*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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シュートを打つ。
スパッ、とネットに吸い込まれる音が気持ちいい。
ドリブルをして、レイアップ。
またネットの真ん中をすり抜ける。
いいなぁ、入ると気持ちいい。
ドリブルも手元見なくても出来るようになったし反対の手でも突けるようになった。これなら球技大会いけそうな気がする。
近所の、バスケットゴールがある公園。普段は子供やゲートボールのお年寄りが居たりするが、まだ薄暗い早朝なら貸切同然。
推薦入試のため休みとなった平日、佐和は練習をしていた。
「確か、彰はこういうのやってたよな…。」
記憶を手繰り寄せるように色んなドリブルを試すが、なかなか上手くいかない。
「イヤイヤ、無理だわ。あんだけ研究してやってんだもん、簡単に出来たら失礼だろ。」
ひとりごちりながら、ボールを足元に転がし、指先を温める。
冷たくピンと冷えた空気、静かな公園、よく知った場所なのに別世界のようだった。
もちろん通勤通学の人も通るので、全くの無音ではないが。
と、離れたところからリズムの良い足音が聞こえてくる。段々と大きくなるので、近付いてくることがわかった。
(ランニングしてる人もいるんだ、寒いのにすげえな。)
そちらを向くと、意外な人物に目を瞠る。
「あれっ、佐和が起きてる。」
「そりゃこっちの台詞だっつの…。」
仙道がランニング中だった。
「休みだから寝てんのかと。」
「休みだからやってるんだよ。」
汗だくの仙道はタオルで汗を拭きながら公園に入って来ると、バスケットゴールと地面に転がるボールを見て笑う。
「熱心だなぁ。」
「それもこっちの台詞だって。」
仙道は佐和の手を取り、自身の手で包み込む。
「佐和の手、つめてー。」
「彰の手はあったかいね。」
仙道につられて佐和も笑う。
「1on1しよっか。」
仙道が片手でボールを拾うと、佐和にパスをする。
(年季の入ったボール…お兄さんのかな?)
「そんな次元じゃないよ。」
佐和はボールを受け取りながら苦笑い。
「佐和はかなり上手いと思うよ。さ、いこーか。」
仙道がディフェンスの構えを取ると、佐和は観念して構える。
「佐和、様になってるよ。」
「うるせ。」
「もう勘弁して……。」
「はははっ。」
佐和は地面に座り、息を整えながら空を仰ぐ。すっかり日が昇りきって辺りは明るい。
「佐和はどんどん上手くなるな。」
仙道は隣に腰掛けて笑う。
「どの口が言うんだよ。嫌味にしか聞こえないんだけど。」
佐和は仙道の方を向き、軽く睨む。
「ひどいなぁ。」
そう言って仙道は笑うと、軽くキスをする。
佐和はそれに驚き、少し体を引く。
「そんなに警戒しなくても、それ以上はしないからさ。」
仙道は苦笑いする。
「……練習試合の時のは、ごめん。」
そう言って、眉を下げる。
「急ぎ過ぎだな、俺。」
首の後ろをかきながら、視線を地面に外す。
佐和は驚いて、仙道の肩に手をやる。
「そんなことない。」
その言葉に、仙道が驚いて顔を上げる。
「……上手く言えないけど、嫌だとか気持ち悪いとか、そういう風には思ってない。」
少し顔を赤らめて、今度は佐和が視線を外す。
「…驚きはしたけど。でも、彰の気持ち、わかるよ。私だって、触れたいと思う時あるし、触って欲しいって思う時……ある、から。」
何言ってんの、と佐和は口元を手で覆って、眉間に皺を寄せる。
仙道は目を手で覆って空を仰ぐ。
「あーもう。人が折角我慢してんのになんてこと言うかな……。」
佐和は小さく、ごめん、と言うと、立ち上がる。
「今日、何してる?」
「この後はメシ食ってここでちょっとバスケの予定。」
佐和は?と仙道が聞き返す。
「保育園に2人を送ったら私も来ようかな。」
佐和は微笑むと、
「デート、しよっか。」
と言うので、仙道も微笑んで頷いた。
(もしかして初デート?)
(うわ、本当だ!)