*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「佐和ー!」
「佐和ちゃーん!」
その声に佐和が振り返ると、由樹と由衣が足に抱きついたのがわかり、見下ろす。
「お!由樹、由衣、来たんだ。」
佐和は甥と姪の頭を撫で、からからと笑った。
「お疲れさん。2人がどうしても行きたいって言うから連れて来た。」
すぐ帰る、と千尋が笑いながらやって来る。
「美代ちゃんかっこよかった!宏明くんも足早いな、すごいな!」
由樹は興奮しながら2人を見上げた。由衣もうんうん、と頷くと、体の向きを変え、仙道を見上げる。
「彰くんもかっこよかったよ!」
仙道が笑顔でしゃがみ、ありがとう、と言うと、由衣は照れながら仙道の着ているTシャツを小さく引っ張る。
「ああ、いいよ。おいで。」
そう言って仙道は軽々と由衣を抱き上げる。それを見た由樹が、彰!おれも!とせがむ。
「由樹、彰だって流石に2人は」
「大丈夫だよ、ほい。」
そう言って一度屈み、由樹も抱き上げた。
その姿に、近くにいた女子生徒が歓喜の悲鳴をあげることとなった。
「ところで、越野は宏明くんなのに俺は呼び捨てなの?」
やがて千尋と双子が帰って行った。
「仙道、あんなことして、さらに借り物競走でるんでしょ、なにあの体力バカ。」
「俺なら無理だわ。」
越野は苦笑した。
ピストルの音に、仙道はゆるく走り出すと、カードを拾い上げる。
(…お。)
すぐに目当ての人物を見付け、そちらへ走っていく。
「魚住さーん。」
「仙道。なんだ、お前の借り物は俺か?」
「そうなんです、魚住さんなんですよ。」
そう言って魚住を連れ出すと、
「俺をお姫様抱っこして下さい。」
そう言って両手を広げる。
その声が聞こえた生徒ははち切れんばかりに笑い出し、一方で魚住は唖然としている。
「お願いします。やるからには勝たないと佐和に怒られちまう。」
仙道が少し困ったように笑ったのをみて、魚住は溜息をつく。
「…それなら仕方ないな。」
やりとりが全く聞こえない越野と美代は、目の前で起こったことに驚きのあまり言葉を失った。そして次の瞬間、堰を切ったように笑い出す。
「なんだよあれ、最高かよ!!!」
「やだーー!!仙道が抱えられてるーー!!!」
新旧キャプテンのその様に田岡も開いた口が塞がらない。
「桁違いのサイズ感じゃん…。」
佐和はそれだけ言うと、次の瞬間、涙が出るほど笑っていた。
「魚住さん。」
「なんだ。」
「分かりづらいかもしれないんですけど、俺、すげーいい思い出ができて本当に嬉しいんですよ。」
「そうか。」
「ありがとうございます。」
「…そりゃ、こっちの台詞だよ。ありがとな。」
喧騒の中で交わされた言葉は、他の者の耳に届くこと無く、2人の間にだけ響く。
「多分、二度とこんな事はないでしょうね。」
「流石にないだろうな。」
そう言って笑い合った。
「……なんだと。」
佐和は手元のカードを見て頭を抱えた。
(帰ったよ、さっき!!)
双子、と簡潔に書かれたカードを握り潰しそうになるが、抑える。
辺りを見回し、探すと、
(戸田先生と………!)
佐和はそちらへ駆け出すと見知った顔に声を掛ける。
「ハルくん!あっくん!来て!!」
佐和が伴って戻って来た人物に生徒はやや騒つく。
「借り物の内容は?」
委員が佐和にマイクを向ける。今年からの新たなルールで、朝礼台で借り物の内容まで発表させられる事になっていた。
ちなみに仙道は魚住に抱えられたまま回答していた。
「双子…。」
歯切れ悪く答える佐和に、春翔がニヤニヤと笑う。
「佐和の兄の春翔でーす!」
「同じく秋也でーす。」
陽気なツインズは奇妙な騒めきを生み出して帰っていった。
(高辻にはイケメンが寄ってくるな。)
(羨ましいわね〜)
(越野も美代も思ってねーだろ!)
(クセが強いのよ、みんな。)