*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「あれ、ここって…。」
思わず口にして、すぐにやめる。
見覚えのある景色。
「どうした、仙道。」
牧さんの声に振り返る。手配をしてくれたのは海南の総務の人だとか。
「いや…近場で合宿なんて出来るところがあるんだなぁと思って。」
「ああ、練習場と宿泊施設があまり離れていると困る、と無理を承知でお願いしたのだが、なかなかいいところを手配してもらえた。」
それに相槌を打ちながら施設を見上げた。
何回か近くに来たことがあったから驚いた。
「じゃあちょっと触るね。」
「うー…。」
佐和はトレーニングルーム近くのベンチに横になり、疲労の具合や痛みの確認をしていた。
「佐和ちゃーん。痛い?」
「すこし…。」
椙山の問いかけに佐和はくぐもった声で返す。
「あちー。」
「お?なんだ?」
「ぬ?」
聞き覚えのある声に佐和は視線をそちらに向ける。
(あれは湘北の…)
「あ、ごめんね、変なことしてるわけじゃないから…」
椙山が笑いながら彼らに声を掛けると、おや、と何かに気が付く。
「あれ、花道!」
「スギちゃんじゃねーか!」
「なんだよ花道、知り合い?」
「うむ、リハビリで少し世話になった。」
「初めまして、椙山です。」
スギちゃんって呼んでね、といつも通り笑う。
(桜木くんに、宮城くん、それから、三井さんだ。……かっこいいなぁ。)
桜木が佐和をみると、
「どこかで…。」
と思案する仕草を見せる。
「花道、良かったらこの後少し診ようか。」
「お、良かったじゃねえか。折角だからみてもらえよ桜木。」
「ですね。三井サンみたいになったら面倒だしみてもらえよ。」
「あぁ?」
そのやりとりに椙山と佐和は笑い、また確認を再開する。
「痛かったら遠慮せず言ってね。」
「はーい……ぎっ」
「力抜いてねー。」
「うっ……痛ぁ…いっ。」
3人はその声に思わず赤面し、ガラス張りのトレーニングルームの方に目をやった。
その時、また別の声が降ってくる。
「エロい声出してんなと思ったら佐和じゃん。」
「え、え?藤真さん?あだっ」
佐和が声の方に目だけで見上げると、汗だくの藤真が見下ろしていた。
「ごめんね、なにもやましいことはしてないから。」
「洋ちゃん先生、ギブ!」
椙山が笑いながら答えると、確認を続ける。
「藤真、どうした。」
「すまん牧。知り合いが居たんだ。」
「…ん?ああ、佐和さん、だったか。仙道がそう呼んでいたな。」
「なんだよ、お前も知ってんのか。」
ち、とばかりに藤真が鼻を鳴らす。
桜木がそのやり取りを聞き、あーーーー!と声を張る。うるせぇぞ、と三井と宮城がそれを窘める。
「センドーの彼女だ!」
なにィ!?と、今度は三井と宮城が大きな声を出す番だった。
椙山は佐和の確認を終えると、床にマットを敷いて桜木を呼ぶ。佐和は起き上がり、姿勢を正して向き直る。
「お疲れ様です。みなさんで練習ですか?」
「ああ、合宿だよ。国体のためのな。」
牧が笑顔で答える。
「あ、結構近場でやってるんですね。」
(そういえばやるとは聞いてたけど、場所聞いてなかったなぁ。)
佐和も笑顔で返す。
「それよりお前、なんか羽織ったら。そんなに肩出してると仙道の」
「俺がなんですか?」
藤真の後ろからひょっこりと顔を出した仙道に佐和は驚く。仙道も同様に驚くが、おつかれ、と笑った。
藤真が溜息をつくと、床に落ちていた佐和のタオルを肩に掛ける。
「仙道の機嫌を損ねる。」
「仙道もやることはやってんだな。」
体育館へ戻る道すがら、三井がにやにやと笑う。
その言葉に藤真も、ちゃっかりしてるよなぁ、と加わる。
「俺、正直最初は男かと思ったけど、いやもう全然、健気っつうか、超良い女。」
「藤真さんがそう言うってことは相当いい子なんスね。」
宮城がヒュウ、と小さく口笛を吹く。
「照れるなぁ。」
そう言いながら仙道は苦笑する。
「そういえば、インターハイは出られたのか。」
牧がそう尋ねると、
「出ましたよ。個人の部で3位でした。」
と仙道は答える。
牧は、すごいな、と驚き、微笑む
「でもその分、今あんな感じなんですけどね。」
心配そうな表情の仙道を見て、牧は、お前もそんな表情をするのか、と微笑んだ。
「なぁ、仙道、お前佐和の体のどこがいいんだよ。」
唐突な藤真の質問に仙道は、はぁ?と素っ頓狂な声を上げる。
「俺は鎖骨から肩の骨格にきた。あれやべえな、鍛えてるとあんな感じ?」
お構いなしに藤真が言うと、三井は
「俺は腕だなー。やっぱ男に比べると華奢だわ。縋られたらスゲーいい。」
「三井サン、やらしい。」
宮城が横槍を入れると、お前はどうなんだよ、という三井の問いかけに
「うなじ。」
と即答する。
「人の彼女つかまえてそういう話はやめてもらえませんかね。」
「そういうお前はどうなんだよ?」
藤真がにやにやと見上げてくるので、仙道は不敵に笑うと
「腹筋ですよ。」
と答える。その回答に藤真が溜息をつく。
「……お前さぁ、ヤってますって言ってるようなもんだろ。」
その言葉に仙道はにっこり笑って
「本当のこと言うと思います?内緒ですよ。」
と言う。
「食えねえ野郎だな。」
藤真は舌打ちした。
(仙道、美代から佐和にバレるのと、佐和から美代にバレるの、どっちがいい?)
(……聞いてたのか、神。)
(聞こえてた。)
(どっちもやめてくれ、後生だから。)