*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「……ね、何があった?美代ちゃん。」
仙道は、立ち上がろうとしていた女子に手を差し伸べながら美代に声を掛ける。
女子が立ったのを見て手を離すと、倒れていた椅子を元に戻して、自分の席に座る。
「あ……えっと、」
「ああ、ごめん。」
美代が少し躊躇っているのを見て、先程立たせた女子を見遣る。
「俺もさ、腹が立たないわけじゃないんだ。」
足を組んで、頬杖をつく。口元は笑っていたが目は笑っていない。
その女子は目をそらすと、そのまま教室を出て行った。
「…で、何があったの美代ちゃん。」
「…話すから、食べながら聞いて。」
クラスメイトの視線を余所に、仙道は美代に話を促した。
話を聞き終わり、仙道は目を瞑って眉間にしわを寄せる。
「俺がフラフラしてるから。」
「それは否めないけど、風評被害だよ。」
「流石に俺も腹立った。」
美代と越野がそれぞれ感想を言うと、仙道はゴミを袋にまとめてゴミ箱に放る。
綺麗な放物線を描く。
「ゴミにはもったいねーくらい綺麗な軌道だな。」
「おい佐和、いつまでそこに居るつもりだ。」
階段下のスペースと商品のダンボールの陰に佐和は身を隠すように座っていた。
千尋は呆れながら片付けをしている。
「彰と喧嘩でもしたのか。」
「違う。普通に腹が立ったのと、自己嫌悪。」
「なんだそれ。」
「ちょっと揉めて、カチンときたから、八つ当たり半分で怒っちゃった。」
「誰に。」
「よく知らない女の子。」
「……お前が女子に怒るんなら、まあ、それなりに理由はあったんだろうとは思うけどな。」
作業の手はそのままに、妹の方をちらりと見る。佐和は膝を抱えて、その膝に顔を埋めている。
「彰。」
「千尋さん……佐和見ませんでしたか。」
仙道が息を切らしてやって来る。その声に佐和は体を小さく震わせたが、息を殺していた。
「なんだ、一緒じゃないのか。」
すっとぼける兄の声に、佐和はぎゅっと目を閉じる。
(ありがとう…。)
仙道は千尋の後ろの方を少し眺めたが、
「……ちょっと見失って。探してるんです。」
「そうか、悪いな。」
「もし見たら、俺が探してたって伝えてもらっていいですか。」
「ああ、わかった。」
「……武道場の辺り回るかな。」
仙道はそう言って背を向けて歩いて行った。
その姿が見えなくなってから千尋が口を開く。
「どうするんだ。」
「……行ってくる。」
佐和は兄に、ありがと、と告げると立ち上がった。
武道場の裏手、剣道部の部室がある辺りの階段に腰を下ろし、自身の膝に肘を付き、指を組む。
しばらくそうしていたが、気配に顔を上げる。
「待ってた。」
仙道は佐和を見上げて微笑んだ。
「美代ちゃんから全部聞いたよ。」
階段の一番下に立ち、振り返る。
佐和が一段、二段と階段を降り、仙道より少し目線が高くなる所で立ち止まる。
「……そう。」
佐和は徐に仙道の頬に手を伸ばし、両手で包むと軽く口付けた。
「隠れててごめん。」
そう言って直ぐに押し返す。
仙道は、ふ、と笑い、佐和の手を引いて抱き寄せた。
「いいよ。」
そう言って、もう一度唇を重ねた。
「俺の為に怒ってくれて、ありがとう。」
「本当は、仙道のこと悪く言われて腹が立ったのもそうなんだけど、」
少し言い辛そうに、歯切れ悪く話す、
「……イラついてたのもあったから、八つ当たりなんだよね。」
佐和の言葉に仙道が驚く。
「何にイラついてたの?」
「……なにに、といわれると…女子?」
そこで仙道が察する。
「それ、嫉妬ってやつじゃない?」
「……。」
「佐和ちゃんにやきもち焼いてもらっちゃったかー光栄だなぁ。」
仙道は佐和を後ろから囲うように座っていたが、喜ぶあまり、つい腕に力を込めてしまう。離せよ、という言葉に耳を貸さない。
「俺が佐和を選んだ理由を説明したいんだけど、時間が掛かるんだよなぁ。」
「試合が始まっちゃうから困るよ。」
「でも、知りたいだろ?」
佐和の耳元で笑う。
「後で。」
「バックれんの?」
「なんでだよ。今日部活ないだろ、帰り道に聞かせてよ。」
仙道が不服そうに、ちえ、と言ったが、そのまま佐和の首筋に唇を寄せ、小さな跡を残して口角をあげた。
(ん…もう少し。)
(時間がありません!!!!)
(5分だけ。)