*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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固定の装具が取れてからしばらく経ち、
洋ちゃん先生から提案があった。
「そろそろ剣道やろっか。」
…ん?
やれないんじゃなかった?
どういう意味?
「どのくらい動かせるか、可動域の確認しないと。本番いきなり動かせるわけないじゃーん!」
この人、ほんとマイペース。
ちゃんと言ってよね!
「と、いうわけで。千尋、協力してな。」
「いいけど。」
洋ちゃん先生の提案からまた更にしばらくして、ヒロ兄が呼ばれる。
素振りを何日か試して、問題がないとわかったら実践的な部分の確認をすることになったのだ。
「千尋なら加減もできるだろ。さ、着替えて下さ〜い。」
久し振りの感触に思わず笑みが溢れる。
やっぱりいいなぁ、この感じ!
「へえ、じゃあいい感じに仕上がってきたんだな。」
リハビリの後はいつも通り部活に顔を出す。
バスケ部も同じ時間帯の練習だったので、これまたいつも通り彰を待って一緒に帰る。
「うん。ヒロ兄と少し稽古してみたけど、違和感は少ないかな。少し、怖いけど。」
「前進してるな。」
「うん!」
彰はいつも通り笑ってる。
その表情も、声も、本当に心地いい。
「彰はこの夏どういうバスケ予定?」
「バスケ予定って…。」
苦笑いしながら予定を確認している。
「部活の合宿だろ、練習試合もあったかなぁ。あ、8月の終わりに国体の合宿やるって牧さんが言ってた。」
「そうなんだ!すっげバスケ充。」
「佐和こそ剣道充してんだろ。」
あ、笑ってる笑ってる。
国体の方も合宿なんかやるんだ。
「そうだけど。今年は合宿行かずに洋ちゃん先生とトレーニングしつつ身体を休めることになりそう。」
そうだよな、とにこにこしてる。
いいなぁ、ずっと眺めていたいな。
そうだ!と何か閃いてこちらを見下ろす。
「おお、なに、見てた?」
「見てた。なに?」
照れるなぁ、とか言ってる。思ってんの?
「越野が言ってた心に決めた奴って、幼馴染なんだって。」
「わー、可愛らしい。付き合ってるの?」
「まだ。でも花火大会一緒に行くらしい。」
「甘酸っぱい!」
「だよなぁ。」
そういえば。
「彰の初恋っていつ?」
「俺ぇ?あー…どこからカウント?」
「さあ…。」
んー、と唸る。思い出してんのかな。こいつ早そうだなー。
「年長…いや小1かな?」
「それカウントされるやつ?」
「するする!だって、女の人のこと綺麗だなって初めて思ったもん。」
「年上?」
「姉ちゃんの友達。」
姉ちゃん!?お姉さんいるの!?
「お姉さん居たんだ!」
「言ってなかったっけ、10コ上の、」
「10コ!?」
歳離れてんじゃん!と驚いていると、あはは、とか笑ってる。
「佐和程じゃないよ。」
「世間的には歳離れてるって言うよ。」
てゆーか…
「そのお姉さんの友達ってことは…かなり歳上じゃん、マセガキ。」
「初恋なんてそんなもんだろ。しかも姉ちゃんより更に歳上だぜ。佐和は?」
もうそれ恋じゃないんじゃないか…?
「私は…高学年くらいかな。」
「リアルだなー。」
「リアルな話してんだろ。」
「初チューは?」
「……。」
なんでそんなこと聞くんだよ…。
あんま思い出したくないんだけど…。
「俺?」
「違います。」
残念、とか笑ってら。自分も違うだろ。
「中学…の時付き合ってた人。」
「へぇ、そうなんだ。どのくらい付き合っ」
「待て待て、彰の番。」
そこ掘り下げんなよ。
「んー小学生だったかなぁ、中学…?」
「覚えてないんだ。」
「ないない、事故みたいなのもあるし。」
……なんだそれ。すげえ気になる。
「で、どのくらい付き合ってたの?」
「ええー?…1年くらい?」
「チュー以上はして」
「ないよ、私がそういうのついていけなかったから!」
って、なに言わせるんだこいつは!!!
「どんな人?」
「え?あー…。」
彰も見たことあるよ。
そう言ったら、すっごく驚いた顔をした。
「誰!?」
「す、須藤先輩…だよ…。」
うっわ、すげー顔してる。見たことない顔だ。そんな驚くこと?私が誰かと付き合ったことあるってこと自体が驚きなのか?気持ちは分かるが失礼だろ!
「手、出してくる男、居なかったって…。」
「キス以上は、出されてないよ!たくさん待ってくれた。結果は、まあ、そういうことなんだけど。」
須藤先輩は剣道教室が一緒で、付き合いは長くて。幼馴染みとか友達とか先輩後輩とか彼氏彼女とか、名前は変わっても関係はあまり変わらなかった。だから、彼氏彼女はやめて先輩後輩に戻っただけ。
それだけ。
そう説明したけど彰は釈然としない顔で「ふーん。」と言った。
「私の過去全部に嫉妬するつもりかよ。」
「そうかも。」
みっともねーかな、と手で口を覆う彰に、思わず笑ってしまう。
「光栄です。でも本当にもう何もないよ。克ちゃん彼女居るし。」
それはもう、ラブラブのラブだよ、と言ったら彰は笑った。
「女子の部長さんに始業式の時言われてたよな、馬に蹴られて彼女に振られて下さい、って。」
「そーそ。流石にあの時は怒られたってさ。」
「俺もちょっと焦ったけど。」
「うそ。」
「ほんと。」
そう言って髪を梳く手が気持ちよくて。
「嬉しい。」
思わずそんなことが口をついて出た。
本当に嬉しかった。
(姉ちゃん結婚するんだよ。お盆に式ある。)
(珍しい。お盆に?)
(親戚と地元の友達だけでやるんだって、面倒だから。)
(彰も部活ないしね。)
(あってもいいけどね。)
(……って言うよね。)