*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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なんだこれ。
動かない。
痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「あれ?佐和来てないね?」
美代が仙道に話し掛ける。
「見てねぇな。」
「連絡は?」
「ない…美代ちゃんも?」
「うん。」
美代の返事を聞くと仙道が立ち上がり、隣のクラスへ行くと剣道部の女子を呼び止める。
「佐和どうしたの?」
彼女は驚き、やや言い辛そうに口を開く。
「え、仙道聞いてないの…?実は、」
昼過ぎに佐和が登校した。
左の肩から腕にかけて装具を着け、固定している。
「あ…おはよ…。」
「おはよ、じゃないわよ…!」
美代が顔を青くして迎える。
「仙道が剣道部の子から聞いてきたのよ。肩脱臼したって!」
仙道と越野は黙って見ている。
佐和は苦笑しながら口を開く。
「試合中に相手の子と衝突したら転んだんだ。その時変な風に倒れちゃって…。」
今日は検査の為に病院へ行ったと言う。
「骨折はなくて、でも1ヶ月くらい安静にしなきゃいけないんだって。手術はしなくて大丈夫だよ!クセにならないように気を付けて、リハビリして…。」
ごめん、と言って続ける。
「詳しい事がちゃんと分かってからじゃないと余計に心配かけると思ったの。でも、違ったね。」
やや早口に言った佐和に、仙道が手を伸ばす。
「辛いのは佐和だろ。」
そう言って、頭を撫でた。
「部活どーすんの?」
「出るよ、やれることやる。でもたまに検査と、週3くらいでリハビリの通院もあるかな…。」
「今日は?」
「今日は部活行く。1年も入ってるし、見るのも教えるのも勉強になる。…けど、」
「けど?」
「…んーん、いまのなし。」
仙道は首を傾げたが、佐和が続きを言おうとしないので追及はしなかった。
「じゃ、帰りは一緒に帰ろうな。」
それだけ、約束させる。
『佐和は弱音吐かないんだよね。絶対エースって入部した時から言われてるせい…かな。だから、頼って来た時はお願い。…アンタも似たような境遇だろうし大変だと思うけど。』
昼間、剣道部の女子から言われた事を思い出す。
(分からなくもない…かな。)
仙道からすれば、佐和の心中を察して余りある。彼女もまた、部としてもチームとしても精神的支柱になっているのだろう。
(可哀想、とは違うんだよな。)
「高辻さんや、あれ、あれ!?どないしたんやあの怪我!」
彦一の声に、仙道は我に返る。
開放された体育館の入り口に、他の生徒に紛れて佐和が居た。
合間を見てそちらへ行くと、女子生徒が騒めく。
「佐和早かったな、もう少しかかるけど、待てる?」
「試合の後だから早く終わったんだ。大丈夫、待ってるよ。」
ん、と頷くと仙道は練習に戻っていった。
「自主練、いいの?」
「いーの。1年入ったから場所ねーし。」
手は繋がず、仙道は佐和の左側を歩く。
「肩、痛いの?」
「ん?ああ、まあ、ね。」
「…少し遠回りしていい?」
「いーよ。」
「鞄持つ。」
「いいって。」
「ちょっとは甘えて貰えると嬉しいなぁ。」
「はは…じゃ、お願い。」
仙道の申し出に、佐和は笑って応じた。