブラシを置いて両手を広げる仙道に、佐和は声を荒げる。
「ばか!服着ろっつってんの!」
「えー。温めてくださいよ佐和さぁん。」
「お茶淹れるから!どけ!」
「ディフェンス!」
「…いい加減にしろよ。」
ふざけながら軽く腰を落としてディフェンスの構えを取る仙道に佐和は近付くと、
「!!」
仙道の頭を抱えるように抱き締め、軽く髪の毛を弄ぶようにして撫でる。
それは一瞬で、仙道が驚き怯んだ隙に脇をすり抜けて、鍋でお湯を沸かし始める。
「いつまでその格好してるつもりなの。早く服着なって。」
「もー、佐和は俺を隙だらけにするんだからー。」
口を尖らせ、仙道は佐和を後ろから抱き締める。
「離せってば、火、点いてんだから。」
「消せばいいじゃん。」
コンロに手が伸びてきて火を消す。佐和が抗議の声を上げるとその手が頬に添えられ、向きを変えられる。
「佐和のせいだよ、俺の火を消して。」
「何盛ってんだよ、ばか!んッ…」
ミント味のキスに、佐和は顔をしかめた。
「で、今日はどこ行く?」
「……まだそんな余裕ないよ。」
満面の笑みで顔を覗き込んでくる仙道とは対照に、佐和は気怠そうに返事をする。
仙道は、そっかー、と笑いながら佐和の手を取る。
「はい、メリークリスマス。」
「……は?」
右手の薬指にはめられた指輪に、佐和は目を見開く。
「なに、これ。」
「指輪だよ。」
「見ればわかるって。」
仙道は、サイズちょっと大きかったなぁ、入らないと困ると思ってチキッた、と苦笑している。
「大人になったらちゃんとしたの買うから待っててね。」
「そういうことじゃなくて。いや、ちょっと待って、もう何から突っ込めばいいんだ私は!」
慌てて起き上がろうとした佐和は僅かに痛んだ下半身に小さく悲鳴を上げる。
仙道は少し焦った様子で佐和の腰に手を添える。
「悪い、無理させたかな。」
「こんなん平気だよ。それよりこっち…」
「こんなんじゃないよ、佐和の体は大事だ。」
「……彰のそれは天然なの?。」
「何言ってるの、本当に大丈夫?」
「もう、混乱し過ぎてわけわかんない…。」
佐和は膝を抱えるとその膝頭に額をつける。
「この指輪は、どういう意味?」
「クリスマスプレゼント。」
「……ありがとう。」
「次買う時は左の薬指につけさせてね。」
「…ん。え?」
「冗談じゃ、ないから。」
佐和は顔を上げ、仙道を見る。
仙道に真剣な眼差しを向けられ、佐和は揺らいだ。その様を見て仙道はやや眉を下げる。
「…佐和は、違う?」
佐和は首を振った。
「彰が、そこまで考えてくれてるなんて嬉しくて…」
私はちゃんと応えられるのか不安になってしまった、と言った小さな声は震えていた。
その言葉に、仙道は満面の笑みで佐和を抱き締める。
「十分だよ。」