*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「さっき、パン屋のお姉さんに夕飯誘われたんだよ。」
越野がそう言って、植草と福田、日下部と一緒に由佳さんの乗ってきたワゴン車で帰っていった。
「お前は高辻待つだろ。先行ってんな。」
おう、と返事をして佐和の方を見ようとしたら、春翔さんと秋也さんが近寄って来る。
「よーお彰!」
いきなり肩を組まれて驚くが、直ぐに笑顔で応える。
「初めまして。」
「春翔、高校生の方がよっぽど礼儀正しい。」
どうやら肩を組んできた方がが春翔さんらしい。
秋也さんが、丁寧に紹介してくれる。
「佐和の事、いつもありがとな。」
「ビビるだろ、あんなの見たら。」
「驚きましたけど…佐和さんが頑張ってるのが伝わってきて、励みになります。」
俺の回答に、おお、と2人が声を揃える。
「驚いた。あれ見てそう思う?」
「やっぱハイレベル男子は違うな。」
安心安心、と言って2人は去って行った。
ハイレベル男子…?
「2人と何話してたの?」
帰り道、佐和は仙道に尋ねる。
「試合の激しさに驚いたんじゃないかって言われて。」
「あー。あれ見て引かない?思った以上に激しくて怖いって言われたことある。」
「男に?」
「そー。」
「他の男と比べないでくれるかな?」
仙道はからかうように笑った。
すぐにいつもの笑顔に戻ると、
「それは剣道の話だろ、佐和のことじゃねえじゃん。」
と言った。
「だよなぁ。彰分かってるー。」
佐和は、ぴょん、と軽く跳び、仙道に体を当てる。
「…って、今日ちゃんと腹に落とし込んだから。」
「倉庫でのこと?」
「うん。」
「私も。どっちの彰も、彰。」
「そういうこと。」
「どっちでも好き、どっちも好き。」
「そうなんだけど…なんか大胆ですね、佐和さん?」
「そう?思ったこと言っただけなんだけど。」
佐和は、アドレナリン出てるせいかも、と笑う。
「なんかわかんない?試合の後とか、ハイになるっていうか、良くも悪くも感情的で衝動的になる。」
「あー、わかるかも。」
うんうん、と2人で頷きあって歩く。
「ところで、お兄さんに言われたんだけど、ハイレベルって何?」
「ああ、彰ってどんなやつって言われたから、バスケが超高校級のハイレベル男子って言っといた。」
「多分、ハイレベルの掛かる言葉に食い違いがあるな。」
「?」
「こっちの話。気にしないで。」
「ああ、うん。」
(佐和はバスケのことをハイレベルって言ってくれてんだろうと思うんだけど。)
2人が帰宅すると、仙道は先にシャワーを浴びて来るように由佳に言われ、その後に佐和がシャワーを浴びて食卓に着く。
人数が多いので、リビングに高校生、ダイニングに佐和を除く高辻家が座っている。
「佐和、誕生日おめでとう。」
その千尋の言葉に、皆が口を揃えておめでとうと言う。
「……え。」
佐和が目を丸くする。
「今日何日?あれ、そうだっけ?」
誕生日を迎えた本人がその有様で、笑いが巻き起こる。
「佐和、あんた仙道に誕生日言ってなかったんだって?」
「お互いにそんな話をしたことないや。」
「ええ!?ほんとに!?仙道も仙道じゃん、あんたいつなのよ!」
美代が仙道に話を振ると、彼はきょとんとし、
「俺は2月14日…。」
と答えた。
「え!?そうなの!?」
佐和が驚いて声を上げる。
由佳さんが、まあまあ食べましょうよ、と料理を勧めた。
「ごめん。さっき教えてもらったんだ。」
仙道が心底申し訳なさそうに謝る。
「知らなかったんだからしょうがないだろ。」
「聞きもしなかっただろ、俺。」
「そんな暇なかったよ私たち。私こそ、知らなくてごめんな。」
しゅん、とする仙道をみて、佐和も謝る。しかしすぐに笑って仙道の背中をさすって、元気出せよ!と笑っている。
「俺らまで誘ってもらって悪いな。」
「まさかこんなことになるなんて。」
越野と植草が笑いながら言い、福田もつられて笑う。
「みんな、いつでも来てね。」
由佳が料理を運びながら声を掛ける。
食事の途中から今日の佐和の試合の話になり、ダイニングでは熱く盛り上がる。
一応そこに参加していた佐和は苦笑いして逃げて来る。
「熱いな。剣道一家?」
越野が尋ねると、
「そー。お父さんがやってた影響で子供もやってるって感じ。」
と佐和が答える。
「剣道教室も通ってるもんな。」
福田がそう言うと、佐和は、 最近は殆ど行けてないけどね、と笑う。
「なー高辻、卒アルみせろよ、卒アル!」
そろそろ話題が尽きてきたのか、越野が口を開く。
「ええ〜…。」
「あ、俺も見たい。」
「でも…。」
「いいんじゃない、見せてあげれば。」
美代がそう言うと、佐和は少し迷ってから部屋に行き、アルバムを持ってくる。
「おお、なんか幼い!」
「高辻は美少年入ってんな。日下部は相変わらず大人びてて美人だ。」
「あれ、これ海南の神じゃねーの?」
「本当だ、今よりかなり細いな。」
男たちが思い思いの感想を言っていたが、最後の仙道の言葉に美代が反応する。
「今は違うの?」
「ん?ああ、ウィンターカップで見た時はこの時に比べたら大分体出来てる感じしたな。3Pシュートをガンガン決めてた。」
仙道が説明すると美代はほっとしたように、そっか、と呟き、またアルバムに目を落とした。
佐和がアルバムを部屋に戻しに行く時、仙道がついてきた。
「美代ちゃん、神となんかあったの?」
「……美代と宗は付き合ってたんだよ。高校入って少ししたら別れちゃったけど。」
部屋に入ると、棚にアルバムを入れ、佐和が振り返る。
「来年はちゃんとお祝いしよ、彰の誕生日。」
「来年も一緒に居られるってこと?」
「…違うなら、いいけど。」
「嘘だよ、ごめん。俺は来年も再来年も一緒に居たいよ。」
仙道は佐和の額に口付ける。
「…てゆーかさりげなく入って来てんなよ。」
「佐和の部屋初めて。写真とか飾るんだ。」
剣道の大会の写真や、体育祭での借り物競争での美代とのツーショット、文化祭のクラスメイトとの写真のなどの中に横浜で撮った2人の写真を見つけ、仙道は微笑む。
「いいから、戻ろ。」
少し気恥ずかしくなった佐和は仙道を押して部屋から出た。
「仙道、俺ら泊めてもらうことになったんだけどお前どーする?」
「え、じゃー俺もいいっすか?」
「良いわよ。お義父さんもお義母さんも大歓迎って。」
早々に両親と双子は部屋に引き上げていた。
男子高校生たちはバスケのこと、兄達は剣道部のことで盛り上がっていて、美代と由佳が片付けをしている。
「ごめんね、手伝う。」
「主役は黙って座ってな。」
仙道は、洗います、と腕まくりをした。
「ケーキあるから食べてて。」
由佳はカット済みのフルーツタルトを仙道に渡し、持っていくように促した。
(由佳さんってすごい。)
(仙道の言いたいことわかる、私もそう思う。)
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仙道さんの誕生日は非公式です。
お借りします。