*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「苦しくないか?」
「おお、大丈夫。すごいなぁ。」
「ありがと。…うん、似合う似合う!」
佐和が一歩下がってまじまじとこちらをまじまじと見る。
「本当?」
「もちろん!」
いつもよりテンションが高いのは、お祭りのせい?俺まで楽しくなってきた。
ふう、と手の甲で汗を拭う様がなんとも言えない。
「疲れた?」
「少しね。」
「肩は大丈夫?」
「もうかなりいいよ。着付けくらいならそんなに堪えないかな。」
「ね、キスしていい?」
さりげなく差し込んでみる。
別室で着付けをしてもらっているので、誰もいない。
なぁ、いいだろ。
「…いーけど。」
おお、許しが出た!
なんだ、珍しいな、嬉しいな!
「入ってもいい?」
あー美代ちゃんだ。
残念、佐和は美代ちゃんに呼ばれたら応えるんだよな。
佐和は扉の方に体ごと向けた。
「あとちょっと、3分待って。終わったら連れてくから。」
……え?
それ、って、
……神様!!ありがとう!!
美代ちゃんが、りょーかい、と言うのが聞こえて、気配が遠ざかって行くのを確認する。
俺は後ろから少し乱暴に佐和を掻き抱く。
「…佐和もしたかった?」
「ばか。」
顎を持って振り向かせて、いつもより深めの、すこーしやらしいキスをしてやった。
仕方ないよね。
佐和の汗ばんだ体と金木犀の香りがそうさせるんだぜ。
浴衣なのが俺じゃなくて佐和だったら良かったのに。
いや、だったらキスだけじゃ止まらなかったかも。
「……ね、今度浴衣でしようよ。」
「しない。」
ですよね。
最後に美代の浴衣を着付ける。
流石に疲れたな。秋とは言ってもこれだけ着付けしてたら汗もかく。なかなか重労働だ。
「よし、と。美代、苦しくない?痛いとか。」
「全然!やっぱ佐和上手いね。」
「サンキュ。素直に嬉しい。」
「じゃ、交代ね。」
美代が私の分の浴衣一式を準備し始める。
「私、もういいかな…着崩れた子直したりしたいし。」
そう言ったが、美代は首を横に振り、言う。
「ダメ。仙道が死ぬ。」
死ぬんだ。
しばらくして美代ちゃんに呼ばれる。
なに、とそちらへ行くと、にやにやとしながら、いちばんに見せてあげる、と言って去って行った。
粋だなぁ。
扉を開けると、彼女がこちらを振り返る。
思わず、息を飲んだ。
色素の薄い、ベリーショートの髪。
女子にしては長身。
目はキリッと切れ長でとても凛々しく、それでいて女性的な丸みもある。
中性的なその見た目に加えて、はっきりとした物言いをし、明朗快活。
どちらかというと男友達のような感覚。
そんな印象を抱いていたあの頃が、もう随分前のことのように感じる。
目の前にいるその子の、その姿は。
浴衣が似合うのなんて分かってた。
でも、予想を遥かに超えていて。
鍛えられているその体躯は身を潜め、
浴衣の生地が女性らしい華奢なラインを際立たせる。
美代ちゃんが施したであろうささやかな化粧は、佐和の端正な顔立ちを華やかにした。
「へ、変?美代、鏡をみせてくれなくて…。」
俺は言葉を忘れてしまった。
佐和はそれを肯定と取ってしまったらしい。
やっぱ変!?と両手で顔を覆ってしまう。
「隠さなくていい!!」
思わず大きな声を出して、その手を力一杯掴んでしまった。
佐和は驚いて目を見開いたが、すぐに逸らしてしまう。
「やだよ、恥ずかしい…」
「全然変じゃなくて、寧ろ逆、すげーいい。」
「余計に恥ずかしい!」
俺は抵抗する佐和に顔を近づける。リップが取れるからやめて、と懇願する彼女の言葉に、唇を凝視してしまう。つやつやとした瑞々しい唇は誘っているようにしか見えない。
構うもんか。
「何を発情しとるか!!」
「あいた!」
美代ちゃんが何やら紙っぽい物で俺の後ろ頭を叩いた。結構痛いんだけど…。
「んなことの為に見せたんじゃない!」
「違うの?」
「アンタはオープン過ぎるのよ、ちょっと控えろ!」
「ゴメンナサイ。」
美代ちゃんの機嫌を損ねるのは佐和の機嫌を損なうのと同義なので気を付けなきゃいけない。
下手したら俺、佐和の機嫌よりも美代ちゃんの機嫌の方を気にしてるかも、そんなの内緒だけど。
だから素直に謝って従うのが吉。大吉。
「スケジュールの確認するから戻って。」
美代ちゃんはそう言って、佐和の髪を少し直した。