*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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こんなことをしでかすとはおもっていなかった。
佐和は朝練を終え、急いで教室に向かっていた。すると同じように急いでいる人影を見つけた。
「げっ、仙道。」
「おっ、高辻おはよ。」
(こんなバカでかいやつと一緒にいると目立って仕方ねえ!)
見つかる前に教室に、と思っていたが残念ながら生活指導の教師に見咎められる。
「高辻じゃねえか。制服はどうした。」
「あ、ちょっと、のっぴきならない事情で…。」
インターハイ出場が決まったお陰で顔が売れてしまい、教師にも把握されてしまっているのが仇になった。しかも傍らにはこちらもまたちょっとした有名人。
(制服忘れたとかシャレにならない…!)
「なんだ?どんな理由だ?」
「その……」
困り果てた佐和を見た仙道は「もしかして、」と閃いたように口を開いた。
「あそこの水道、勢いすげーもんな。高辻もやっちまった?俺もなんだよな〜お陰で練習着ずぶ濡れだよ。制服に着替えてから顔洗うのはやめとけよ。」
部室にでも乾かしてんの?と仙道が佐和に目で合図を送る。
「そ、そーなんだよ。あんな勢いで出てくると思ってなくてさ。そのままだと風邪ひくし、仕方ないかなって…。」
なんとか誤魔化して教室に滑り込む。そして席に着くなり顔を見合わせて笑ってしまった。
「制服忘れるかな、普通。」
「仕方ないだろ、朝はこの格好で来てんだ。」
「部室のロッカーにでも制服入れといたら。」
「剣道部の臭いナメてんのか。」
ひとしきり笑い、落ち着いたところで佐和が口を開く。
「ありがとな。助かった。」
「お役に立てて光栄です。」
仙道も笑顔で返すと、思い出したように話し始めた。
「インターハイ、逃した。」
「そうなんだ…おつかれ。」
「ありがと。」
「やっぱ強いの?」
すると、珍しく仙道が饒舌になる。
海南の牧さんがどうとか、翔陽の藤真さんがこうとか。佐和にはさっぱりわからなかったが、仙道の声は心地よかったし、話も面白かったので聞いていて楽しかった。
「なんか面白そう。試合観に行きたいな。」
「ん、来てよ。待ってる。」
本鈴が鳴り、教室に入ってきた担任が佐和のその出で立ちを指摘すると、佐和は仙道の作り上げてくれた設定を説明し、その場を凌いだ。振り返って小さく「サンキュ」と伝える。
仙道は満足そうに笑っていた。
(とりあえず藤真さんという人が美形というのは残った。)