*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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いつもは部活で忙しいから、
2人で過ごせる時間なんて本当に少ない。
満足しているわけではないけど、
幸せなことには間違いなかったから、
一緒に居られるだけでも感謝しなくちゃ、
と思ってた。
「お腹空いた…!」
「いい香りするな。」
目をキラキラさせて辺りを見回す佐和。
仙道も同じように見回す。
「どういうのがいい?」
「小籠包食べたい!あと、胡麻団子。」
「いいねえ。お店探そっか。」
(無邪気だなぁ。)
自然に手を繋いで、人混みを歩く。
「そんなに混んでなくて良かった。」
「平日だしね。」
色々見て回り、ここ良さそう、と言ってお店に入る。他愛もない話をして、食事を楽しんで、
また違うお店では服や靴を見たり、雑貨を見たりと、普通の高校生らしくのびのびと時間を過ごしているのを互いに感じていた。
「部活やってなかったらこんな感じなのかな。」
佐和が呟いた。
「そうかもね。」
仙道もその言葉に同意する。
「でも、部活やってなかったら、私たち付き合ってないか。」
「そーかも。」
「陵南入ってなかったら、出会うことなかったもんね。」
「……そうだな。」
「どうした?」
仙道の返事の間に不審がり、佐和は顔を覗き込む。
「佐和に出会わなかったらつまんなかったな、と思って。」
そう言って自分の額を佐和の額にコツンと軽くあてて、微笑む。
「そろそろ帰ろっか。」
(楽しい時間って、あっという間だな。)
電車に揺られながら、隣の恋人を見上げる。
流石に朝が早かったからか、目を閉じて静かにしている。
(…一緒にいる時間が長ったからかな、寂しい。)
佐和は、知らず、繋いでいた手に力が入った。
「……佐和?」
目を閉じていた仙道が目を開けて佐和を見下ろす。
「あ、ごめん、寝てて。起こすから。」
「んーん、もう大丈夫。」
そう言って小さくあくびをする。
「どうかした?」
「んーん…。もう少しちゃんと噛み締めておこうと思っただけ。」
「なにを?」
「幸せ?」
「じゃあ俺も。」
そう言って仙道が手を握り返す。力強くも優しいその感触に目の奥が熱くなった。
(なんか、変な感じ。)
駅から佐和の家に帰る途中、例の公園の前を通る。仙道は、少し寄ってこ、と誘う。
「長い1日だったなぁ。」
「朝もこのベンチ座ってた。」
2人で声を出して笑うと、仙道が急に真剣な目をする。
「このまま家来ない?」
その言葉の意味が分からない佐和ではない。
仙道は繋いでいた手を一度離し、片手で包み込むように手を握る。
「嫌なら、今日はここでおしまい。」
まだ明るいから大丈夫だよな、と笑う。
「3秒で答えて。」
「そんなのずるい。」
「知ってる。」
珍しく性急な仙道に、佐和は困惑する。
しかし、目の前の恋人はカウントダウンを始めていた。
「……0。答えを教えて。」
佐和は目を伏せると、その手を握り返す。
「それが答えってことでいいかい?」
低く、お腹に響いてくる優しい声に、佐和はひとつ、頷いた。