*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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バスケ部の、決勝リーグが始まった。
武里とやる日は日曜だから最初から観に行けそうだと彰に話したら、
「んー、どうせなら美代ちゃんと海南見てきたら?」
と言われてしまった。
「多分、俺あんまり…あはは。」
と濁していたし、越野も
「まあ、堅いんじゃね?」
と言っていたので、なんとなく察した。
ムラのあるやつだな、本当に!
「と言うわけで、海南見にいこ。」
「い、いいの…?」
「いいよ、本人がそう言うんだから。」
佐和は、ふん、と鼻を鳴らす。
「あはは、佐和不機嫌そうだなー。」
「別に。」
美代がその様子にニヤニヤと笑う。
「素直に言えばいいじゃない。私は彰の応援に行きたいな、って。」
「バッカじゃないの!」
佐和が反論するが頬が赤い。
「えーそう言う事なら来てよ〜俺頑張っちゃう。」
「お前はハナから頑張っとけよ。」
おどける仙道にすかさず越野が突っ込む。
「とにかく、私は美代と海南湘北戦を観に行くから。」
試合当日、会場は既に大入りだった。
「座るとこあって良かった。」
「当たり前だけど、陵南の制服は浮くな。」
「会場違うもんね。」
佐和と美代は比較的空いてるブロックの席に座る。
アリーナでは選手たちがアップをしているところだ。
「あ、赤頭くんにイケメンくんだ。」
「佐和知り合い?」
「ううん。練習試合に来てたのを見かけただけ。」
海南の選手と賑やかしくやり合っているのを見てひとしきり笑うと、アップが終わり、いよいよ試合が始まる。
美代は手を握りしめて、コートを見守っている。その様子を見て佐和は微笑んだ。
(宗、頑張れよ。)
「なあ、さっき向こうにいた陵南の子、可愛くなかった?」
「わかる、美人系2人だった。」
「でも陵南は今日武里戦だし会場違くないか?」
騒めきの中で耳に留まった会話。
試合を終えて海南湘北戦を観に来ていた仙道が振り返る。
誰が言ったかは分からない。
だが、誰のことを言っているのかはわかった。
(どこにいるんだ。)
試合を見ながら、たまに会場を見渡すが、人が多くてなかなか見つからなかった。
「あー……しんどかった。」
試合後、佐和と美代は1階に降りて自販機の前のベンチに座っていた。
「宗、すごかったな。」
「うん。相変わらず綺麗なフォームだったけど、磨きがかかってた。」
「外してなかったよな?」
「そうなのよ!すごい…。」
人が捌けるのを待ちながら、2人は話していた。
「あ、彰からだ。」
「何て?」
「どこにいる?って…」
「ねえ、お姉さんたち陵南だよね?」
唐突に話し掛けられ、2人は見上げる。
全く知らない男性2人組が声を掛けてきた。
「陵南って今日会場違くない?」
「海南か湘北に知り合いがいるクチかな?」
「今日の試合面白かったよねー!ここじゃなんだし、どっかで話さない?カフェかファミレスどっちがいい?」
畳み掛けるように話す2人に、佐和と美代は黙って聞いていたが、すぐに携帯に目を落とす。
「ちょっと電話してみるわ。」
「そーね、なんか面倒だし。」
佐和が携帯を耳にあてるが、男2人はめげずに話し掛けてくる。
「…あ、今いい?1階の自販機のとこにいるんだけど。…ああ?知らない人だよ。」
「美代、隣いい?」
男2人の後ろから、さらに背の高い男が顔を出す。
「宗一郎。」
海南のジャージを着た神が男2人の横をすり抜けて美代の横に座る。
「お疲れ様。」
「ありがとう。」
美代の背中に手を回すようにベンチの背もたれに頬杖をついて「この人達誰?」と尋ねる。
「あ、いたいた。探したよ佐和。」
通話を切りながら仙道がやってきて佐和の隣に座り、神に倣って佐和の背中に手を回すように背もたれに肘を掛け、男2人を見て「あ、口説いてた?悪い。」と笑う。
「海南の神と陵南の仙道…!?」
「どういう事だこれ…。」
そんなことを言い残して去っていった。
「あはは。どういう事って。」
仙道が笑う。
「笑い事じゃないだろ。大丈夫?2人とも。」
神は気遣って美代と佐和を交互に見る。
「大丈夫、ありがと。」
「宗、お疲れ。」
彰も、佐和はと隣の仙道を見上げる。
「ん、俺はまあまあお疲れ。」
「はいはい。」
呆れる佐和を見て仙道は微笑むと、神に向き直る。
「湘北は強かったろ。」
「ああ。陵南と1点差ってのは本当だったんだ。」
疑ってたのかよ、と仙道はからからと笑う。
神は立ち上がって自販機で飲み物を買う。
それを美代と佐和に渡し、自分の分も買うと、仙道に振り返る。
「来週はよろしくね。」
そう言って去って行った。
「相変わらずスマートだなぁ。」
佐和が呟く。
美代はその背中を見送った後、飲み物に目を落とした。
「…俺の分は無し?」
(敵に塩は送らない、ってことだろ。)
(なるほど!)
(なんで嬉しそうなんだよ。)