*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夏休み中、登校日が2日程ある。
その1日目。朝練はなく、いつも通りの登校時間。その事に気持ちが緩んでいたのかもしれない。
息を切らせて教室に入ってきた一際大きな体の男は、部活のジャージを着ていた。
「おはようございます!」
「仙道……なんだその格好は。お前もか。」
その言葉にきょとんとしたが、前に座る女子を見て思わず笑う。
「高辻もかー。」
部活のジャージを着た佐和は不機嫌そうに頬杖をついていた。
「高辻、せめてズボンの裾下げたらどうだ。」
「暑いっす。」
「俺も俺も。」
言うことを聞かない佐和と裾を上げ始める仙道に、担任は深い深い溜息をついてホームルームを始めた。
授業らしい授業はなく、午前で終わり。
午後は部活があるのだが体育祭委員会もあるわけで。
「当日の役割分担とスケジュールの確認をします。」
資料の陰に隠れて佐和は欠伸をする。いよいよ迫ってくるインターハイの事で頭がいっぱいなのが正直なところ。
(でも、委員長頑張ってるし、私も頑張ろ。)
前から思ってたけど、委員長美人だし優しそうなんだよな、と顔を上げる。丁度彼女もこちらを向き、微笑んだ。
(わ、かわいー!バキューン!ハート撃たれた。)
「では、質問がなければこれで終わりにしましょう。」
その声に、各々立ち上がった。
部活が終わり、佐和は夕日を見ながら体を伸ばし、帰路につく。ふと校舎を見上げると、電気のついている教室を見つける。そこには見知った人影が。
足早にその教室に向かうと、小さくノックをして、入る。
「あ、高辻さん、お疲れ様。」
「委員長、なにやってるんですか?」
資料をホチキス留めしているようだった。まだかなりの量がある。
「これ、教員と生徒会用にね。明日の会議で体育祭の内容を最終確認するんだけど、その説明の時に使うの。」
(休み中なのに…生徒会は動いてるんだ。)
「手伝いますよ。」
「大丈夫だよ、高辻さんはゆっくり休んで、練習頑張らないと。」
佐和は首を横に振り、資料をまとめる。
「こういう雑用は誰かに頼んだ方がいいです。一緒にやったら早く終わりますよ。」
委員長には委員長にしか出来ないことたくさんあるんだから、と佐和は作業を進める。
委員長は顔を上げて佐和を見た。
「高辻さん、ありがとう。」
「いーえ。それにしても、ここの学校、イベント事は基本生徒に任せちゃってる感じで大変ですね。」
委員長は、ふふ、と笑うと
「大変だけど、生徒の自治に任せてるって感じがして、信頼を感じない?やりがいあるよね。」
今度は佐和が顔を上げて委員長を見た。
「…すごいです。」
「なにが?」
「大人だなって。」
美人だし、と心の中で呟いて作業を進める。ふと携帯の振動に気付き、一言断ると通話を始める。
「おつかれ、なに?」
『教室電気ついてるんだけど、委員会ってまだあったっけ?お前帰った?』
「越野、丁度いい。その教室までダッシュ。」
『あ?』
そこで通話を切った。そして佐和は委員長の方を見てニカッと笑う。
「もう1人召喚したんで、サクサクやりましょ。」
そこに現れたのは、越野と池上だった。
「たまたま池上さんと一緒に帰るところだったんだよ。 」
「雑用?手伝うよ。」
「わー。まさかもう1人連れてくるなんて。しかも池上さん!」
佐和は、でかした!と越野の背中を軽く叩くと、委員長に向き直り、「やっちゃいましょ!」と言って作業に戻った。
(高辻、お前ホチキス下手。俺に貸せ。)
(すみません池上さん…。)