*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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色素の薄い、ベリーショートの髪。女子にしては長身。目元は凛々しく整っており、中性的なその見た目に加えて、はっきりとした物言いをし、明朗快活。
そんな高辻 佐和という女子はどちらかというと男友達のような空気を感じさせた。
いつから見られていたのだろうか。
足を滑らせた時にすかさず駆け寄ってきたそのクラスメイトは、いつもと違って酷く弱々しく見えた。問い掛けても答えてくれるとは思わなかったが、聞かずにはいられなかった。
やはり答えてはもらえなかったが。
着替えを済ませて体育館を後にする。既に日は落ち、辺りは暗くなっていた。
「仙道、これ。」
差し出されたのはポカリスエット。
「くれるの?サンキュ。」
フタを開けてひと口。ぬるくはなっていたものの、乾いた喉を潤すには十分だった。
「高辻は練習してたの?」
「うん…まあ、そんなとこ。」
佐和は曖昧に答えると、立ち止まる。仙道も同様に立ち止まった。ややあって、佐和が口を開く
「仙道見てたら、自分がバカみたいだなって思った。」
「俺?なんで?」
「…なんとなく。」
また歩き出した佐和に追いつくように仙道も歩き出す。
「なんとなく…何かに押し潰されそうって感じてて、何も上手くいかなくて、やさぐれてたんだよ。」
でも、と佐和は続ける。
「仙道が真剣に練習してんの見てたら、自分もやさぐれてる暇あったら稽古しなきゃなって。」
悩んでんの馬鹿馬鹿しくなった。と自嘲気味に笑った。
「高辻、インターハイ行くんだろ。」
「え?あ、ああ。そう…。」
「そのプレッシャー?」
「そうなのかな。中学でも全国には出てたのに」
「なんだか…怖くて。」
自分の力が通用するのか。先輩たちにも歯が立たないのに、自分が進んでしまっていいのだろうかと。考え始めるとキリがない。
「怖くていいんじゃないか。」
「え?」
仙道は笑顔で佐和の方を見た。
「知らないこと、初めてのことは、誰でも怖いよ。」
「仙道も?」
「俺をなんだと思ってるんだよ。」
眉尻を下げ、困ったように笑う仙道に、佐和も笑った。
「ごめん、愚痴って。」
「んーん、元気出て良かった。」
「仙道頑張ってるし、私も頑張ろ。」
「応援してる。」
「私も仙道応援してるからな。」
今度の予選頑張れよ、と佐和が拳を突き出す。おう、と仙道がそれに応じて打ち付けた。
(高辻をこんなに近くに感じたのは初めてかも知れないな。)