*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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昼休みのメンツが、夏休みを境に変化した。
というか、福田が加わった。
その頃から、部活のことをよく話し合うようになっていた。
9月にあったウィンターカップも全国を逃し、課題点が見えてくる。今までは魚住さんを中心に動いていたチームを、自分が回していかなきゃいけないこともようやく自覚した。
文化祭を終え、少し落ち着き出した頃からか、佐和の家に出入りする事が増えた。
いつもの昼メシメンバーでミーティングだ。試合のビデオを観ながらああでもないこうでもないと熱く話し合う。
千尋さんが提案してくれた事だった。
元々は俺の部屋でやるつもりだったのを「狭い部屋にそれじゃあむさ苦しいだろ。」と。
仰る通りで、正直狭い。
ご両親も、お兄さんたちの時はもっと大勢で押しかけてきたからそれに比べたら可愛いものだし何より楽しい、と受け入れてくれた。
佐和自身も、部員やら美代ちゃんやらが泊まりにきているので慣れているようだった。
ただ。
風呂上がりの佐和をこいつらにみられるは控えめに言って相当気に入らない。
佐和も佐和で無防備な格好してるから、ちゃんと思い知らせ…もとい、教えてやらないといけない。
「高辻は肩の調子どうなの。」
植草が尋ねる。佐和はダイニングテーブルの椅子に座ってサポーターを着けながら、
「上々。年内には復帰。」
と、にんまり笑った。
もういくらか寒い季節に、風呂上がりとはいえランニングはダメだろ、冷えるだろ。
…他の男にあんま肌、見せんなよ。
「服着るのもスムーズになったんだよ。」
そう言ってスウェットの上を着る。
ひょこ、と頭出すの可愛いな。
「そっちはどう?来年のインハイに向けて経過は順調?」
「まだまだだなー。仙道と福田だけじゃインサイド固めきれねえし。」
「ガードはやっぱ宮城だな。センスもスピードもあるけど、今年だけで経験値がすごいだけに、来年どうなるやら。」
佐和は知ってる名前が出て来るからか熱心に聞いている。こちらに寄ってくると、俺の隣に座り、テーブルに散乱した紙を1枚持ち上げて眺める。
「何書いてあるのか全然わからん。これがゴールかな。」
「そーそ。それから…」
律儀に越野が説明する。佐和は面白いのか、すごく興味津々だ。
軽く触れている部分がじんわり温かい。
風呂上がりで少し高い体温が心地よかった。
そういえば、一度だけだったが夕飯を食べに来た時に、剣道部の女の子たちがミーティングがてら泊まるのとかち合った時があった。
事前に聞いていたので流石に邪魔かと思って夕飯も断ったのだけど、ごはんだけでも食べていきなさいと由佳さんに押し切られたのだ。
その時の佐和はすごくて。
ビデオ観ながら1人ずつ指摘したり褒めたりしていて、千尋さんもお父さんも、見る目が育ってると感心していたのが印象的だった。
俺からしたら何言ってんのか分からなかったけど、剣道に対してどこまでも真摯で誠実なその姿勢に心を打たれた。
自分はやれないのに、よく腐らないで頑張ってるな。
今後どうするかとか、誰のどこを伸ばそうとか、すごく話し合ってた。
誰もが認める、理想のキャプテンなんだろう。
それを目の当たりにして、俺も少し変わったのかも知れない。
「じゃ、私寝るけど。あんま遅くならないようにね。おやすみ。」
佐和が俺の肩に手を置いて立ち上がったので、そこで我に返る。
おやすみ、と返すと笑顔で手を振って自室に姿を消した。
俺はくるくるとシャーペンを回してテーブルに置く。
「俺たちも寝るか。」
そうだな、と、越野はメモを整理して纏めてクリアファイルにしまう。こいつのこういう所が俺にはないところで本当に助かる。几帳面っつーか。
俺ならクシャクシャポイだもんな。
「仙道、お前途中上の空だったろ。」
「……まいったな。」
バレてら。