*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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分かってる。
すごい奴なんだって。
バスケの才能に溢れていて、
愛想も良くて、
背も高くて格好良くて、
笑顔が眩しくて、
優しくて。
その笑顔も優しさも、私にだけくれないか。
卒業式が終わった最初の金曜、球技大会は非常に和やかな雰囲気で行われていた。
「佐和!頑張ってね!」
「任せろ!」
佐和のクラスのトップバッターは女子のバスケ。
(うちのチーム勝てる!だって仲良いもん!)
円陣組んで声出しして。
佐和は気持ちが高揚するのを感じていた。
「高辻いい動きだな。」
「俺が仕込んだから。」
「お前が言うと凄くやらしい。」
越野が横目で睨む。仙道は、あはは、と笑った。
特に波乱もなく緒戦突破。
仙道たちはハイタッチをする佐和たちに目を細める。
(楽しそうだなー。)
体育館の外からクラスメイトが仙道を呼ぶ。
「俺行ってくるわ。」
「おう、手ぇ抜くなよ。」
はは、と笑う仙道に越野は手を振る。その背中を見送るとそ佐和に向かって「おつかれ!」と声をかける。
「サンキュ!」
「男子のバレー、もうそろそろ試合だから!」
「わかった!」
その言葉に女子たちも色めき立ち、いそいそと引き上げる。その様子に、佐和は小さく息を吐いた。
(器用だなー。)
男子のバレー経験者は特に居ない様だったが、上手くまとまり、得点を重ねていく。
(楽しそう。)
佐和は、クラスメイトと楽しそうにじゃれ合う恋人を見つめ、目を細める。
それと同時に、コートの周りのギャラリーに溜息をつく。
(すごいな、2年生まで来てる。)
佐和は、なんとなく見るに耐えなくなり、美代の試合がある隣のコートに移動するふりをして、その光景に背を向けた。
その姿を、仙道は横目で見ていた。
「あっはは、越野、超狙われてんじゃん。」
「でも軽やかだね〜。ホイホイ避けてんじゃん。」
佐和と美代がドッジを応援していると、池上が声を掛けて来た。
「お疲れさん。越野すばしっこいな〜。」
「池上さん!お疲れ様です!」
「高辻、バスケ上手いな。」
池上の言葉に、隣に居た魚住も頷き、やったことあるのか?と尋ねてくる。
「いえ。でもバスケ部に教えてもらいました。」
「越野は分かるけど…まさか仙道も?」
「はい。」
「あいつ、人に教えられるのか…?」
先輩2人が心底驚いた顔をしているので、佐和と美代は顔を見合わせて笑った。
「仙道遅いね。」
「売店混んでんのかな。」
「食べ終わっちまうよなぁ。」
昼休み、植草の姿はなかったが、いつも通り昼食をとっているところに女子が教室に入って来た。
仙道は売店に行っていて不在だ。
(あれ、バレンタインの時の子…かな。)
佐和はサンドイッチの最後の一口を飲み込むと、隣の空席を指し、売店に居なかった?と尋ねる。しかしその女子はそれには答えず佐和の前に立つ。
「仙道の彼女って、高辻さんなの?」
クラスの目が一気に佐和に集まる。
「そーだけど。」
集まる視線はどこ吹く風で、佐和は紙パックのジュースを飲み干すとゴミを袋にまとめる。
「なんでわんぱく弟なのよ……。」
とその女子は呟くと、佐和をキッと睨む。
佐和は後ろ頭をかき、またか、と溜息をつく。
「なんであんたみたいな頭も口も悪いのがいいわけ、ほんっと趣味悪い。ヤキが回ったのかしら。」
「それどの口が言うわけ。」
机に頬杖をついてその女子を見上げる。女子は苛ついた様子で口を開く。
「あんたもどーせ遊ばれて終わるんだからのめり込まない方が身のためよ。」
「なんでそうなるんだよ。」
「女慣れしてんじゃん仙道。そういうことでしょ?」
「女癖悪いってこと?」
「じゃないの?知らないけど。」
おい、と越野が口を開こうとしたが、それより早く佐和が勢いよく立ち上がる。
椅子が倒れても気にも留めない。
佐和はその女子のジャージの襟元を両手で掴み、顔を近づける。
「……顔可愛いのに性格ブス過ぎんだろ。」
「事実かどうかもわかんない憶測で簡単に他人を貶してんじゃねーよ、ゲス。」
淡々と言うと、手を離す。
その女子は目を見開いたままへたり込む。
それから、と佐和が見下ろして続けた。
「なんで私なのか、って言ったよな。」
鋭い眼でキッと睨む。
「知るか!!!!」
怒声を浴びせ、佐和はゴミを持ち、ダンクの如くゴミ箱に叩きつけると、教室を出て行った。
「おい、佐和……?」
入れ違いに教室に入ってきた仙道がその剣幕に言葉を失い、そのまま佐和を見送る。
「……なにがあった?」
いつになく真剣な表情で、教室を見渡した。