*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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インハイ予選も関東大会予選もどちらも突破して、稽古も激烈にしんどくて、あーもうやってられん、とか、メンタルゴリゴリ削られるわ、だのと思って帰る時に、体育館の横を通った。音でバスケ部ってことがわかったから覗いてみたんだけど、正直、信じられないものを見てしまったとしか言えなかった。
戦闘モードの仙道が、そこに居た。
(あれは、仙道?)
1人で延々と、コートの中をドリブルして走ったり、ターンしたりドリブルのリズムを変えたりと様々なシチュエーションを想定しての練習をしているようだった。
(汗がすごい…)
飛び散る汗を気にもせず一心不乱に走り、時折シュートをしたり、息を整えながらゆっくりと移動して3Pラインからボールを放ったり。
佐和はその場を去り、しばらくしてまた戻ってきた。仙道はまだ、続けている。
(目が違う。怖い。)
普段の仙道からは想像出来ない程鋭く、厳しい目をしていた。
手に持っていたポカリの水滴が地面に落ちる。
その時、汗で滑ったのか、「お、」と小さく声を漏らしてバランスを崩した。思わず佐和は駆け寄る。
「大丈夫か仙道。」
「あれ、高辻?」
そこには普段ののんびりとした仙道がいた。佐和はそのことに安堵し、怪我してないか?と尋ねながら鞄から使っていないタオルを出して渡す。
「モップどこ?」
「2番目の器具庫。」
「待ってろ。」
佐和はタオルを受け取ろうとしない仙道に半ば押し付けると、器具庫からモップを持ってきて床を拭く。
「高辻何してんの…」
「見てわかんない?拭いてんだよ。滑ったんだろ、あぶねーよ。」
「いやいや、帰らなくていいのか?」
佐和はモップにもたれる。
「まだやるんだろ、付き合うよ。」
「手を上げて立ってるだけ?」
「うん、それだけで全然違うんだ。」
仙道のシュート練習に付き合う。と言っても、佐和は両手を上げてただ立ってるだけ。
「高辻身長いくつ?」
「174…5?」
「越野よりでかいんじゃね?」
仙道は笑いながら、しかし意識はゴールに向けてたまま。
「……っと、これラスト。」
「ん。」
スパッと決めて、佐和も両手を下ろす。そしてボールを拾いに行った。
「高辻いいよ、俺やるから。」
「バーカ、2人でやりゃ早いだろ、分かったらボール集めろ。」
仙道は、やれやれ、と笑いながらボールを集め始める。佐和はモップを取りに行き、床を拭く。
「ねえ佐和ちゃん、」
唐突に名前で呼ばれ、振り返る。
「何かあった?」
ボールを片手で持ち、笑顔だが、先ほどのような鋭い目で佐和を見ていた。佐和は居心地悪そうに目線を逸らし、モップ掛けを再開した。
「…ないよ。」
「嘘つき。」
いつの間にか目の前に回り込んでいた仙道は、にっこり笑ってモップを取り上げる
「俺やっちゃうから、ボールあっちの器具庫にしまってきて。」
そう言ってモップ掛けを始めた仙道を、佐和は少し見ていた。しかしすぐに我に返って、ボールの籠を片付けに走った。
(仙道にあんな目で見られたら、見透かされてしまいそう。)