*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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"みんなの柱"は誰に支えてもらえばいい?
辿り着いたのは、埠頭。
「仙道?」
「よく釣りに来てるんだよ、ここ。気持ちよくない?俺は好き。」
「知らなかった。」
「佐和は忙しいから。」
「…越野がサボるなってよく言ってる理由がわかった。」
顔を見合わせて笑う。
仙道のサボりの根源を知った佐和は、それを咎めなかった。
「リセットする場所?」
「……まあ、そんなとこ。」
風が強いからスカートで来ちゃダメだよ、と笑う仙道に、そうだね、と佐和は笑った。そして海の方に目を遣る。
「暗いね。」
「昼間の晴れた日はすごく綺麗だよ。また来よう。」
「うん。」
しばらく2人とも黙って海を眺めていたが、佐和が口を開く。
「……なんで、怪我なんかしちゃったんだろ。」
「どうして今なんだろう。」
ぽつりぽつりと溢れる言葉を、仙道はひとつ残らず聞いていた。
「インターハイ、間に合わないかも知れない。」
「全国都道府県対抗の試合だって、県大会優勝したから、出られるはずだった。」
「国体だって今年は候補に入れてもらえてるって。」
「なのに、」
「なんだって、今なの……!」
「ただ見てるのなんて、苦しいだけだよ!」
やりきれない想いが涙になって溢れる。
(そんなに色んなものを、目標を、持っていたんだな。)
仙道は後ろから、腰のあたりに手を回して抱き締める。
「今、俺しかいないよ。」
その言葉を皮切りに、佐和は声を出して泣いた。
「……みっともないね。」
「そんなことないよ。」
夜道を2人で歩く。
「……ありがと。スッキリした。」
「それなら良かった。」
「彰も、ちゃんと頼って。」
「ん?んー。」
「気の利いたことは出来ないけど、側にいるから。」
「今その言葉が一番効いた。」
「そう?」
「うん。佐和が側にいてくれるって、そう思うだけで俺、相当大丈夫みたいだ。」
「……そっか。」
目を腫らして静かに笑う佐和に、仙道は安堵した。
「ね、彰、少し屈んで。」
「ん?こうかい?」
佐和は右手を仙道の首に回す。
「私も彰が側にいてくれれば、相当大丈夫。」
「…ありがと、大好きだよ。」
そう言って、体を離した。
「……はぁ。」
仙道は溜息をつく。
「なんだよ。」
その様子に佐和は訝しむ。
「怪我がなければ今すぐ抱きたい。」
「残念でした。」
項垂れる仙道に、佐和は、にしし、と笑った。
「仙道ももうすぐだね。」
「そーだなぁ。」
「緊張する?」
「どうかな。こればっかりは始まってみんと。」
「吉兆、戻ってこれるといいね。」
「だな。アイツいるとパスがますます面白くなる。」
「オフェンスオバケがパスに目覚めた?」
「なんだそりゃ。おもしれーよ、アシスト決まるとそれはそれで気持ちいいっつーか。」
話しているうちに、佐和の家に到着する。
「鞄ありがと。また明日ね。」
「んー。…あのさ、佐和。」
「なに?」
仙道が身を屈めてキスをする。
「困った時とか辛い時は、ちゃんと俺に言って。一番に心配したい。」
「…ありがと。彰もちゃんと言って。私だって一緒だよ。」
「ん、わかった。ありがと。」
仙道はそう言うと、片手を上げて帰っていった。
(家の前であんまイチャつくなよ。)
(ヒロくん…見てたの?)
(見てたんじゃない。見えた。)
(はぁ…。)