*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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安全の為、履物は下駄ではなく上履き。
折角の風情が台無しなのは置いておき、浴衣にバッシュもなかなかアンバランスだと思う。
「仙道、袖は邪魔じゃねえの?」
甚平の越野が尋ねてくる。こちらはバッシュでもそんなに違和感はない。そんなに、は。
「高辻にうまくやってもらうか。」
「でも、どこにいるかわかんね…」
「呼んだ?」
「うわ、なんだ、来たのかよ。」
驚く越野に、来ちゃ悪いかよ、と抗議する佐和は襷を手に持っていた。
「彰、フリースローするんでしょ、袂が邪魔だと思って。」
「通じ合った!」
「はいはい。」
呆れた佐和は襷の端を軽く結ぶと一回ひねり、俺の後ろに回ると腕に通す。
「そこの結び目で調節して。」
「おお。」
言われるがままにやると、なるほど、袖…もとい、袂が邪魔にならない。これならよっぽどやり易いな。
「大丈夫そう?」
「ああ。ありがとう。」
パスをもらって、試しにシュートを打ってみる。
うんうん、悪くない。
「浴衣にバスケットボールって、変な感じ。」
これはこれでありだけど、と言って、佐和は越野の方を見る。
「越野、甚平似合うね。なんか可愛い。」
「褒めてねーよ、それ。」
そんなやりとりをしている2人の元に池上さんと魚住さんがやってきた。越野と佐和が並ぶとアレだけど(越野に怒られるから口には出さない)、あの2人に挟まれると佐和も小さく見える。
そして、引き立つ、女性らしさ。
「高辻、綺麗だな。」
魚住さんがストレートに褒めると、佐和はややはにかんで、お礼を言う。
「高辻本当によく似合ってるぞ、驚いたな。」
でしょでしょ池上さん。俺もそう思います。
でも驚くところじゃないです。
予想通り、と言っていただきたい。
「あの、高辻、先輩。」
突然女の子に呼び止められる。
確か、マネージャーの子だ。
あれ?それより、
「私のこと…覚えてますか?」
そりゃ、もちろん。
「練習試合の時に熱出しちゃった子、だよね?」
ウィンブレ貸してあげた子だ。陵南だったんだ。
あれ、でも、年度変わる前だから、受験生だった!?
「良かった、受験できたんだね。」
「はい。お陰様で。…ずっとお礼が言いたかったんです。あの時はありがとうございました。」
ふわ、と微笑むその笑顔。
ドストライク。
女の子って、本当に可愛い。
「イケメン、口説いてんの?」
彰がボールを肩にやりながら近付いて来る。
「違います。私が口説いたんです。」
「そーなの?」
「はい、助けてもらったことがあって。」
「……ほら、練習試合の時に体調崩した子いたろ。その子だよ。」
「あー、佐和が超男前だったという。」
「うるせえよ。」
マネージャーはそのやりとりに笑う。
「見た目も中身もとてもお似合いで素敵です。」
部の出し物を俺が担当する時間帯、佐和はずっと体育館にいた。
マネージャーや先輩、部員たちと談笑したり、時折、預けたタオルを持って来てくれる。
着崩れていないか確認もしてくれる。
至れり尽くせりだなぁ。幸せだ、こりゃ。
ただ、気掛かりだったのは、ボソボソと聞こえる声。
佐和のことをわんぱく弟だとか男前だとかそんなことを言っていた男子も女子も、佐和のことを女として認識し始めていた。
そのことがむず痒く嬉しいような、でも重苦しい嫉妬のような焦りとか、そんなものが湧き上がってぐるぐると混ざり合う。
ガシャン!
「お。」
見事にシュートが外れた。